こちらは、りーちゃん&セーちゃんによる【反撃の乙女と狼狽える破壊神企画】です。

コラボ連載作『純情乙女の危険なあしらい』は、元旦からスタートしています。

まだまだ続きますので、お楽しみ頂けたら嬉しいです♪

 

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スタート話はこちらです。

→『破破壊神がやって来た』(一葉梨紗作)

1 /  /  /  /  /  /  / 9・完結

 

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反撃の乙女と狼狽える破壊神企画

『純情乙女の危険なあしらい 11』

 

 キョーコの身体を、肩に担ぎ上げた男……敦賀蓮は、無言のまま猛スピードで廊下を進んでいた。

 どうして敦賀さんがあの部屋に?と、蓮による予想外の楽屋襲撃を受け、パニック状態になったキョーコは思考を停止させてしまい、抵抗するでもなく荷物の様に運ばれている。

 

 だが、肩に担がれていることで目に入り続ける蓮の尻を眺めるうちに、キョーコはある大事なことを思い出していた。

 そういえばさっき古賀は、言っていた。あのピクピクが何なんなのかは本人に聞けば良いと。


 正直、あのピクピクの正体については、とても気になっていたキョーコである。神が造りたもうた完璧なる存在のビューティーボディについての謎なのだ。その未知なる何かを敦賀教の信者たるキョーコが知りたくないはずがない。

 

 今いきなり聞いても大丈夫だろうか?そんなことを思案しながら、蓮の尻を見つめるうちにキョーコの中で新たな疑問がわく。


「 う〜ん?この前の……位置的にはあのあたりが堅くなってピクピクしてた気がするんだけど。でも……お尻の筋肉だと………」

 

 女性である自分だってお尻の筋肉ぐらいピクピクできるが、あの日の蓮のようにセンター部分を動かすことはできない。ブツブツと小さな声で呟きながら、謎について考え続けるキョーコ。

 

 

「 ん〜〜、やっぱり前と後ろじゃ違うわよねぇ?……ピクピクピクピクずっと動いていた気がするし、もしかして筋トレで私が知らない特殊な筋肉が……痙攣? 」


 キョーコの視界に見えるのは蓮の背中とお尻と床だけ。人通りもない場所で、他の人間の視線を感じないせいもあるのか。蓮本人の存在さえある意味忘れ、キョーコの手は遠慮なく気になる場所に伸ばされ、そこを撫で上げた。

 驚いたのは蓮だ。思わずビクンと反応してしまう。

 古賀に会うために楽屋に行ってみれば、何故かそこにキョーコがいた。それもありえない体勢で、二人は密着していたのだ。それを見た瞬間、蓮はキレた。そこから先は怒りが支配していて、正直何も考えられなくなっていた。
 
 今は、とにかく古賀から引き離そうと、肩に担ぎあげたキョーコを運びながら、無意識に人気のない場所へと移動していたところだった。

 そんな時に、純情である筈な好きな女の子にいきなり尻を撫でられたのだ。驚かない人間はいないだろう。

 だが、蓮にはその衝撃的な出来事に反応する訳にはいかない理由があった。

 なんせ、最近の自分はアブナイのだ。現在の自分が危険な妄想思考の持ち主だと自覚している蓮は、とても焦っていた。 

 

 昨日、蓮は反省した。自分に都合の良い勘違いな妄想結論を出しては暴走しようとする己の思考を悔いて、それはもう深く深く反省した。なのに、今既に自分の脳内では、積み上げた筈の反省記録の束が見当たらないのだ。故に、後悔による抑制効果も、学習能力も発揮されず、蓮は簡単にいつもの道を辿る結果となった。

 


 ……勘違いじゃない。絶対この子に誘われてる!だって、この前は男の特異部位に、今回は尻を撫でたんだぞ?これで誘っていないなんてあり得ないだろう?

 ……誘われてるんだから、遠慮なくやっちゃえよ。このまま家に連れて帰って、レッツ初体験だ!

 

 空耳ではなく、蓮の耳にはそんな声さえ聞こえていた。いつの間にか蓮の妄想レベルはキョーコすら凌駕しているのかもしれない。しかし、脳内での思考に忙しかったためか、表向きは無反応を続けていた。

 その内向きな蓮を表に引きずり出したのは、担がれて運ばれているというこの異常事態に、漸く気づいたらしいキョーコの叫び声だった。


「 ちょっ!なんで、私を担いでるんですか!?やだっ!敦賀さん、おろして下さい! 」


 キョーコを逃す気はないが、今何と返事をして良いのかわからぬ蓮は、背中から聞こえる叫び声を無視するしかない。人間1人を担いでいるとは思えないスピードで、蓮は歩き続ける。


「 敦賀さん、おろして下さい! 」

「 敦賀さん! 」

「 お〜ろ〜し〜て〜〜! 」

「 も〜〜〜いい加減!おろして下さいってば! 敦賀さん、どうして無視するんですか! 」

「 敦賀さんっ! 」

「 ねぇ!ちょっと!おろしてっ! 」


 何度頼んでも、どんなに叫んでも、蓮からの反応はないし、おろしてももらえない状況に、キョーコは切れた。


「 おろせって言ってるでしょ!もう!おろしなさいよ! 」

「 まだ無視する気?こうなったら、先輩相手だからって遠慮なんかしないんだから!!この際だから言いたいことを言います!耳の穴かっぽじって、よ〜〜く聞いてくださいよ! 」

 

 小山ぐらいは吹き飛ばせそうな程鼻息を荒くしたキョーコは、嫌味ったらしい口調で蓮に意見した。



「 敦賀さん、貴方は少し自重した方が良いと思います!そりゃあ、敦賀さんは筋肉を大事にしている人ですし?そういうタイプの方が、いつでもどこでもタイミングさえ合えば鍛えたくなるらしいことは、私だって知ってますけど!でも幾ら忙しすぎて、ご自宅にある器具を使って鍛える時間がないからって、あんなっ! 」

「 一体何の話を…… 」

 

 漸く反応が返ってはきたが、蓮にはキョーコの憤りが伝わった様子がない。


「 この前、カバンを抱きしめていた私を使って、身体の前面を鍛えていらしたでしょう? 」

「?」

「 あの時、私が急に手を動かしちゃったから、それが予想外の抵抗になっちゃって……それで必死に耐えるような声を漏らされたんですよね!? 」


 確かにあの時の蓮は耐えていた。耐えてはいたが、決して筋肉ボディーを維持するために運動し、途中で予想外の負荷をキョーコから受けたから耐えていた……なんてことはない。

 古賀への嫉妬で怒り狂いながらも、己の欲望塗れな妄想を楽しむという器用なことをしていた蓮は、その時全てのエネルギーを失った。

 立ち続ける為の力が消え、キョーコを落としこそしなかったが、蓮の体はそのまま崩れ落ちた。

 俺の考えは間違っていたのか?いや、でも……!!と精神力を根こそぎ奪われ、パニくることになった蓮だったが、キョーコはまだ許してくれる気は無いらしい。

 


「 ああ、もうそんなことはどうでも良いんです!とにかくですね!今後は私の前ではなく、一人の時に鍛えて下さい!と!……と!言いたい所ですけどっ!! 」

 

 床に崩れ落ちたままの蓮の精神は既に灰になりかけていたが、その理由など知る由もないキョーコはトドメとも言える追い討ちをかける。


「最初に触ったときは確かにふにゃっと柔らかかった気がしましたけど、あっという間に凄く堅くなっちゃっていましたから、もうそこはそれ以上鍛えなくても平気なんじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁ?」


 やっと地に足をつけることができたキョーコは、それはもう強烈で、恐ろしい置き土産を残し、その場から走り去っていったのだった。

 

第12話に続く。

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次回はリーちゃん担当回です。ヾ(*ΦωΦ)ノ ヒャッホゥ

どんどん危険になっていく純情乙女の言動と自分の妄想に翻弄される蓮君!果たして彼は、どうなるのか!

この爆笑破廉恥コメディは、限定扱いにはなりませんが、内容がちょっぴり恥ずかしいので、読む場所にはお気をつけください。←