バイデンは、ロシア軍のウクライナ侵攻前から、「たとえ何があろうと、アメリカは、ウクライナに派兵しない」と公言していた。侵攻後も、「ウクライナに軍を送ることはしない」と、繰り返し言い続けている。

バイデンは、初めから「アメリカは、血を流すリスクを負わない」「紛争には関わらない」と、一線を引いているのだ。

だから、ポーランドの大統領が何を言おうと、NATO軍のウクライナ派兵は絶対にあり得ない。アメリカ及びNATOは、ウクライナ紛争に直接手を出す気は一切ないということだ。

 

その一方で、アメリカは何年も前から、ウクライナへの核の設置可能性をちらつかせて、ロシアを挑発し、あたかもNATOがウクライナの加盟を認めるかのように気を持たせて、ウクライナを誘惑してきた。

プーチンが、ウクライナ=アメリカ同盟に疑いを抱き、ロシアの安全保障に危機意識を強く感じて、心理的に追い詰められるように、徐々に追い込んでいったのだ。そして、巧妙な策略をもって、見事にロシア軍のウクライナ侵攻を誘導した

その意味では、プーチンは、バイデンにうまく嵌められたのだ。

 

アメリカの目的は、ウクライナで調査が進展中だったバイデンの息子のロシア疑惑をうやむやにしてしまうこと、バラバラだったNATO軍の結束を図ること、国際世論と経済封鎖と消耗戦でロシアを徹底的に叩くこと、中間選挙に向けて、これまで低迷中だった国内のバイデン人気の回復を図ること。この四つだ。

現在までのところ、これら四つの目的は、見事に達成されつつある。戦争が続くにつれて、バイデンの顔色が良くなり、生気に満ちて、イキイキしてきていることからも、そのことがよくわかるだろう。

 

結局のところ、ゼレンスキーは、アメリカの駒として、アメリカの国益に都合よく動くように、うまく焚きつけられ、利用されただけだ。

ウクライナ市民の犠牲者の映像や情報は、今、現在、余すところなく、アメリカの利益になるように、世界中でのプロパガンダに使われている。

バイデンとしては、ウクライナ紛争が長引けば長引くほど、アメリカの国益に適うことになるので、紛争の早期解決に力を尽くすことなど考えていない。

その意味では「絶対に降伏せず、あくまでも徹底抗戦する」と国民を鼓舞するゼレンスキー大統領は、アメリカにしてみれば、非常にいい仕事をしてくれているわけで、大いに評価しているはずだ。

 

中国とインドは、この状況の意味するものを、ほぼ正確に理解しており、自らに火の粉が飛んでこないように、極めて冷静に、情勢の推移を眺めている。中印にしてみれば、「ロシアの味方をしている!」と西側諸国の批判の矢面に立つのは御免被るが、アメリカの世界戦略に乗って、わざわざアメリカを利する上に、ロシアの恨みを買うのも馬鹿らしいし、腹立たしい。

だから、中国・インドは、うまく中立を保って見せている。ウクライナにも、ロシアにもつかない。立場を敢えて鮮明にしないのは、賢いやり方だ。

 

NATO諸国の思惑については、決して一枚板ではないと思われる。

ロシアに隣接するバルト三国やポーランドなどと、イギリス・フランス・ドイツなどとは、相当に温度差があるようだ。

特に、フランスとドイツは、表立ってはアメリカに反抗はしないが、バイデンの思惑や画策については、かなり苦々しく思っている面もあるだろう。内心は「これ以上、アメリカの思い通りにさせてなるものか」と、憤っている面もあるかもしれない。

 

しかし、どこよりも無邪気にナイーブに、アメリカ民主党系CNNなど、西側メディアのプロパガンダを素直に信じ込み、欧米発進の情報を無批判に取り込んで、〝プーチンは絶対悪〟だと迷いなく思い込み、ロシアと国境を接している自国の地政学的な微妙さや危険を省みることなく、思い切ったロシアへの経済封鎖とウクライナ支援に突き進み、ロシアに完全に敵認定されてしまったのが、世界から〝お花畑〟の〝お嬢さま〟と呼ばれる我が国日本である。

ほとほと愛想がつきそうなほどの頭の悪さ、国際感覚の鈍さだ。

 

ロシアに敵認定されても、アメリカの場合は、痛くも痒くもない。NATO諸国も、集団安全保障の性質上、日本ほど脆弱ではない。

しかし、アメリカの犬となった〝スラブの裏切り者(←とロシアからは見えている)〟ウクライナの肩を持って、東アジアで唯一、周囲から孤立して、ロシアを完全に敵に回してしまった日本は、そう安心できる状況ではない。

ウラジオストクのロシア艦隊は、日本を敵として行動を開始している。日本は、アメリカにハシゴを外されたら、核大国ロシアに対抗する術がない。

 

シリアのアサド政権やセルビアの例からも分かるように、ロシア人は、いったん味方・身内として認めた者は、何があろうと絶対に見捨てない。家族や身内には、甘々で、本当に甘やかす。失敗しようが悪かろうが、責めないし、裏切ることもない。

だが、敵に対しては、恐ろしく冷淡で残虐にもなれる。特に、裏切り者には容赦しない。トロツキーもそうだが、たとえ外国に逃げようと、地の果てまで追いかけて行って始末する。絶対に許さない。

それが、ロシア人の国民性だ。決して、プーチンが特別なわけではないのだ。

 

繰り返すが、今回、日本は、ロシアに敵認定されてしまった。

アメリカの存在感が目に見えて低下していく中で、ロシアを完全に敵に回すことの危うさを、岸田内閣は、多少なりとも自覚しているだろうか。

もし、その自覚がまったくないのだとしたら、あまりにもロシア人について無知すぎる

同じことは日本国民にも言える。『この国民にしてこの内閣あり』だ。

国民が阿呆だから、内閣が抜け作になる。どうしようもない。

 

プーチンのロシアは、アメリカに嵌められた。そして、その負債を、今、払わされている。

今、相当に窮地に追い込まれているだろう。

だが、持ち前の頑固さと意地の強さと忍耐力で、あくまでも強気を崩さず、ケンカで絶対に引かないのが信条のロシア人は、この危機を乗り越えるだろう。

加えて、ロシア人は、経済制裁と国際世論の非難には、冷戦時代以来、慣れている

それに、いよいよ危なくなったら、中国は必ずロシアを助ける。

だから、ロシアは耐え抜くだろう。

 

しかし、日本が、愚かな判断をした代償を払うのは、まだまだこれからだ。憂鬱な話である。

自国の安全保障は、すべてアメリカ頼りという、依存性が強く、ひ弱なこの国の国民は、危機に際して、ウクライナのように、ロシアのように雄々しく踏ん張ることができるだろうか

とてもそうは思えないというのが、正直なところである。