ロッド・スチュワートは、スコットランド系のイギリス人で、第二次世界大戦の終戦の年である1945年1月にロンドン北部で生まれました。ロッドが生まれた数週間後に、家の向かいの警察署に、ドイツ軍のV2ロケットが命中したというエピソードがあります。イーグルスのドン・ヘンリーの2年先輩、チューリップの財津和夫さんの3年先輩にあたります。

中学卒業後、サッカー・プロチームの見習い、印刷工、電気工などの職を転々としていたロッドが、音楽を志すようになったきっかけは、1962年、17歳の時に聴いた一枚のレコードでした。それは、ボブ・ディランのデビューアルバムだったのです。

そして、1963年、18歳の頃から、ロッドは、いくつかのグループを渡り歩き、ボーカリストとしての名声を徐々に獲得していきました。

同時に、1964年、19歳の時に、ソロの歌い手として、初のシングルもリリースしました。

さらに、1969年、24歳の時には、ジェフ・ベック・グループを離れて、新生「フェイセズ」の結成メンバーとなり、ロッドは、ソロとフェイセズの活動を並行して行うようになりました。

アメリカでイーグルスが結成され、ビリー・ジョエルがデビューした1971年、26歳の時には、3rdソロ・アルバムが、米英で1位となり、アルバム収録曲「マギー・メイ」も全英1位となりました。ソロとして初の大ヒットでした。

フェイセズが解散した1975年、30歳の時には、名盤「アトランティック・クロッシング」をリリースして、活動の拠点をアメリカへと移しました。

その後、1990年代まで、ヒット曲を出し続け、さらに、2000年代には、スタンダード・カバー・アルバムを大ヒットさせ、現在もまだ、現役で活躍を続ける偉大なヴォーカリストです。

ビリー・ジョエル、ドン・ヘンリー、スティングは、素晴らしい歌い手であるのと同時に、偉大なソングライターでした。一方で、ロッド・スチュワートは、圧倒的に、ヴォーカリストとしての比重が大きいです。そのため、代表曲にも、オリジナルではないカヴァー曲が、いくつもあります。

ここでは、1971〜1996年までの発表曲から、独断と偏見に基づき、全15曲を選びました。この内、カヴァー曲は8曲(②③④⑦⑨⑩⑪⑫)あり、オリジナルと言ってよい曲は7曲です。また、このオリジナル曲7曲の中で、ロッド・スチュワート本人が、制作に関わっているのは4曲(①⑥⑧⑬)です。

曲順は、発表年時順になります。

 

 

①マギー・メイ(Maggy May)

作詞作曲 ロッド・スチュワート/マーティン・クイッテントン

◯アルバム「エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー(1971年/3rd/全英1位・全米1位)」初収録。

◯シングル(1971年/3rd/全英1位・全米1位)

当時、まだフェイセズでのバンド活動を続けていたロッド・スチュワート(当時26歳)の初の本格的なソロ・ヒット作品。

ロッド自身の経験が、歌詞に反映されていると言われます。高校生の可愛い男子と年上の女性との付き合いについて、男の子の立場から歌っています。

当時の演奏を視聴すると、すでに、良くも悪くも、声と歌は、ロッド・スチュワートそのものです。

「起きてよ、マギー・メイ。話したいことがあるんだ。もう9月の終わりだよ。本当に学校に戻らなきゃいけないんだ。僕は、君を楽しませてきたよね。でも、僕は利用されていたんだ。マギー、これ以上は、続けられないよ。君は、自分がひとりぼっちでいたくないから、僕を、家から引き離したんだ。君は、僕の心を奪ったんだ。本当に傷ついたよ。」

Wake up, Maggie, I think I got something to say to you.
It's late September and I really should be back at school.
I know I keep you amused, but I feel I'm being used.
Oh, Maggie, I couldn't have tried any more.
You led me away from home, just to save you from being alone.
You stole my heart, and that's what really hurts.

 

②セイリング(Sailing)

作詞作曲 ギャヴィン・サザーランド

◯アルバム「アトランティック・クロッシング(1975年/6th/全英1位・全米9位)」初収録。

◯シングル(1975年/16th/全英1位・全米58位)

代表曲のひとつ。当時、まだ30歳なんですよね。

1972年に、スコットランド出身のフォーク・ロック・デュオ「サザーランド・ブラザーズ」がシングルとしてリリースした曲のカヴァーです。けれども、世間では、明らかに、アルバム「アトランティック・クロッシング」収録のロッドのバージョンが、オリジナル扱いされています。

「海を越えて、もう一度、故郷へと、僕は、船に帆を掲げて旅をしている。逆巻く波を越えて、自由になるため、あなたのそばへと、僕は、航海している。鳥のように、空を渡って、僕は、翼を広げて飛んでいる。高い雲を越えて、自由になるために、あなたのもとへと、僕は、飛翔している。遠く闇夜を抜けてゆく、僕の声が聴こえますか。あなたとともにあろうとして、誰にも知られず、瀕死の状態で、永遠に泣いているのです。」

I am sailing, I am sailing, home again ‘cross the sea.
I am sailing, stormy waters, to be near you, to be free.

I am flying, I am flying, like a bird ‘cross the sky.
I am flying, passing high clouds, to be with you, to be free.

Can you hear me, can you hear me thro’ the dark night, far away,
I am dying, forever crying, to be with you, who can say.

 

③ディス・オールド・ハート・オブ・マイン(This Old Heart of Mine)

作詞作曲 ホーランド=ドジャー=ホーランド/シルヴィア・モイ

◯アルバム「アトランティック・クロッシング(1975年/6th/全英1位・全米9位)」初収録。

◯シングル(1975年/17th/全英4位・全米83位)

◯シングル(1989年/60th/全英51位・全米10位)※本家ロナルド・アイズレーとのデュエットで再録音

これも、1966年に、アメリカの黒人ヴォーカル・グループであるアイズレー・ブラザーズがリリースしたシングル曲(全米12位・全英3位)のカヴァー。とは言え、2度も録音していることもあり、ロッドの持ち歌というイメージが強いです。

アルバム「アトランティック・クロッシング」B面では、一番リズム感のある曲。

「俺のこの老いぼれたハートは、数えきれないほど失恋に破れてきた。君にフラれるたびに、君はもう戻ってこないと思った。ひとりぼっちの夜がやってきて、思い出は消えていく。君が戻ってくるたびに、俺の心はさらに傷つくことになる。俺が心の内に感じている、この君への愛を、おもてに見せたのが、きっと、間違いだったんだ。君の虜になってしまって、日々、進めばいいのか、戻ればいいのか、俺には決してわからないんだ。でも、愛している。そうさ、この老いぼれたハートは、君のために泣いているのさ。」

This old heart of mine been broke a thousand times.
Each time you break away, feel  you've gone to stay.
Lonely nights that come, memories that go, 

Bringing you back again, hurting me more and more.
Maybe it's my mistake to show this love I feel inside.
'Cause each day that passes by,

You got me never knowing if I'm coming or going.

But I, I love you. Yes, I do.
This old heart weeps  for you.

 

④もう話したくない(I Don't Want to Talk About It)

作詞作曲 ダニー・ウイッテン

◯アルバム「アトランティック・クロッシング(1975年/6th/全英1位・全米9位)」初収録。

◯シングル(1977年/22th/全英1位・全米46位)

◯シングル(1990年/63rd)※再録音

1971年に、アメリカのロック・バンドで、ニール・ヤングのバックバンドだった「クレイジー・ホース」がリリースしたアルバムに収録されていた曲のカヴァーです。

クレイジー・ホースのメンバーで、作者のダニー・ウイッテンは、翌1972年に29歳にの若さで、ヘロイン中毒で亡くなっています。

また、この曲は、1988年に、Everything but the girl のカヴァーが全英1位を記録しています。ただし、多くの人にとって、本家は、ロッド・スチュワートの「アトランティック・クロッシング」版だと思います。

さらに、2004年のロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートでは、スコットランド出身の若手のシンガーソングライター(1981年生/当時22歳)エイミー・ベルとのデュエットが話題になりました。

「君が、これまでずっと泣いてきたんだってことは、君の瞳を見ればわかるよ。空の星々も、君にとってはなんの意味もない。君の二つの目は一枚の鏡なんだ。君がどんなふうに、俺のハートを粉々にしたのか、なんて、そんなことは、話したくない。でも、もうほんの少しだけ、俺がここに居ていいなら、俺の気持ちを聴いてくれないか? もし、俺がひとりぼっちでいられるのなら、俺の影が、この心の色を隠してくれるだろうか? 涙の青と夜の不安の黒を。夜空の星は、君にはなんの意味もない。君の目は鏡に過ぎない。俺の胸を、君がどんなふうに引き裂いたのか、なんて、俺は話したくない。でも、もし、もう少し、ここに居ていいなら、俺のこの老いぼれたハートの声に耳を傾けてくれないか。」

I can tell by your eyes that you've probably been cryin' forever,
And the stars in the sky don't mean nothin' to you, they're a mirror.
I don't want to talk about it, how you broke my heart.
But if I stay here just a little bit longer,
If I stay here, won't you listen to my heart, whoa, my heart?

If I stand all alone, will the shadow hide the colors of my heart;
Blue for the tears, black for the night's fears.
The star in the sky don't mean nothin' to you, they're a mirror.
I don't wanna talk about it, how you broke my heart.
But if I stay here just a little bit longer,
If I stay here, won't you listen to my heart, whoa, my heart?
My heart, whoa my heart, this old heart.
 

⑤イッツ・ノット・ザ・スポットライト(It's Not the Spotlight)

作詞作曲 バリー・ゴールドバーグ/ジェリー・ゴフィン

◯アルバム「アトランティック・クロッシング(1975年/6th/全英1位・全米9位)」初収録。

キャロル・キングの最初の伴侶だったジェリー・ゴフィンとバリー・ゴールドバーグの共作。このアルバムのバージョンがオリジナルと言っていいでしょう。

「もしも、俺に降り注ぐ、その光を、もう一度、感じられたなら、その光を、どれほど待ちわびているかを、君に伝える必要もない。以前は、その光を感じられたのに、うっかり逃して、失ってしまったんだ。でも、俺は、いつか、その光を、取り戻せると、いまだに信じているんだ。その光は、華やかなスポットライトじゃない。カメラのフラッシュライトでもない。夢の中の古い大通りの街の灯りでもないんだ。月の光じゃないし、陽の光でもない。でも、俺は、君の瞳の中に、その光が輝くのを、ずっと見てきたんだ。言っていること、わかるかな。」

If I ever feel the light again shining down on me,
I don't have to tell you  what a welcome it will be.
I felt the light before but I let it slip away.
But I still keep on believing that it'll come back some day.

It's not the spotlight. It's not the camera light.
It's not the street lights of some old street of dreams.
It ain't the moonlight, not even the sunlight.
But I've seen it shining in your eyes and you know what I mean.

 

⑥スティル・ラヴ・ユー(Still Love You)

作詞作曲 ロッド・スチュワート

◯アルバム「アトランティック・クロッシング(1975年/6th/全英1位・全米9位)」初収録。

このアルバムは、B面のバラード5曲に捨て曲がありません。全曲名曲揃いと言っていいでしょう。B面4曲目のこの曲は、シングルカットはされていませんが、とても美しい曲です。

「友だちに言われたよ。君に近づいちゃいけない。どうせ、高嶺の花だと。でも、君に初めて会った時、僕は、君のドレスに、チェリーライムをこぼしてしまった。君は『気にしないで、これは、一番いいものじゃないから』と言った。最初の出会いが、最高だなんてことは、滅多にないことさ。でも、僕は、たとえ、もう一度、すべてをやり直せるとしても、何一つ、変えたいとは思わない。不器用な物言いしかできないけど、僕が言いたいことのすべては『まだ、君を、愛している』ということなんだ。」

I was told by a good friend.

You were untouchable, out of my reach.

But the first time ever I saw you,

I spilled my cherry lime over your dress.

You said, "Don′t you worry, it's not my best one."

First encounter, hardly the best.

But I would not change a thing If I could do it all over again.

All I′m trying to say in my awkward way is "I still love you."

 

⑦ピープル・ゲット・レディ(People Get Ready)

作詞作曲 カーティス・メイフィールド

◯シングル(1985年/49th/全英49位・全米48位)

オリジナルは、シカゴ出身の黒人のソウル・グループ「インプレッションズ」の1965年のヒット曲(全米14位)です。

作者のカーティス・メイフィールドは、当時のインプレッションズのボーカルを務めていました。この曲は、ゴスペル・ソングとしてつくられました。1965年、当時、キング牧師は、この曲を、公民権運動を象徴する讃美歌として用いていたそうです。

さらに20年後の1985年、ロッド・スチュワート(当時40歳)は、旧友ジェフ・ベックのアルバム「フラッシュ」の制作に参加して、このカヴァー曲のボーカルをとりました。

ジェフ・ベックのギターにロッドのボーカルが絡んで、素晴らしい仕上がりです。

「人々は、準備を始める。列車が来る。荷物は何もいらない。ただ乗ればいいんだ。必要なことは、機関車のハミングを聴ける信仰心だけだ。チケットもいらない。ただ、神に感謝を。人々は、ヨルダン行きの列車に乗る準備を始める。西海岸から東海岸へ、乗客を拾いあげながら、列車は行くのだ。信仰が鍵だ。扉を開けて、列車に乗るんだ。最愛の人を含む、あらゆる人の席は用意されている。自分自身の魂を救うためだけに、すべての人を傷つけるような改心の見込みのない罪人のための席はない。幸運と巡り合わせの薄い、そうした人々に、憐れみを。神の王国の玉座から隠れられる場所は、どこにもないのだから。」

People get ready.

There′s a train a-coming.

You don't need no baggage.

You just get on board.

All you need is faith to hear the diesels humming.

Don′t need no ticket.

You just thank the Lord.

People get ready for the train to Jordan, 

picking up passengers from coast to coast.

Faith is the key.

Open the doors and board them.

There's room for all among the loved the most.

There ain't no room for the hopeless sinner
Who would hurt all mankind just to save his own soul.
Have pity on those whose choices grow thinner.
There ain't no hiding place from the Kingdom's throne.

 

⑧フォーエバー・ヤング(Forever Young)

作詞作曲 ロッド・スチュワート/ボブ・ディラン/ジム・クレガン/ケヴィン・サヴィガー

◯アルバム「アウト・オブ・オーダー(1988年/15th/全英20位・全米11位)」初収録。

◯シングル(1988年/56th/全英57位・全米12位)

ボブ・ディランの同名の曲にインスパイアされて、ロッドがバンドメンバー2人と協力してつくった曲。

ロッドが、自身の2人の子どもを想ってつくった曲だということで、とても思い入れの深い曲なのだそうです。息子の名が同じショーンということもあってか、ジョン・レノンのBeautiful Boyと、どこかイメージが重なる気がします。

「君があてどなくさまようあらゆる道で、主が、君とともにありますように。そして、君が故郷から遠く離れている時にも、君の周りに陽光が輝き、幸せがありますように。君が、誇り高く、気高く、誠実な大人に、育ちますように。そして、自分自身のことであればするのと同じように、他人に対してもできるようになりなさい。雄々しく、勇敢であるように。そして、私の心の中では、君は、いつまでも、成長の過程にある、若々しい存在であり続ける。」

May the good Lord be with you down every road that you roam.

And may sunshine and happiness surround you 

when you're far from home.

And may you grow to be proud, dignified and true.

And do unto others as you'd have done to you.

Be courageous and be brave

And in my heart you'll always stay

Forever young, forever young

Forever young, forever young

 

⑨ダウンタウン・トレイン(Downtown Train)

作詞作曲 トム・ウェイツ

◯シングル(1989年/61st/全英10位・全米3位)

◯アルバム「ヴァガボンド・ハート(1991年/16th/全英10位・全米2位)」初収録。

1985年、「酔いどれ詩人」の異名を持つアメリカのシンガーソングライター、トム・ウェイツが発表したアルバム「レイン・ドッグ」に収められていた曲のカヴァー。

このロッド・スチュワート版は、ロッドにとって、1978年の「アイム・セクシー」以来、11年ぶりに、久々の英米双方でのベスト10圏内ヒットとなりました。

Outside another yellow moon has punched a hole in the night time mist.

I climb through the window and down to the street.

I'm shining like a new dime.

The downtown trains are full.

Full of all them Brooklyn girls.

They try so hard to break out of their little worlds.

You wave your hand and they scatter like crows.

They have nothing that'll ever capture your heart.

They're just thorns without the rose.

Be careful of them in the dark.

Oh if I was the one, you chose to be your only one.

Oh baby can't you hear me now, can't you hear me now?

Will I see you tonight on a downtown train?

Every night, every night it's just the same

On a downtown train

 

ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー(Have I Told You Lately)

作詞作曲 ヴァン・モリソン

◯アルバム「ヴァガボンド・ハート(1991年/16th/全英10位・全米2位)」初収録。

◯シングル(1993年/74th/全英5位・全米5位)※ライブ・アルバム「アンプラグド」からのシングル・カット

北アイルランド出身のシンガーソングライターであるヴァン・モリソンが、1989年に発表したシングル曲のカヴァー。

アルバム「ヴァガボンド・ハート」収録のオリジナル版が気に入ってます。1990年代の代表的ヒット曲。

「僕は君を愛していると、最近、言ったことがあるかな? 君より大切な存在はこの世にないと、きちんと伝えたことはあるかな? 君は、僕の心を喜びで満たし、全ての悲しみを拭い去って、僕の苦しみを癒してくれるんだ。」

Have I told you lately that I love you?
Have I told you there's no one else above you?
Fill my heart with gladness,
Take away all my sadness,
Ease my troubles that's what you do.

 

ユア・ソング(Your Song)

作詞作曲 エルトン・ジョン/バーニー・トーピン

◯シングル(1992年/70th/全英41位・全米48位)

もともと、エルトン・ジョンの1970年リリースの最初のヒット曲(全英7位・全米8位)ですが、このロッドのボーカルは、本家オリジナルを軽々と超えてしまいます。

もともと、Your Song のトリビュート・アルバム「Two Rooms:Celebrating  the Songs of Elton John & Bernie Taupin(1991)」に収録されたもので、そのアルバムからのシングルカットです。

「この気持ち、なんだか、ちょっと変なんだ。僕は、隠し事が上手じゃない。僕はお金持ちじゃないけど、もし、お金持ちだったら、僕たちが、2人で住める、大きな家を買うよ。もしも、僕が彫刻家だったら、でも、まあ、それはないか…。じゃなくて、旅芸人の舞台で、願いを叶える魔法の飲み薬をつくる役の男だったら、それで十分じゃないとわかってはいるけど、それが、僕にできる最良のことだから、僕の贈り物は、君のために作った、この歌だよ。君は、これは、自分の歌だって、みんなに言っていいんだよ。とてもシンプルな歌だけど、今、できたばかりなんだ。僕が歌詞に書いたことを気にしないでね。この世界に、君がいてくれるだけで、なんて素敵な人生なんだろう。」

It's a little bit funny this feeling inside.
I'm not one of those who can easily hide.
I don't have much money but boy if I did,
I'd buy a big house where we both could live.
If I was a sculptor, but then again, no…,
Or a man who makes potions in a travelling show,
I know it's not much but it's the best I can do,
My gift is my song and this one's for you.
And you can tell everybody this is your song
It may be quite simple but now that it's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind that I put down in words
How wonderful life is while you're in the world
 

⑫ダウンタウン・ライツ(Downtown Lights)

作詞作曲 ポール・ブキャナン

◯アルバム「ユア・ザ・スター(1995年/17th/全英35位・全米4位)」初収録。

ポール・ブキャナンがリーダーを務めるスコットランド・グラスゴー出身のバンド「ブルー・ナイル」が、1989年にリリースした2ndアルバムに収録されている曲のカヴァー。名曲です。

このアルバム「ユア・ザ・スター」は、アトランティック・クロッシングと並ぶ傑作です。いい曲がたくさん入っていますが、中でも、シングル化されていないのに出色の2曲があり、今回、両方ともベスト15に選びました。当時、ロッド・スチュワートは50歳。ボーカリストとして、ある意味、ピークというか、円熟の境地にあります。

「時々、僕は、人前から歩き去る。君を愛して抱きしめることが、したいことのすべて、という時に、僕に言えるのは、この一言だけ。大丈夫だよ、見えないのかい、あの街の明かりが。」

Sometimes I walk away 

When all I really want to do is love and hold you right,

There is just one thing I can say.

It's all right, can't you see?

The downtown rights.

 

⑬マディ、サム&オーティス(Muddy, Sam and Otis)

作詞作曲 ロッド・スチュワート/ケヴィン・サヴィガー

◯アルバム「ユア・ザ・スター(1995年/17th/全英35位・全米4位)」初収録。

隠れた名曲。

〝シカゴ・ブルースの父〟と言われたマディ・ウォーターズ、ゴスペル歌手の大御所だったサム・クック、そして、伝説のソウル・シンガー、オーティス・レディングと、3人の偉大な黒人ミュージシャンへのトリビュート(感謝・賞賛・尊敬を込めた捧げ物)として制作されたロッド自作の曲。

「俺がまだ17歳だった頃、ストリートには、ボヘミアンの詩人や弟子たちがいた。そして、俺は、アイデンティティを探している子どもにすぎなかった。1963年のことだ。ある寒い12月の夜に、ラジオから流れてくる、その曲を聴いた。キリストの輝く光のように、その曲は、電波放送を燃やし尽くさんばかりだった。遠くアメリカから、大西洋を渡って、そのマジックはやってきたんだ。」

I remember when I was only seventeen 

The Bohemian poet and disciple of the sheets 

Or was I just a little kid searching for identity in '63

Heard it on the radio on a cold December night.

It came burning down the air waves like a savior's shining light 

All the way from the U.S.A, across the Atlantic 

Far away the magic came 

 

⑭イフ・ウイ・フォール・イン・ラヴ・トゥナイト(If We Fall in Love Tonight)

作詞作曲 ジミー・ジャム&テリー・ルイス

◯アルバム「ベスト・バラード・コレクション(1996年/best版/全英19位・全米8位)」初収録。

◯シングル(1996年/85th/全英58位・全米54位)

このアルバムは、ベスト・アルバムでは、あるのですが、新曲が3曲含まれており、そのうちの2曲が、カヴァーでないオリジナルの曲でした。そして、その2曲両方を、私は、今回のベスト15に選びました。どちらも大好きな曲です。

この曲は、アルバムの原題タイトルともなっている曲で、ファースト・シングル・カットされました。肩の力が抜けた円熟の味わいがあります。

アメリカの黒人シンガーソングライター・デュオ、ジャム&ルイスの提供曲。

「痛みは、河のように流れて、そのすべての記憶と共に、今でも息づいている。恥辱が、そんなにも君の心を引き裂いたので、今、君は、心を開いて、再び愛に身を委ねることを恐れている。そして、今、新しい希望が、この愛の芽吹きを待っている。今度こそ、この愛は、君が夢見てきたものになる。それでも、君が信じられないと思っているのは知っているよ。でも、僕は、君を失望させたりしない。ねえ、もしも、今夜、僕らが恋に落ちたら、君は大丈夫だよ。君の心は、平安に包まれる。ねえ、もし、僕らが、もう一度、恋に落ちたら、君がチャンスを掴みさえすれば、君は安心して、僕に身を任すことができるはず。心を開いて、もう一度、この愛に身を委ねて欲しい。」

Pain, flows like a river, just keeps on livin' with all them memories.

Shame, you're so heartbroken

now you're scared to open and give your love again.

And now anticipation waits for love.

Will it be everything you dreamed this time around.

I know you have your doubts but I won't let you down.

Darlin' if, if we fall in love tonight, you're gonna be all right.

your heart is in good hands.

Darlin' if, if we fall in love again,

On me you can depend, if you could take a chance.

Open your heart and let love, love again.

 

⑮フォー・ザ・ファースト・タイム(For the First Time)

作詞作曲 ジュド・フリードマン/アラン・リッチ/ジェイムズ・ニュートン・ハワード

◯アルバム「ベスト・バラード・コレクション(1996年/best版/全英19位・全米8位)」初収録。

同名映画の主題歌「フットルース(1984)」の大ヒットで知られるケニー・ロギンズによる同1996年のリリース曲として知られています。でも、リリースは、このロッドのアルバムの方が1ヶ月早く、こちらがオリジナル(原曲)になります。

シングル化はされていませんが、セイリングと並んで、ボーカリスト=ロッド・スチュワートの集大成と言える、素晴らしい完成度のスロー・バラードです。

「それが、君の瞳なんだね。それが、君の微笑みなんだ。僕は、ずっと長い間、君を見てきた。それなのに、そんな君を、今まで、見たことがない。僕を抱きしめる、これが、君の手なんだね。これまで、僕は、なんてひどい盲目だったんだろう。僕は、初めて、君の瞳を見ている気がするよ。初めて、僕は、本当の君に出会っているんだ。僕を見返してくる君を、何度見つめても見飽きることはない。今、初めて、愛が何であるか、理解できた気がする。」

Are those your eyes?
Is that your smile?
I've been looking at you forever.
yet I never saw you before.
Are these your hands holding mine?
Now I wonder how I could have been so blind.
And for the first time I am looking in your eyes.
For the first time I'm seeing who you are.
I can't believe how much I see when you're looking back at me.
Now I understand what love is, love is, for the first time.