ブルース・スプリングスティーンは、ビリー・ジョエルと同じ、1949年の生まれです。イーグルスのグレン・フライやチューリップの財津和夫さんより一年後輩で、ふきのとうの山木康世さんの1年先輩、スティングや伊勢正三さんの2年先輩にあたります。父親は、オランダ系とアイルランド系、母親はイタリア系のアメリカ人で、東海岸のニュージャージー州で生まれました。

スプリングスティーンが音楽を志すようになったきっかけとしては、まだ小学生の子どもだった1950年代から、すでに世界的なロック・スターだったエルヴィス・プレスリーの影響が非常に大きかったようです。

こうしてエルヴィスに憧れて、バンドを始めたのですが、1stアルバム「アズベリー・パークからの挨拶」でデビューしたのは、スプリングスティーンが23歳の冬、1973年1月のことです。しかし、このアルバムのセールスは振るわず、同年9月にリリースされた2ndアルバム「青春の叫び」も、発売当時は、なかなかヒットに結びつきませんでした。

1975年の3rdアルバム「明日なき暴走」がようやく大ヒットし、その後、1980年に、5thアルバム「ザ・リバー」が、初の全米ナンバー1ヒットを記録します。さらに、1984年(35歳)には、7thアルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」が、英米双方で立て続けにナンバー1ヒットを記録し、全世界で2000万枚を売り上げます。

こうしてスプリングスティーンは、アメリカを代表するロック・シンガーとなったのです。

ここでは、この全盛期の頃(1973〜1987年)に発表されたブルース・スプリングスティーンの曲の中から、独断と偏見に基づき、絶対ベストを15曲選びました。

曲順は、発表年時順によります。

 

 

①7月4日のアズベリーパーク(4th of July, Asbury Park (Sandy))

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「青春の叫び(1973年/2nd/全米59位)」初収録。

◯シングル(1975年/3rd/ドイツのみ)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

7月4日はアメリカの独立記念日です。アメリカの祭日ですね。

そして、アズベリーパークは、スプリングスティーンの故郷、ニューヨーク州の南に隣接するニュージャージー州のジョージショアと呼ばれる美しい海岸線に、19世紀末に開発された古い趣ある海岸リゾートの観光地です。

愛する故郷に別れを告げて、大志を胸に、スプリングスティーンは、ここからロック・スターを目指して旅立ったのです。この曲は、故郷への訣別の歌です。

The Liveバージョンで聴くと、とても心に染み入る佳曲です。

「サンディ、今夜、リトルエデンでは、花火が打ち上げられている。そして、この7月4日に取り残された、すべての冷たい無表情な顔を照らし出している。街に降りると、周囲は、飛び出しナイフ愛好家たちでいっぱいだ。彼らは、とても素早く、ギラギラしていて、抜け目がない。達人たちは、暗くなった遊歩道でのピンボールの魔術師のような遊びを軽蔑する。そして、カジノから出てきた少年たちは、海岸で、ラテン系の恋人たちのようにシャツの胸をはだけて踊る。彼らは、ニューヨークから来たウブなバージンの少女たちを追いかける。サンディ、オーロラが昇っていくよ。桟橋の灯り、そして、カーニバルの人生は、永遠に続くんだ。今夜、俺を愛してくれ。もう2度と、お前に会えないかもしれないから。」

Sandy, the fireworks are hailin' over Little Eden tonight
Forcin' a light into all those stony faces left stranded on this 4th of July.

Down in town the circuit's full of switchblade lovers
so fast, so shiny, so sharp
As the wizards play down on Pinball Way on the boardwalk way past dark

And the boys from the casino dance with their shirts open 
like Latin lovers on the shore.
Chasin' all them silly New York virgins.

Sandy, the aurora is risin' behind us.
Those pier lights, 
Our carnival life forever.
Oh, love me tonight, for I may never see you again.
Hey, Sandy girl... my baby.

 

②涙のサンダーロード(Thunder Road)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「明日なき暴走(1975年/3rd/全米3位・全英17位)」初収録。

シングル(1975年/6th)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

シングル化もされなかった曲ですが、個人的には、「ザ・リバー」と並んで、スプリングスティーンの代表曲と思っています。特に、The Liveバージョンは、素晴らしいです。

ロック史上に残る名曲の一つと言っていいでしょう。

「そう、俺は、このギターを手に入れたんだ。どうやってかき鳴らすかも学んだ。そして、俺の車は裏に停めてある。もしも、お前が、その玄関から、俺の車の助手席まで、長い旅路を歩いてくる準備ができているなら、車のドアは開いている。だが、タダじゃないぜ。俺が話さなかったから、お前は寂しいんだろ。だけど、今夜、俺たちは自由だぜ。決まりきった約束事は、ぜんぶ破っちまえよ。お前が追い払った男たちの目の中には幽霊が宿っていた。燃え尽きたシボレーの残骸に乗って、奴らは、この埃っぽい海岸通りに出没するのさ。奴らは、夜な夜な、通りをうろついて、お前の名を叫ぶ。お前が卒業式で着たガウンが、奴らの足元でぼろぼろになっている。夜明け前の冷たい孤独の中で、お前は、奴らのエンジンの咆哮を聴く。だが、お前が玄関に出てみると、奴らは、風に乗って消えてしまう。だから、メアリー、この車に乗りな。この街には負け犬しかいない。俺は、勝つために、ここから出ていく。」

Well I got this guitar
And I learned how to make it talk
And my car’s out back
If you’re ready to take that long walk from your front porch to my front seat.
The door’s open but the ride it ain’t free.
And I know you’re lonely for words that I ain’t spoken.
But tonight we’ll be free,
All the promises’ll be broken.
There were ghosts in the eyes of all the boys you sent away.
They haunt this dusty beach road 

In the skeleton frames of burned out Chevrolets.

They scream your name at night in the street.
Your graduation gown lies in rags at their feet.
And in the lonely cool before dawn you hear their engines roaring on.
But when you get to the porch they’re gone on the wind.

So Mary, climb in.
It’s a town full of losers and I’m pulling out of here to win.

 

③凍てついた十番街 (Tenth Avenue Freeze-Out)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「明日なき暴走(1975年/3rd/全米3位・全英17位)」初収録。

◯シングル(1975年/5th/全米83位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

明るく賑やかな曲なのですが、歌詞はかなり深刻で強烈です。歌詞に出てくるバッド・スクーターは、スプリングスティーン自身だと言われています。

これも、おすすめは、力強く、迫力あるThe Liveバージョンです。

「都会に涙が落ちる。バッド・スクーターは、自分自身のグルーブ(リズム・音の世界)を探している。そして、自分以外の世界中の奴らが、裕福で、優雅に歩いている気がしている。自分は、引っ越す部屋さえ見つけられずにいるのに。誰もが、この街から出ていくべきなのさ。それがすべてさ。俺は、日陰者の人生を走っている。そして、後戻りすることさえできないんだ。十番街は凍てついている。」

Teardrops on the city.
Bad Scooter searching for his groove
Seem like the whole world walking pretty.
And you can't find the room to move.

Well everybody better move over, 
that's all.
Cause I'm running on the bad side.
And I got my back to the wall.
Tenth Avenue freeze-out.
Tenth Avenue freeze-out.

 

④裏通り (Backstreets)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「明日なき暴走(1975年/3rd/全米3位・全英17位)」初収録。

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

スロー・バラードなのに、なんでこんなに力強いんだろうと感嘆させられます。

おすすめは、The Liveバージョンです。

「気だるく、蒸し暑い夏に、俺とテリーは友達になった。俺たちが生まれた、そのむせかえるような熱気の中で、息を吸い込もうと無駄な努力をし、郊外へと車に便乗させてもらい、歯を食いしばって、俺たちは信頼を結んだ。古い廃屋となったビーチハウスで、うだるような空気の中で消耗し、疲れ果てて眠った。そして、裏通りに隠れて、激しい愛と敗北感に満たされて生きていた。夜の裏通りを、俺たちは、人生の成功を掴むために、走っていたんだ。」

One soft infested summer me and Terry became friends.
Trying in vain to breathe the fire we was born in.
Catching rides to the outskirts, tying faith between our teeth,
Sleeping in that old abandoned beach house, getting wasted in the heat,
And hiding on the backstreets, hiding on the backstreets,
With a love so hard and filled with defeat,
Running for our lives at night on them backstreets.

 

⑤明日なき暴走(Born to Run)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「明日なき暴走(1975年/3rd/全米3位・全英17位)」初収録。

◯シングル(1975年/4th/全米23位・全英56位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

スプリングスティーンの疾走型ロックの代表曲。

おすすめは、The Liveバージョンです。

「昼間は、アメリカンドリームの破れ去った通りで、俺たちは汗まみれで働く。夜には、クロームメッキのホイールで、ガソリンを満タンにして、自殺マシーンに乗って、ハイウェイ9号線から檻を飛び出し、金持ちの豪邸街を走り抜ける。この街は、背中から、お前の背骨を切り裂く。それが死の罠さ。自殺刑だ。俺たちには、放浪があっているから、若いうちに、飛び出そう。俺たちは、走るために生まれてきたのさ。」

In the day we sweat it out on the streets of a runaway American dream.

At night we ride through the mansions of glory in suicide machines,

Sprung from cages out on highway 9, 

Chrome wheeled, fuel injected, 

and steppin' out over the line Oh-oh.

Baby this town rips the bones from your back.

It's a death trap, it's a suicide rap.

We gotta get out while we're young 

`Cause tramps like us, 

baby we were born to run.

 

⑥ファイア(Fire)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」初収録。

◯シングル(1987年/30th/全米46位・全英54位)

この曲が制作されたのは、1977年のことです。5月にフィラデルフィアで行われたエルヴィス・プレスリーのライブを観て刺激を受け、書き下ろした曲で、デモテープをエルヴィスに送ったのですが、それが届く前に、8月、エルヴィスは42歳で亡くなったのです。

それ以降も、この曲は、スタジオ録音はされず、ライブでだけ演奏されていました。

スプリングスティーンらしい、ワイルドなラブソング。

当然、おすすめは、The Liveバージョンです。

「俺は、クルマを走らせている。カーラジオをつける。お前をそばに引き寄せる。お前は『いや!』と言う。『そんなやり方は好きじゃない』と言う。だが、俺は、お前が嘘つきだと知っている。なぜなら、俺たちがキスをすると、お前は必ず燃え上がるからな。」

I'm driving in my car.

I turn on the radio.

I'm pulling you close.

You just say no.

You say you don't like it.

But girl I know you're a liar.

'Cause when we kiss

Fire

 

⑦レーシング・イン・ザ・ストリート (Racing in the Street)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「闇に吠える街(1978年/4th/全米5位・全英14位)」初収録。

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

シングル化はされていませんが、スプリングスティーンのスロー・バラードの代表曲です。とても雄大で重厚な曲です。歌詞の弾けるような表現と、重々しい曲調とのギャップが激しいです。

おすすめは、The Liveバージョンです。

「俺は、396立方インチのV8エンジンを搭載した高出力スポーツカーの69年型シボレー・シェベルSS396を手に入れた。それは、今夜、セブンイレブンの駐車場に停めてある。俺と相棒のソニーは、そのクルマを、あり合わせの部品から組み上げた。そして、俺たちは、街から街へと、そのクルマで乗り込むんだ。俺たちは、ただ、純粋に金のためだけに、クルマを走らせる。それ以外の目的は何もない。俺たちは、奴らの口を黙らせ、そして、終いには完全に沈黙させる。今夜、レース会場の街路は、すぐそこ。俺は、最初の踏み込みで、奴らを吹き飛ばしてやるぜ。夏だ。ストリート・レースの季節がやってきたんだ。」

I got a '69 Chevy with a 396, Fuelie heads and a Hurst on the floor.
She's waiting tonight down in the parking lot outside the Seven-Eleven store.
Me and my partner Sonny built her straight out of scratch.

And he rides with me from town to town.
We only run for the money, got no strings attached.

We shut 'em up and then we shut 'em down.
Tonight, tonight the strip's just right, I wanna blow 'em off in my first heat.
Summer's here and the time is right for racing in the street.

 

⑧ハングリー・ハート(Hungry Heart)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ザ・リバー(1980年/5th/全米1位・全英2位)」初収録。

◯シングル(1980年/12nd/全米5位・全英44位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

スプリングスティーン初の全米ベスト10圏内ヒット曲。

おすすめは、The Liveバージョンですが、この曲は、スタジオ録音バージョンでも、どちらでもよいかな。

「ボルチモアに、女房と子どもがいたんだ、ジャック。俺は、ちょっと車で出て、そのまま戻らなかったのさ。川のように、どこへ流れていくのかわからない。俺は、間違った道を選んだが、そのまま戻らずに来ちまったのさ。誰もが、飢えた心を持っている。誰もが、満たされない心を抱えて、彷徨っているんだ。お前は、お金を稼いで、自分に課せられた役割を演じている。だが、誰もが、飢えた心を抱えているんだよ。」

Got a wife and kids in Baltimore, Jack.

I went out for a ride and I never went back.

Like a river that don't know where it's flowing

I took a wrong turn and I just kept going

Everybody's got a hungry heart

Everybody's got a hungry heart

Lay down your money 

and you play your part

Everybody's got a hungry heart

 

⑨独立の日(Independence Day)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ザ・リバー(1980年/5th/全米1位・全英2位)」初収録。

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

シングル化はされていませんが、これも、スプリングスティーンのスロー・バラードの代表曲。1人の若者の一身独立の日を歌っています。名曲です。

おすすめは、The Liveバージョンです。

「父さん、もう寝なよ。もう遅い。何を言っても、もう何も変わらないさ。俺は、朝には聖メアリの門から出発する。たとえ俺たちに何かできたとしても、それで、何かを変えられるわけじゃない。この家をおおう闇が、俺たち家族の一番いい時代を、奪ってしまったんだ。俺たちを捕らえた闇は、この街にもある。でも、奴らは、もう俺に触れることはできない。父さんも、もう俺をどうにもできない。父さんに、奴らがしてきたことを、俺は見てきた。でも、奴らが、それを俺にすることはできないさ。だから、さよならだ。今日は俺の独立の日だ。少年は、みな、旅立たなければならない。だから、父さん、さよならを言ってくれ。男は、みな、自分の道を見つけなきゃならない。そして、独立の日がやってくるのさ。」

Well Papa go to bed now, it's getting late.
Nothing we can say is gonna change anything now.
I'll be leaving in the morning from St. Mary's Gate.
We wouldn't change this thing even if we could somehow.
'Cause the darkness of this house has got the best of us.
There's a darkness in this town that's got us too.
But they can't touch me now and you can't touch me now.
They ain't gonna do to me what I watched them do to you.
Well say goodbye, it's Independence Day.
It's Independence Day, all boys must run away.
So say goodbye, it's Independence Day.
All men must make their way come Independence Day.
 

⑩ザ・リバー(The River)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ザ・リバー(1980年/5th/全米1位・全英2位)」初収録。

◯シングル(1981年/17th/全英35位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

個人的には、スプリングスティーンの代表曲です。スプリングスティーンの名曲を一曲だけ選べと言われたら、間違いなく、この曲を選びます。

おすすめは、The Liveバージョンです。心が、魂が、震えます。

「俺は、ジョンズタウン・カンパニーで、建設の仕事を得た。だが、最近、不景気のせいで、仕事が入らない。そうすると、これまで、とても大切だと思っていたもの、すべてが、虚しく消えちまったのさ。俺は、何も覚えていないふりをしている。メアリーは、何も気にしていないように、振る舞っている。けれど、俺は、兄貴の車を借りて、2人でドライブしたことを思い出す。貯水池で、彼女の身体は日に焼けて、濡れて光っていた。その夜は、水辺の土手で、彼女を抱き寄せ、彼女の吐息を感じながら、眠らずに横になっていた。思い出が、繰り返し、俺をあの頃へ引き戻す。まるで呪いのように、俺をとらえて離さない。叶わなかった夢は、嘘っぱちだったってことなのか、それとも、嘘よりもっと悪いものなのか。その叶わなかった夢が、今夜も、俺を、あの川へと連れて行く。川底は干上がっていると、もう知っているのに。それでも、俺は、今夜も、あの川の記憶に引き戻される。俺とお前、2人で、川を下って行く、車に乗って。」

I got a job working construction for the Johnstown Company.
But lately there ain't been no work on account of the economy.
Then all them things that seemed so important, well mister they vanished right into the air.
I just act like I don't remember, Mary acts like she don't care.
But I remember us riding in my brother's car, her body tan and wet down at the reservoir.
At night on them banks I'd lie awake and pull her close just to feel each breath she'd take.
Now them memories come back to haunt me, they haunt me like a curse.
Is a dream a lie if it don't come true or is it something worse?
That sends me down to the river, though I know the river is dry.
Oh down to the river tonight.

Down to the river, my baby and I.

Oh down to the river we ride.

 

⑪ボーン・イン・ザ・U.S.A.(Born in the U.S.A.)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(1984年/7th/全米1位・全英1位)」初収録。

◯シングル(1984年/24th/全米9位・全英5位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

スプリングスティーンの曲の中で、もっとも有名な曲です。

タイトルやサビの歌詞から、愛国歌的なイメージを持たれがちな曲ですが、よく聴くと、歌詞の中には、ベトナム戦争への痛烈な批判などもあって、実は、むしろ、反戦歌なんですよね。

この曲に限っては、The Liveバージョンより、スタジオ録音バージョンがおすすめです。

「死人のような街に生まれ、歩き始めると同時に蹴り飛ばされた。ついには、虐待された犬同然になって、残りの半生を、隠れて暮らすようになる。この小さな街で、小さな面倒ごとを起こした。すると、彼らは、俺の手にライフルを持たせて、アジア人を殺すために、外国へと送った。帰郷して製油所へ行った。雇用係は「私の一存では…」と言った。退役軍人省の役所に行くと、「まだ分からないのか?」と言う。俺の兄貴は、ケソンでベトコンと戦った。奴らは、まだ、そこで生きているが、兄貴はもういない。兄貴はサイゴンで愛している女がいた。今は、彼女の腕の中にいる兄貴の写真が1枚あるだけだ。刑務所のすぐ隣、製油所のガスの炎のそばで、もう10年、俺はくすぶっている。どこにも行けない。俺はアメリカで生まれた。俺は、アメリカの忘れ去られた親父だ。俺はアメリカのクールでロックな親父だ。」

Born down in a dead man’s town,

The first kick I took was when I hit the ground.

You end up like a dog that’s been beat too much

‘Til you spend half your life just coverin’ up.

Got in a little hometown jam,So they put a rifle in my hand,

Sent me off to a foreign land to go and kill the yellow man.

Come back home to the refinery, hiring man says “Son if it was up to me”

Went down to see my V.A. man, he said “Son, don’t you understand”

I had a brother at Khe Sahn fighting off them Viet Cong.
They're still there, he's all gone.
He had a woman he loved in Saigon.
I got a picture of him in her arms now.
Down in the shadow of the penitentiary,
Out by the gas fires of the refinery,
I'm ten years burning down the road.
Nowhere to run, ain't got nowhere to go.
Born in the U.S.A.
I was born in the U.S.A., now
Born in the U.S.A.
I'm a long gone Daddy in the U.S.A., now
Born in the U.S.A.
Born in the U.S.A.
Born in the U.S.A.
I'm a cool rocking Daddy in the U.S.A., now

 

⑫ダンシング・イン・ザ・ダーク(Dancing In The Dark)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(1984年/7th/全米1位・全英1位)」初収録。

◯シングル(1984年/22th/全米2位・全英4位)

スプリングスティーンの曲の中で、商業的には、もっとも成功した曲です。スプリングスティーンは、シングルで1位になったことがないんですよね。この曲の全米2位が最高位なんです。この曲は、スプリングスティーンが、プロデューサーに、「お願いだから、売れる曲を作ってくれ!」と言われて、自分の葛藤を正直に見つめて作った曲だそうです。

この曲は、今回の選曲で、唯一、The Liveに収録されていません。スタジオ録音バージョンしかないのです。でも、それで良かったかもしれません。

「夕方、俺は目を覚ます。言うべきことは何もない。朝、帰宅する。何も言うことがないまま、眠りにつく。ただ、疲れているだけなのさ。俺は、疲れ果て、自分自身に飽き飽きしている。ヘイ、そこのかわいこちゃん。俺は、ちょっと助けが必要なんだ。心に火がつかないんだ。火花なしでは、火はつかないさ。俺の銃は借り物なんだ。暗闇の中で、ダンスを踊っていても、心が燃え上がることがないのさ。」

I get up in the evening
and I ain't got nothing to say.
I come home in the morning.
I go to bed feeling the same way.
I ain't nothing but tired.
Man I'm just tired and bored with myself.
Hey there baby, 
I could use just a little help.

You can't start a fire.
You can't start a fire without a spark.
This gun's for hire
even if we're just dancing in the dark.

 

⑬アイム・オン・ファイア(I'm On Fire)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(1984年/7th/全米1位・全英1位)」初収録。

◯シングル(1985年/25th/全米6位・全英5位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

相当にワイルドなラブソングです。

おすすめは、The Liveバージョンです。アレンジがカッコいいです。

「やあ、かわい子ちゃん。親父さんは家にいるのかい? それとも、出かけていて、家には、お前さんが、1人っきりかい? 俺は、よくない欲望に駆られているんだ。俺の心は、欲望の炎に焼かれそうだ。教えてくれ、かわい子ちゃん。彼はそんなにいいのかい? 俺がしてあげるようなことを、彼は、あんたにしてくれるのかい? 俺なら、もっといい気持ちにしてあげられるぜ。俺の心の中は、あんたへの欲望で燃えているんだ。」

Hey, little girl, is your daddy home?

Did he go and leave you all alone?

I got a bad desire.

Oh-oh-oh, I'm on fire.

Tell me now, baby, is he good to you?

And can he do to you the things that I do?

Oh, no. I can take you higher.

Oh-oh-oh, I'm on fire.

 

⑭ボビー・ジーン(Bobby Jean)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(1984年/7th/全米1位・全英1位)」初収録。

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

Born to Run と並ぶ、疾走型ロックの代表曲。名曲です。なぜ、シングル化されなかったのか謎です。おすすめは、The Liveバージョンです。泣けます。

「このあいだ、お前の家の前を通りかかった時、お前の母さんが、お前が出て行ったと教えてくれた。お前の意志は固くて、俺が何を言っても、誰が何を言っても無駄だったろうさ、と言っていた。お前と俺とは、お互い16歳だった頃からの付き合いだ。お前が出ていくつもりだと知ってさえいたら、呼び止めることができていたなら、せめて、さよならぐらいは言いたかったぜ、ボビー・ジーン。」

「お前とは、ずっといっしょにつるんできたよな。他の奴らに背を向けられても、馬鹿にされても。俺たちは、同じ音楽が好きで、同じバンドが好きで、同じ服が好きだった。俺たちが一番イカしてる、俺たち以上にイカす奴らなんか見たことないぜ。そう言い合った。お前が、俺に教えてさえくれていたら、俺はお前に、せめて、さよならぐらいは言いたかったんだぜ。ボビー・ジーン。」

Well I came by your house the other day, 
your mother said you went away.
She said there was nothing that I could have done.
There was nothing nobody could say.
Me and you weve known each other 
ever since we were sixteen.
I wished I would have known,
I wished I could have called you,
Just to say goodbye. Bobby Jean.

Now you hung with me, when all the others turned away,
turned up their noise.
We liked the same music.
we liked the same bands.
we liked the same clothes.

We told each other that we were the wildest, 
the wildest things we'd ever seen.
Now I wished you would have told me,
I wished I could have talked to you,
Just to say goodbye. Bobby Jean.

 

⑮マイ・ホームタウン(My Hometown)

作詞作曲 ブルース・スプリングスティーン

◯アルバム「ボーン・イン・ザ・U.S.A.(1984年/7th/全米1位・全英1位)」初収録。

◯シングル(1985年/28th/全米6位・全英9位)

◯アルバム「The〝Live〟1975-1985(1986年/ライブ版1st/全米1位・全英4位)」収録。

これも、歌詞が深いです。

おすすめは、The Liveバージョンです。

「父親のために新聞を取りに、バス停へ10セント銅貨を手に持って走って行った。当時、俺は、8歳の子どもだった。古い大きなビュイックで、街に向けて走る時、父親の膝の上に乗って、一緒にハンドルを握っていた。俺の髪の毛をくしゃくしゃにしながら親父は言った。息子よ、よく観ておけ。これが、お前の故郷の街だ、と。1965年には、俺の高校でも、緊張が高まっていった。黒人と白人の間で、多くの諍いがあった。だが、それに対して、できることは何もなかった。土曜の夜、街灯に照らされた2台の車の後部座席には銃があった。ショットガンが火を噴き、怒号が飛び交った。俺の故郷にも、難しい時代がやってきた。そして、今、この街のメインストリートは、廃墟の真っ白い窓と空っぽの店ばかりだ。こんなところにやってくる物好きは、もう誰もいないだろう。線路の向こうにある繊維工場は閉鎖される。工場長は言った。この街では、仕事は無くなってしまう。もう、戻ってはこない。昨夜、俺とケイトは、ベッドの中で、この街を出ていくことを話し合った。荷物をまとめて、たぶん南へ。俺は今、55歳。もう、自分の子どもがいる。昨夜、俺は、子どもを膝に乗せてハンドルを握らせ、よく観ておけ、と言った。これが、お前の故郷の街だ、と。」

I was eight years old running with a dime in my hand
Into the bus stop to pick up a paper for my old man.
I'd sit on his lap in that big old Buick and steer as we drove through town.
He'd tousle my hair, say son take a good look around.
This is your hometown. It's your hometown.

Your hometown. It's your hometown.
In '65 tension was running high at my high school.
There was a lot of fights between the black and white, 

there was nothing you could do.
Two cars at a light on a Saturday night, in the back seat there was a gun.
Words were passed in a shotgun blast, troubled times had come.
Yeah to my hometown. Well to my hometown.
My hometown. Yeah to my hometown.

Now Main Street's whitewashed windows, vacant stores.
Seems like there ain't nobody wanna come down here no more.
Well they're closing down the textile mill 'cross the railroad tracks.
Foreman says these jobs are going boys and they ain't coming back.
To your hometown. Yeah to your hometown.
Your hometown. Yeah to your hometown.
Last night me and Kate we laid in bed talking about getting out.
Packing up our bags maybe heading south.
I'm thirty-five, we got a boy of our own now.
Last night I sat him up behind the wheel, said son take a good look around.
This is your hometown.