2022年の参院選が6月22日に公示されました。7月10日の投開票日まで18日間の選挙戦が幕を開けました。

参院選では、沖縄県は、県全体が選挙区となります。改選議席は1名です。

沖縄選挙区での立候補者は5名です。そのうち、幸福実現党、参政党、NHK党の候補者は泡沫候補と言えるでしょう。

 

よって、今回の参院選沖縄選挙区は、社民・共産・社大など、〝辺野古基地建設を許さない〟「オール沖縄」の革新勢力が推す現職参議院議員の伊波洋一氏(70歳)と、総務省出身で、自民党公認、公明党推薦という保守の新人候補、古謝玄太氏(38歳)との、事実上の一騎打ちと見られています。

 

 

 

◎伊波洋一氏は、1952年、沖縄県宜野湾市の生まれで、琉球大学理工学部卒、1974年、宜野湾市役所就職、1996年、宜野湾市役所を退職し、沖縄県議会議員選挙に出馬して当選、2000年にも再選しました。その後、2003年には、県会議員を辞職し、宜野湾市長選に出馬して当選、2007年にも再選しました。

伊波洋一氏は、宜野湾市長として、全国で初めて、中学生以下の入院費の無料化を実現しました。

その後、2010年に、伊波洋一氏は、宜野湾市長を辞し、沖縄県知事選に立候補しましたが、自民公認の現職仲井真弘多氏に4万票の大差で敗北しました。

さらに、2012年には、自民公認の佐喜真淳氏と宜野湾市長選を戦いましたが、900票の僅差で敗れました。

2016年には、初めて参議院選に立候補し、得票率57.8%で自民党公認の現職島尻安伊子氏を下して初当選しました。その時の公約の一つに、「沖縄の最低賃金を時給1500円に上げる」というものがありましたが、実現はされませんでした。

参議院の会派「沖縄の風」幹事長。

今回は、2回目の当選を目指して立候補しています。

キャッチフレーズは、「(日本政府に)戦争を2度とさせない!」「平和な沖縄を守る!」など。

 

◎古謝玄太氏は、1983年沖縄那覇市の生まれで、首里石嶺町で育ちました。石嶺小・中学校から、野球部で活動したいがために、野球部のない公立の開邦高校でなく、野球部のある私立の昭和薬科高校に進学しました。その後、野球部での練習に明け暮れながら、化学にも興味を持ち、高三の時に、全国高校化学グランプリで金賞を受賞しました。

現役で東京大学薬学部に合格し、大学時代には、東京大学沖縄県人会をつくり、初代会長に就任しました。その後、大学院在学中に、研究者になるか、政治家になるか、迷っていたようですが、その迷いにけりをつけ、大学院を中退し、2008年(24歳)に総務省に入り、総務官僚から政治家への道を志しました。

県出身者が官僚の道に進んだのは、非常に珍しいことのようです。

古謝玄太氏は、総務省から内閣官房長官付、長崎県への出向、復興庁参事官補佐を経て、2020年(36歳)総務省を退職し、民間のNTTデータ経営研究所に入社しました。

そして、今回、初の参院選当選を目指して、沖縄選挙区から立候補しています。

キャッチフレーズは「老若男女が笑顔でいられる沖縄をつくる」「沖縄振興の即戦力」など。

 

 

 

今回の参院選の二人の候補者は、さまざまな意味において、極めて対照的です。

 

◯まず、第一に年齢です。

伊波洋一氏は70歳、古謝玄太氏は38歳、その年齢差は32歳です。

伊波洋一氏の強みは、県内での政治家としてのキャリアによる知名度と信頼であり、一方で、古謝玄太氏の強みは、中央官僚の経験を活かした実務能力、そして、若さとフレッシュな魅力です。

 

◯二人の候補者の対照的な点、第二にキャリアです。

▶︎伊波洋一氏は、琉球大学理工学部卒業後、宜野湾市役所、沖縄県会議員、宜野湾市長を務めてきました。参議院議員に当選するまでの伊波洋一氏のキャリアは、すべて沖縄県内で経験・実績を積んできたものです。

県内の事情を熟知した「土着の政治家」であるということです。

そして、伊波洋一氏は『自分は県民に育てていただいた。県民には、自分たちの〝洋一〟だと思ってもらいたい。私自身としては、これからも、沖縄の声を、国政の場に届け、沖縄の思いを国に訴えていきたい』と述べています。

基本的には、辺野古基地建設反対の声を国政の場で政府に訴えることを、自身の最大の使命として考えていらっしゃるのだと思います。

▶︎一方で、古謝玄太氏は、東京大学大学院中退後、総務官僚として中央でキャリアを積んできました。そして、民間のNTTデータ研究所を経て、今回、参院選に立候補するわけですが、中央の官僚経験者が沖縄県内の選挙で当選して議員(政治家)になった人は、これまでにいないのだそうです。それだけ、県出身者の官僚がいないということでもあります。

もし、古謝玄太氏が当選すると、県内初の中央の官僚経験者の国会議員ということになります。

そして、古謝玄太氏は「広い視野に立って現実を見つめ、沖縄にとって何が正しい道なのか、見極めるとともに、豊富な人脈を用いて、沖縄のためになる政策を実現していきたい」と述べています。

キャッチフレーズの一つに「沖縄県を日本一の県にする!」というものがあります。

 

◯3つ目の大きな相違点は、政治的な立ち位置の違いです。

▶︎伊波洋一氏は、社民・共産・社大など「オール沖縄」勢力が推す革新の候補で、辺野古基地建設反対の立場です。アメリカ軍基地の存在そのものに否定的な態度を表明しており、「基地のない平和な沖縄」の実現を目指しています。

伊波洋一氏の主張は、アメリカ軍基地があることで、アメリカの引き起こす戦争に、沖縄が巻き込まれるというものです。

▶︎古謝玄太氏は、自民公認、公明推薦の保守の候補で、辺野古基地建設容認の立場です。辺野古への移転によって、普天間基地の返還をスムーズに行うことが重要と主張しています。自民党の候補者が「容認」を公約に明記して国政選挙を戦うのは初めてのことです。

古謝玄太氏の主張は、アメリカ軍基地を含めて、アメリカとの強固な軍事同盟が、近隣諸国に対して抑止力となっているというものです。

 

◯4つ目の相違点は、経済政策の違いです。

▶︎伊波洋一氏は、左派リベラル的な弱者救済の貧困対策を中心に据えた経済政策をとってきました。宜野湾市長としては中学生までの入院費の無償化を実現し、参議院議員としても最低賃金の引き上げ(時給1500円)を公約としてきました。(今回の選挙では、最低時給1000円以上を公約にしています。ただ、野党共闘の共通公約としては維持されているため、共産、社民、立憲は、今回も最低時給1500円を主張しています。)

さらに、保育・児童教育、学校給食、子ども医療の無償化を公約としています。

消費税率は5%への引き下げを主張しています。

▶︎古謝玄太氏は、沖縄のベンチャー企業向けの研修事業を企画運営したり、多くの若手起業家と交流したりしながら、情報通信基盤の充実など、行政が産業の振興を支えるすべを考えてきたようです。総務省・民間企業での経験をもとに、実践力をアピールし、沖縄の経済的自立を目指したいと述べています。

さらに、国立大学への薬学部新設、北部基幹病院の早期整備を公約としています。

消費税率は現状維持の立場です。

 

◯5つ目は、安全保障についてのスタンスの違いです。

▶︎伊波洋一氏は、自衛隊があれば、米軍基地は要らないという立場です。また、自衛隊の増強にも反対していて、日本の軍拡はアジアの軍事的緊張を高めると主張します。そして、憲法9条に「武力による威嚇をしない」とあるように、軍事力で周辺国を威嚇するのでなく、対話による友好関係の樹立が重要だと主張します。したがって、県内の自衛隊の整備増強にもすべて反対しています。

憲法9条改正には反対の立場です。

▶︎古謝玄太氏は、日本を守るためには、自衛隊だけでなく、日米同盟も必要という立場です。沖縄の基地負担軽減は大切だが、国の安全保障を揺るがせるわけにはいかないと主張します。ロシア・ウクライナ戦争を見ても、対話も確かに重要ではあるが、同時に、現実的な安全保障政策の必要性を痛感すると述べています。

憲法9条改正には賛成の立場です。

 

 

 

さて、県民は、どちらの候補を選ぶのでしょうか?

県内の左派系メディア二紙は、いずれも、辺野古基地建設反対、及び反米・反基地の立場と心情に共感的であるため、政治的・思想的に中立とは言い難い面があります。県内のメディア報道は、伊波洋一氏に有利に働く傾向があるということです。

そういうことを考慮して、ここでは敢えて完全に中立の立場で、公平な視点から記事をあげてみました。

皆さんが、選挙で候補者を選ぶ参考にしていただければ幸いです。