翌日、病院から電話があり、状態がよくなっていることを聞き、ひとまず安心。

もう少し経過をみたいので入院が必要とのこと。

私は言われるがまま、信じ込み、キューピーを向かえに行くことはなかった。

しかし、深夜になって不安が増し、急遽、お見舞いに行くと、『急に来られても困ります!お見舞いも予約がない方はお断りしています。が今回はもう来られてますので、特別ですよ。もう二度とこのようなことはしないで下さい』

と怒られ、何度も謝りながら、キューピーを一度だけ抱き締めて、その額にキスをしました。
心なしかキューピーは弱っているようにみえましたが、泣く泣く帰路につきました。

その翌日、病院から電話があり、昨夜のことを叱られた上で、話したいことがあるということで、病院へ呼び出されました。


診察台の上にのせられたキューピーはもう立ち上がることもできないほど、力なく、それでも必死に私にしっぽをふって悲痛に叫んでいました。

誰がみても、明らかに病状は悪化しているし、私はどうしていいのか分からず、ただただ、この腕の中にキューピーを納め、泣きそうになるのを堪えていました。

動揺と恐怖の中、獣医師が一枚の紙を持ってきて、大きな文字で『パグ脳炎』と書きました。

『パグ脳炎の可能性があります。2日間様子を診ましたが、残念ながらこの発作はてんかんとは別のもののようです。』


と静かに、冷静に言い、そしてまた紙に何かを書き始めました。

『安楽死』という三文字をみた時、こいつはアホかっと本気で思い、ショックよりも怒りが込み上げて震えたのを覚えています。

今、私の腕の中で必死にしっぽを振って、顔をなめている、この子を安楽死させる??

パグ脳炎という病名も初耳でしたが、その安楽死という文字がただただ理解不能で、先生は淡々と何かを話していましたが、私の耳には何も聞こえてきませんでした。

確か…

パグ脳炎だった場合、安楽死の選択が飼い主さんにとっても、この子にとってもベストな決断とか…

パグ脳炎かどうか調べるには脳のCTを撮る必要があって、そのCTを撮るには最短で3日後に予約がとれるとかで…


混乱した私から、獣医師はキューピーを引き取り、CTの値段説明などをしていたと思います。

総額50万円くらいかかること。
そのお金が用意できなければ、犬を飼う資格がないこと。