続きです。


ギュが兄さんに惚れてってパターンが好きなんだけど気付かない兄さんに焦れったいぞコンニャロっ!ってのが好き。















【Time to fall in love4】



「コホッ…」

小さく咳払いをしたイェソンにその場に居た全員が反応した。


「ヒョン大丈夫?」


最初に駆け寄ったのはリョウクで。心配そうに発せられた言葉にその後から続々とイェソンの周りには黒だかりが出来ていった。それぞれがイェソンの体を心配して口々に風邪?なんて言葉をかけている。

「ちょっと喉がイガイガするだけだから。」

そう言って周りに笑顔を振りまくイェソンを見て、キュヒョンは密かに溜息をついた。そんなキュヒョンを目の端に捉えて、イェソンは咎めるような目を向けてくるからキュヒョンはそれに態とらしく肩を竦めてみせた。


今日は新曲のお披露目となる収録。大切なその日にイェソンは熱を出してしまっていた。それも結構な高熱。それを知っているのはキュヒョンだけで。というのも、それを知ったのは偶然の出来事だった。
何時もは目を覚まさないだろう午前4時。新曲お披露目の緊張からか明け方早くに目を覚ましてしまったキュヒョンは、喉の渇きを覚えてキッチンへと向かった。まだ薄暗かったリビングを電気も点けないまま通り過ぎようとして、ソレに気付いた。

(………あれ?誰か…居る……?)


薄暗いリビングのソファに誰かが座っていた。こんな時間に自分の他に誰が…そんな気持ちから近付いてその背中に声を掛けようとして、そのまま驚きに声を上げそうになった。ソファの背もたれに寄りかかっていた体が突然傾いてそのまま倒れ込んだからだ。上げそうになった声を抑えて慌ててソファの前に回ったキュヒョンは、倒れ込んだ人物にまた驚いた。

(ヒョン……?)

倒れ込んだのは、寝室で寝ていると思っていたイェソン。その表情が酷く険しい。瞳を閉じたままソファへと体を倒し眉間に皺を寄せていた。どうしたんだろうと声を掛けて、それに応えるように開かれた瞳が酷く虚ろでまた驚く。

「どうしたんですか?具合でも…」

言いかけてイェソンの手元に落ちていた小さな薬箱が目に入る。それを手に取ったキュヒョンは一気に表情を曇らせた。

(解熱剤………?)

そのまま目の前のイェソンへとまた目線を戻せば、荒い息を吐きながらキュヒョンが持っていた薬箱を眺めている。見られたくない現場を見られた…
そんな感じだろうか。ユックリとイェソンの腕が動いて箱を持っていたキュヒョンの手に触れた。その手の異常な熱さに思わず息を飲む。

「……熱、あるんですね?」

それには答えないまま、ジィっとキュヒョンを見つめていて。
よくよく周りを見ればコップなどは置いていない。という事はここまで来て薬箱を取ったものの、飲む前の段階で力尽きた。という事だろうか。
訴えるような虚ろな瞳を見返して、自分の手を薬箱ごと握っている手を優しく解いた。

「今水を持ってきますから…」

その言葉にイェソンは僅かに頭を縦に振って瞳を閉じた。



そのまま薬を飲ませて、皆には言うなと口止めをされた状態で今に至る。
あの時無理矢理計らせた体温は38度を軽く超えていた。荒い息を吐いた状態でグッタリとソファに横になっていたのに、今はそんな気配すらない。 薬を飲んだとは言っても市販の解熱剤などあまり効果は見込めないだろう。
それなのに普段となんら変わらない姿を見せているのは、彼のプロ根性の成せる技なのだろうか。

またコホリと咳をしたイェソンを見て、キュヒョンは動いた。


「トゥギヒョン、まだ収録まで時間ありますよね?」

突然言われて驚きつつ、まだ収録までには二時間弱余裕があった事にイトゥクは頷いて。

「どうかしたの?」

「今朝早起きし過ぎて…少し仮眠したいんですけど。」

そう言うキュヒョンに笑顔で判ったと頷いたイトゥクは、空いている楽屋を使わせてもらえるようマネージャーへと頼んでくれた。


「じゃあ時間になったら起こしに行ってあげるから。」


行っておいで。そう言うイトゥクに頷いたキュヒョンは、当たり前のようにイェソンの腕を掴むとイスから無理矢理立ち上がらせたのだ。それには他のメンバーも驚きに目を見張ったのだが、キュヒョンは何でもないようにサラリと言った。

「ヒョンも寝不足でしょう?目の下真っ黒。」

一緒に寝てあげますから行きましょう。そんな風に言って、メンバーが何か口を出す前にサッサと楽屋から出ていたったのだった。






「……何すんだよお前っ」

皆変な目で見てたじゃないか。そう苦言を挺すイェソンを無視して用意された楽屋へと入ったキュヒョンは、備えつけられていた長椅子へとイェソンを強引に座らせた。

「ほら、抵抗する力も無い…」

座らせた体を軽く押しただけで長椅子へと倒れ込んだイェソンに冷たい瞳を向ける。それにムッとした表情で起き上がろうとしたイェソンは、その行動を阻止された。
長椅子の端に座ったキュヒョンがイェソンの頭を自分の膝へと乗せて、肩を押さえ込んでしまったのだ。

「っ何してんだって!」

慌てて肩の手をどかそうとしたら、逆にその手を掴まれてしまった。

「……やっぱり、下がってない…」

そんな言葉と同時にまた溜息をつかれて。バレてしまっては仕方がない。イェソンは悪足掻きを止めてキュヒョンの膝へとグッタリと頭を預けた。元々あんなに高い熱が直ぐに下がるとは思っていない。あの明け方の時点でキュヒョンにはバレているのだし隠す必要ももう無い。

力を抜いた途端に荒い息を吐き出したイェソンに、やっぱり相当辛かったんだなとその顔を見た。先程まで白かった肌が仄かに赤く色付いている。肌の色まで自在に操るのだろうか、この人は。そう思いながら、キュヒョンは思い出したようにポケットから薬の箱を取り出した。

「薬、飲んでおきますか?」

明け方近くに飲んだ薬はもう切れているだろう。時計を見ると午後の3時を指そうという所だ。その申し出にイェソンは頷くだけで瞳は閉じたまま。
起き上がろうともしない体を仕方なく抱き起こしてやる。楽屋を出る時に持ってきたペットボトルの蓋を開けて、薬をイェソンの口元へと持っていった。

「ほら、口…開けてください。」

チョン、と薬を唇に触れさせてやると小さくソコが開いた。
そこに薬を放り込んで今度はペットボトルの口を近付ける。

「ハイ、水です…」

またチョンと唇に触れさせればポッと開く。それが何だかまたキュヒョンの心を刺激して、思わず手元が狂ってしまった。飲んでいたペットボトルを傾け過ぎてイェソンの口の端から水が垂れてしまったのだ。
それにやっと瞳を開いたイェソンが抗議の目を向ける。が……

熱で潤んだ瞳は変な色気を醸し出していて。またキュヒョンの心臓が跳ねた。

「……服、濡れる…」

睨んでも動かない相手にそう一言だけ告げたイェソンは手を動かす事すらしんどいのだろう。ん!と顎を突き出してくるのだ。これは、拭けという事だろうか……

無言のままその顎を親指で拭ってやると、満足したのかイェソンはキュヒョンの首筋へと顔を埋めて息を吐いた。その熱い息が首筋を擽る。


「……この体制、キツくないですか…?」

上がる鼓動に少し息苦しさを覚えながら言えば、イェソンはその首筋へと擦り寄ってきて。

「……コッチのが、あったかい…」


そのまま全体重をキュヒョンへと預けて瞳を閉じた。

「………時間になったら、起こします…」

その言葉を聞いたかどうか、直ぐに寝息を立て始めたイェソンの顔をソッと覗き込む。額に少し汗をかいていて、息は苦しそうだが安心しきった表情をしていた。
前髪をかき分けて汗をソッと拭ってやる。それに反応して、また擦り寄ってきた肩へと腕を回した。


「………無意識だから、キツイなぁ…」


ハァ…思わず出た深い溜息。きっと本人は何でも無い事のようにやっている。その無意識な甘えが余計にキュヒョンの心を掻き乱すという事にさえ、気付いていないだろう。
もうハッキリと判ってしまった自分の気持ちを持て余しつつ、熱い体をソッと抱き締めた。





※完璧兄さんを意識しちゃったギュ。その気持ちにまだまだ気付かない兄さん。




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