5月23日は《恋文の日》

という事でー。

今回はこのお話の最大のテーマであり、タイトルにもなっている【正しい気持ちの伝え方】に触れてみようかなと。
そう思いまして、またも本編脱線で書いてしまいましょう!(オイ

言葉ってどんなに大事なモノか。
どんな時にどんな形で伝えるのか。伝えなくてもイイ言葉がある。
伝えなくたって通じる心や、伝えずに心に残さないとイケナイ言葉。
でも、それと同時に伝えないといけない言葉もある。
伝えるからこそ、人の心を優しく出来る心の言葉。

そんな言葉の形を、書けたらいいな……なーんてね?



ではでは参りましょう!!この二人はどんな時に言葉をどう表現していくのか。きっとまた激甘になる事間違い無いんですけどねー(笑)
それでも二人の甘くも優しい空間を共有したい!なーんて癒しを求める方はどぞっ!!






【正しい気持ちの伝え方・番外(恋文編)】



青い空の広がる中。早くから入っていた仕事は既に終了し。午後を待たずして宿舎へと戻って来れた、そんな日。
イェソンは朝干していった洗濯物を取り込んで、床へとペタリ座り込んだ状態で鼻歌交じりにソレを畳んでいく。そんな姿に笑みを零しながら、キュヒョンはパソコンでその日の見逃した情報を追っていたのだが。

「……へぇ…」

思わず出た声。そんな呟きにイェソンが反応しない訳が無く。
なに?なんて問い掛けてくる視線と共にコトリ首を傾げる様は本当にアラサーなんだろうかと毎度ながらに疑ってしまう。
そんな事を思いつつ。パソコン画面をイェソンへと向けて、ある一点へと指を差した。

「………523?」

この数字が何だというのか。またもコテリ首を傾げて、キュヒョンのお気に入りのワイシャツをシワになる程握り締める手。内心止めなさいとツッコミつつその気持ちを判らない様隠して、その手を優しく取りながら。

「今日は、恋文の日なんですって。」

ニッコリ笑顔と共にそのまま手の甲へと唇を寄せた。

「コイブミ?」

仄かに赤らんだ目元が愛らしい。こうして何時だって新鮮な反応を見せてくる相手に胸が擽られる。
キュヒョンはその手を握り締めたまま、数字を一つ一つ指差してやって。

「恋(5)ぶ(2)み(3)と読むらしいです。」

恋文とは日本の言葉で、要するにはラブレターの事なのだとキュヒョンは説明してやる。

「言葉を重んじる日本ならではの日ですね…」

ニッコリ笑顔のまま両手を握られて、身動き取れないながらもイェソンはパソコン画面をジーッと見つめて。

「……欲しい?」

「え………」

一瞬何を聞かれたのかが判らなかった。欲しいとは、恐らくその恋文をだろう。だが、本当にその意味を判っているのか甚だ疑わしい。
普通の人であればそのままラブレターを書いてやるとなるが、相手はあのイェソン。何をどう理解するかは彼次第だから。

「……恋文がどんなモノか……判ってますか?」

聞けば途端に膨れる頬。つい先日、こうした表情をするなと注意したばかりだというのに。そうは思うが今は機嫌の悪くなりそうなイェソンをどう上昇させるかが最重要事項。

「僕に、書いてくれるんですか?」

少し前かがみになりその顔を覗き込んだキュヒョンに、それでも一度降下し始めた気持ちは直ぐには上がらない。人のソコが難しい所でもあるのだけれど。

「………や。書かないっ」

プイッとソッポを向いてしまったイェソンを上げるのは至難の技。
今日は悪い事にこの後キュヒョンのみが仕事となっている。折角書いてくれるかもという状況は残念だが諦めるとして、イェソンの機嫌だけでも直したい。
というか、直さなければならない。

「ヒョーン……こっち、見てください。」

「………や。」

「………愛してるなら、見て?」

「っ………ひきょう…」

ムゥっと唇を尖らせて。それでも愛してるならと言われたら、向かない訳にはいかないじゃないか。
チロリとキュヒョンを見れば、其処には困った顔で微笑む彼がいて。
仕方なく顔を向けたイェソンへと今度は柔らかい笑みを浮かべる。

「貴方の折角の思いを台無しにして、すみません……でもね?僕は…」

こうして、行動で愛してるって表してくれるだけで…十分です。

好きだって。愛してるって全身で伝えて来るのが判るから。

「だから、書かなくたって…いいんです。」

ね?

恥ずかしがりなイェソン。彼が言葉で伝えて来る事はほんのひと握りに等しい。
それでも一生懸命に伝えてくれる心を知っている。
それに、言葉では無くこうした行動でも伝えてくれるから。
だから要らないのだというキュヒョンに、イェソンは暫く黙った後で。

「……今日は、帰り……遅い?」

上目遣いでの質問。そのままチョコッと首を傾げて見せるその顔からは、先程までの拗ねた表情はもう無い。

「深夜になると思います。」

だから、いい子で寝てて下さいね?

「………ん。」

判ったと一言。そのまま瞳をゆっくりと閉じる姿に笑んで、キュヒョンはその柔らかい唇へと暫しの別れを告げた。






予定よりも帰宅の遅くなった深夜。
腕の時計を見れば既に深夜も2時を回っていた。イェソンと最後に電話で話したのは確か一時間半前の事。その時におやすみと言ったから、恐らくは今頃深い眠りに落ちているだろう。

取り敢えず何か飲み物でも。そう思い静かに向かったキッチン。四人掛けのテーブルの上。其処にある見慣れないモノへとキュヒョンはピタリ目を止めて。

「………ヒョン?」

其処には自分への軽いメッセージと、水筒が一つ。
《お酒ばっかりはダメ》
そんな簡素なメッセージを流し読んで苦笑する。水筒の中身は何かと飲んでみれば、それは野菜ジュースで。買えばいいのに、近頃酒の摂取量の増えた自分を心配してわざわざ作ってくれたのだろう。その心に疲れた心が癒されていく。

それと同時にもう一つ、見慣れないモノがテーブルの上へと置いてあり。

(………手紙…?)

それは真っ白な封筒に入れられた、見間違う筈の無いイェソンからの手紙。宛名すら書いていなくても判る、自分へと宛ててくれただろうモノ。
今度はご飯を食べろとでも書いてあるのだろうか?そんな軽い気持ちで中身を開いて、キュヒョンは僅かに目を見開いた。


《親愛なる、キュヒョナへ》


何をどう取っても、出だしからして確実に何かをお願いする様な手紙でも。ましてやご飯を食べろだなんて手紙でも無くて。


《こうやって改めて手紙を書くって、何を書いていいのか判らない。

でも、伝えないといけないって思ったから、書く。

キュヒョナの言ってた恋文っての…書いてみる。》


一言一言が彼を彷彿とさせる簡素なモノ。
だけど一つ一つの言葉を大切に書いただろう、その手紙。


《俺は何時だってお前に甘えてばっかりで、伝えないといけない事を

伝えられないまま。それでもお前は許してくれる。

俺の言いたい事を全部判ってて、聞かないでいてくれる。

だから甘えて何も言わないままで。

でも、こんなのは……ダメだから。》


きっと時間を掛けて、何を書いたら想いが伝わるのか。
そう考えて書いただろう文字。
その文字の羅列に、胸が熱くなる。


《いつも傍に居てくれて、ありがとう。

何も聞かずに俺を判ってくれて、ありがとう。

欲しい言葉を欲しい時にくれて、ありがとう。

安心させてくれて、ありがとう。》


今まで伝えたくても伝えられなかった言葉。
その全てを伝えようと、何度も綴られるありがとうの文字。

そして………



《俺を愛してくれて………ありがとう。》



「………何て、バカなんですか…貴方は………」

ありがとうはこっちの方だ……
心を向けてくれて、同じ様に愛してくれようとして。
傍に居てくれて、その温もりを感じさせてくれる。
これが奇跡のような事だと、何度思った事か……


《お前みたいに、いっぱい言葉は伝えられない。

だけど、俺を判ってくれてるから……

これからも甘えていくと思う。

だから、ここで。》



《ずっと、愛してるから。ずっと、一緒にいたいから。》



―――――だから、ずっと傍にいるって……約束―――――



本当にバカだと思う。
離れられないのは自分の方なのに。
それでも彼は思ってるのだ。離れないで欲しいと。
そう、思ってくれている。

判っていたけれど。
こうやって文字で。言葉じゃなくて、形に残るモノとして。
それを伝えてくれる心が、愛おしくて仕方がない。


《これ読んで、泣くなよ?》


照れ隠しなのだろう。普段は見せない彼の兄貴風も手紙の中へと閉じ込めて。



《………愛してる。ずっと、永遠に………》



「………これで、泣くなって……?」


普段は強く見せている心。甘えたで、自信の無い兄を精一杯の愛で包もうと頑張っている心。それが、こんな形で揺れ動かされるだなんて。

「……恋文なんて…教えるんじゃ無かった……」

揺れる肩を止めようとしても、止まらない。
貰った言葉が胸に広がり過ぎて、心が制御出来ない。
頬を伝う温かい感触なんて、味わいたく無かったのに。
弱い心が出て来てしまう自分なんて……嫌いな筈なのに。


「………愛してますよ……永遠に……」


落とした言葉は今までのどんな想いよりも深く。
そして流した涙は今までのどんなモノよりも、幸福なモノ。


その温かくも深い想いを胸に、キュヒョンは暫くの間。
その場から動く事は無かった。






※さてさて。今回は二人の直の触れ合いは少なめですが、心の触れ合いが全面に押し出された形になっております。
甘えたで気持ちを伝える事が不器用な兄さん。そんな彼の心を込めた恋文は、ギュにとってきっとどんなモノにも変え難い宝物になったでしょうね。
優男を泣かせるのは何時だって兄さんただ一人なのですっ(ホントか?

こーんなラブい二人もたまにはイイよねVv







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