皆さん、こんにちは。6月までの減少がうそのように7月に入ってコロナが感染爆発状態です。しかし、行動制限の声は聞こえず、予防をしながら活動を継続していくことになりそうです。幸い重症化しにくいようですが、油断せずにこまめに消毒手洗いに励みましょう。

 

さて、今回の院長ブログは、治療終了のご報告です。他院で凸凹を非抜歯で拡大して治療をしたものの、咬めない、口が閉じられない状態となり、当院へ紹介されてきた患者さんです。

これは、まだブラケットがついた状態の写真です。上顎のみ装置が付いていました。パンパンに広げている状態でした。

とりあえず、装置を撤去して初診時の資料を採得しました。

 

笑うと歯があふれ出ています。唇も閉じにくい状態です。

 

パノラマ写真です。上顎前歯部に根尖部の吸収像も認められました。

横顔のレントゲン写真からは、骨格には問題がなく、上下の前歯が前方へ傾斜していることがわかりました。

 

治療方針は、上顎両側の第一小臼歯を、下顎は両側の第二小臼歯の計4本抜歯を行い、上顎にJフックヘッドギアを使用してもいながら治療することとしました。

 

上顎治療開始時です。抜歯後ブラケットをつけて、Jフックヘッドギアを使用したところです。夜間8時間以上使用をお願いしました。

 

続いて下顎にもブラケットが装着されました。

 

治療開始から1年経過時です。

抜歯スペースはほぼ閉鎖したのですが、上顎の前突が残っているので、大臼歯部を後方へ移動しているところです。

 

治療開始から2年経過時点です。

大分上顎の前突が改善してきたところです。咬合の緊密化を図っています。このあと6ヶ月で治療を終了しました。

 

動的治療期間2年6ヶ月で終了となりました。治療前後の写真を並べます。

 

正面では、ずれていた上下の真ん中もぴったり合わせました。横の歯も歯車がかみ合うような正しい咬合状態が獲得できました。咬めない状態からはおさらばです。

 

かみ合わせの面の写真です。上顎は無理に拡大したため、いびつな形になっています。4本抜歯するという大きな犠牲を払いましたが、残りの歯を救うためにはやむをえませんでした。しかし、非常に綺麗なアーチで歯磨きもし易く、虫歯や歯周病知らずの人生でしょう。

 

これは治療後のみの写真です。内外側的にも適切な位置で接触関係も獲得できています。

 

お顔の変化です。

閉じにくかった唇も楽に閉じれるようになりました。笑顔での歯の傾斜度も格段に改善しました。

 

斜めと横顔です。とてもバランスが良くなりました。

 

パノラマ写真です。心配していた歯根のさらなる吸収は認められず、ホッとしています。親知らずは高校生の終り頃に抜歯となります。

 

横顔のレントゲン写真です。上顎前歯の位置の変化がよくわかります。

軟組織のシルエットもとても美しくなりました。

 

治療終了おめでとうございます。うまくリカバリーできてほっとしています。指示をきちんと守って、Jフックやゴムかけを頑張ってくれました。ありがとうございました。

何とか歯を抜かずに治療がうまくいかないかと、矯正歯科医はみんな考えます。しかし、どうしても抜歯をしなければ、正しい咬合が得られない、前歯を適切な位置に配置することができないと判断すれば、抜歯を提案します。誰しも健康な歯は抜きたくありません。例え話で言うと、癌の治療がお薬だけでは治せなければ、手術もしなければなりません。嫌なことでもやるしかない時は決断しなければいけません。ただ人間が判断することには、個人差があります。手術しなくても治る、抜歯しなくても直せるというドクターもいれば、手術しなければ無理、抜歯しなければなおらないというドクターもいます。ここは患者さんがどちらを信じるかという選択を迫られます。

英語でも、No pain, No gain. というように、何かを得るには、何かを我慢する、失わなければならいものがある、今ないものを得るためには、何かを失わなければならない、というのが宇宙の大法則みたいなものです。ただ、軽度の不正咬合に対しては抜くことはないので、そこは適切な診断となり、ドクターの知識量や経験値の大きさが物を言います。今後も慎重に診断を進めたいと思います。長期間にわたる動的治療、本当にお疲れ様でした。まだまだ不安定ですので、リテーナーでがんばりましょう。

 

この症例でわかるように、歯並びを綺麗にしたからと言って、咬めるようになるわけではありません。おそらく凸凹だった時の方が奥歯は良く咬めていたと思います。矯正治療により咬合を悪化させてしまう場合もあり得るわけです。

矯正治療は美容ではなく、歯科医療でなければいけません。正しくご飯が食べれる、ステーキ肉でも何でも奥歯で咬み切れるような、全体としてしっかりとした咬合が得られなければなりません。もう一つ、口が楽な状態で閉じなければいけません。無意識の時や寝ている時に口が空いてしまうようでは、いつも口腔内や咽頭部が乾燥して、異物や細菌やウイルスの侵入を簡単に許して、アレルギーや風邪、ひいては肺炎などのリスクが高まります。前歯が前方傾斜した状態のフィニッシュもだめだということです。

安易な矯正治療が最近流行しています。簡単な症例はそれで治るでしょうが、簡単な症例は少ないのが現実です。矯正治療の目的は、美容ではなく医療だという原則を、ドクターはもちろん患者さんにも忘れないようにしてもらいたいと思います。

 

それでは、今回の院長ブログはこれまでです。皆さん、夏を楽しみながら、感染にも気をつけながら、日々すごしていきましょう。海とか行きたいですね~。

 

●今回の写真の掲載は、患者さんに了解を得ております。

●今回の総費用:65万円(治療期間2年6カ月)

●治療における一般的なリスクについて

 治療中または治療後には、虫歯の発生・歯根吸収・歯牙疼痛・口内炎・歯肉形態不正・顎関節症・ほうれい線・歯の削合・後戻りなど思いもよらない不都合な合併症のリスクがあります。治療開始時に主な事項についての注意や対応についてお話しし、もし不都合が発生した場合は全力を尽くして対応してまいります。

●治療結果には個人差があります。同様の結果が保証されているわけではありません。ご了解ください。