ある雪の降る日だった。
この地方では雪が降ることが珍しい。
ほとんどの人がタイヤのチェーンを持っていなく、スタッドレスタイヤなどは無縁の存在だ。
その日は日曜日で、昼頃から雪が降っていた。
週末、来未は50分ほど離れた実家に帰っており、雪が積もる前に自宅に帰ってくるつもりだった。
彼女の車は4WD。
多少の雪など大丈夫と、少し雪道を甘く見ていたのかもしれない。
日が落ちる頃、彼女は帰った。
昼間影になっているところは路面が凍結している。
滑り出せば4WDなど関係ない。
ラシーンは氷の上を滑り一回転。
左リアタイヤを路肩にヒット。
タイヤがバーストしたのである。
タイヤがパンクしたことなど知らない来未は、ハンドルをとられて運転しにくかった。
彼女はすぐに颯太に電話した。
車に詳しい颯太なら、何かアドバイスをくれるかもしれない。
その前に夜の雪道でスピンして心細い。
電話がつながらない・・・
何度電話しても出てくれない・・・
仕方なく、拓海に電話してみる。
同じように車に詳しく、頼りになる先輩だ。
拓海はすぐに電話に出た。
拓海 「なんかあった?」
来未 「雪道でスピンして、ドンって当たって、運転しにくい・・・」
拓海 「タイヤがパンクしてるんじゃない?」
来未 「分からないけど、まっすぐ進まない・・・」
来未は次第に泣きながら話をしていた。
拓海 「今どこ?車を止めて、待ってて!迎えに行くから。」
来未 「いいよ。大丈夫だから。」
拓海 「よくないって!そのままだったらホイールがダメになって事故るぞ。」
来未 「大丈夫だって!」
拓海 「オイルでも漏れて引火したら どうすんだよ!!」
来未 「いいってば!!!」
拓海 「じゃあ勝手にしろ!!」
来未はつよがっていた。
なんとか帰ってこれると思っていた。
拓海に電話したのは、そばにいて欲しかったのではなくて、
ただ声を聞いて淋しさを紛らわしたかっただけだった。。。