来未はその雪の降った夜、颯太と一緒にいた。
拓海がタイヤ交換をしてくれて帰った後、颯太と共に夜を過ごした。
車がスピンし、恐い思いをした直後だったので、その日は颯太に抱きしめて欲しかった。
一番好きな人に隣にいて欲しかったのだ。
彼の胸の中でひとしきり泣いた後、ゆっくりと眠りについた・・・
颯太は、来未が拓海を頼ったことが気に入らなかった。
帰る時間が少し遅くなったが、帰ってからタイヤ交換をするくらい造作もないことだった。
愛情?嫉妬?
颯太には自分の感情がよく分からなかった。
ただ、自分の胸で泣く一人の女性を愛おしく想う一方で、
自分の知らない間に起こっていた来未と拓海のやり取りが気になっていた。
来未から拓海の温もりを消すため、颯太は彼女を抱いていた・・・
拓海は家に帰り眠りにつこうとした。
思い出されるのは来未の泣き顔と、つよがっている横顔と、恋をしている彼女の瞳だった。
来未が颯太を好きなのは分かっていた。
この日、それを改めて思い知らされた。
拓海には来未を想う感情はない。
そう思っていたが、頼りなさそうな両肩を震わせながら泣く姿を見ていたら、
思わず抱きしめたくなる感情があった・・・
この件を境として、3人の関係に変化が見られるようになった。
この頃、颯太の仕事が少し忙しくなりつつあった。
今まで3人で出かけていたことも、次第に拓海と来未の2人だけになることが多くなった。
仕事中は同じ係である拓海と来未。
プライベートでも話す機会が多くなり、拓海は来未の家で2人きりで過ごすこともあった。
来未にとって拓海の存在が少しずつ大きくなってきた。
でも、好きなのは颯太であり、拓海にもそのことを伝えていた。
あくまでも拓海は来未にとって “先輩” であり “友達” であった。。。