来未の風邪も治ったある冬の日、拓海と来未は2人で残業をしていた。
2人の係もさらに忙しくなり、一緒に残ることが多くなっていた。
まだ仕事に慣れない来未は拓海に教えてもらいながら何とか仕事をこなしていた。
来未は係長が大嫌いだった。
理由などなく、生理的に受け付けなかった。
仕事も忙しくなり、目も合わせたくない係長には小言を言われ、仕事を辞めようかと何度も思った。
そんなときは拓海にグチを聞いてもらい、心を静め、明日から頑張る力をもらっていた。
同じ係の先輩なので、係長のグチを思いっきり聞いてもらい、心の支えになってもらった。
そして先日風邪をひいてお世話にもなったので、何かしてあげたい気持ちが来未にあった。
来未 「今日、ウチに来ない?イチゴあるよ~。」
拓海 「えっ?本当! 行く!!」
来未は拓海がイチゴを好きなのを知っていたので、ご馳走するつもりだった。
残業を切り上げた2人は夕食を済ませ、来未の家に向かった。
来未が台所に立っている。
イチゴを洗い、練乳をかける。
一口、二口・・・
来未 「おいし~!」
拓海 「うん、ウマイ!」
来未はこのおいしいイチゴを颯太にも食べさせたかった。
来未 「おいしいね。ヤツも呼ぶ?」
拓海 「いいよ。」
拓海は少し複雑だった。
“ヤツ” とは颯太のことであり、
2人が “セフレ” の関係であることを拓海は来未から既に聞かされていた。
来未は嬉しそうに電話した。
来未 「もっしも~し。」
颯太 「どうした?」
来未 「今からウチに来ない?」
颯太 「え?なんかあるの?」
来未 「イチゴがあるよ~。」
颯太 「え~、うそ! 行く!すぐ行く!」
階段が違うだけで、同じアパートに住む颯太はすぐにやってきた。
久しぶりの3人だった。
おそらく一番驚いたのは颯太だろう。
イチゴがあるとは聞いていたが、拓海がいるとは聞いてない。
颯太のテンションが一気にダウンした。
拓海のテンションも上がらない。
来未 「ビックリした?どうしたの?元気ないじゃん。」
颯太 「ちょっと体調悪くて・・・」
来未 「そうなの?イチゴ食べれば治るかもよ。」
颯太 「いや、いらない・・・ 僕の分も食べていいよ。」
颯太を心配そうに見つめる来未。
暫くして颯太は帰っていった。
なんだか気まずくなり、拓海もイチゴを食べ終わると来未の家を後にした。
来未は颯太のことが心配になり、彼の家を訪ねた。
颯太が機嫌を悪くしたのは明らかだったので、嫌われたのではないかと思ったのだ。
そして来未は朝まで颯太の家から出ることはなかった。。。