ある日の休日、拓海と来未は久しぶりに2人で買い物をしに出ていた。
とは言っても、早々に買い物を終わらせて来未は実家に帰る予定だった。
買い物から帰ってくる途中、拓海の携帯電話が鳴った。
友達から今日の夜、彼女を連れて一緒に飲まないかという誘いだった。
拓海たちはお互いの彼女も知っており、よく彼女連れで飲みに行っていた。
実家に帰りたがっていた来未をなんとか説得し、一緒に友達のところへ向かう途中だった。
事前に、今日は帰ってこないと実家に連絡した。
その日は拓海とホテルにでも泊まる予定だったが、両親はそれを許さないだろう。
女友達の家に泊まりに行く用事ができたと実家には電話した。
車2台で目的地へ向かい、次の日の朝、直接実家に帰るつもりだった。
拓海が前、その後を来未の車がついてきた。
いつも滅多に赤にならない信号での停車中。
来未の後ろから来た車が、来未のラシーンに追突した。
追突する直前、バックミラーを見た。
間違いなく追突するスピードで突っ込んできた。
身構えた来未。
ラシーンのリアウインドウは粉々に砕け散り、衝撃でハッチバック部分が潰れた。
その日は少し雨が降っていた。
信号待ちの停車中、何気なくドアミラーを見た拓海は、来未がドアを開けて後ろを振り返ったのを見た。
その様子に何となく違和感を感じた拓海。
すぐに外に出て、来未に歩み寄った。
明らかに後方からの追突事故だった。
拓海は事故車両の2台に脇道に入るように指示し、先頭の自分が先に入って誘導した。
すぐに警察を呼んだ拓海たち。
ひどく動揺しており、雨に濡れていた来未を拓海のスカイラインの助手席に乗せ暖房をかけた。
明らかに前方不注意の追突事故。
10対0で追突した方が悪い。
来未の過失は全くないので、相手方の保険から全額修理代や治療費が出ることになる。
また、来未の保険会社からは相手に1円たりとも出さないので、特段連絡をしなくてもいい。
だが、来未の叔父が保険会社に勤めており、そこの自動車保険に加入していた来未。
事故が起きたことに動揺していて、叔父さんに電話をしていた。
叔父 「どうした来未。」
来未 「どうしよう。 事故っちゃった・・・」
叔父 「えっ?大丈夫か?怪我はないか?」
来未 「・・・わかんない・・・ 後ろから突っ込まれたの!」
叔父 「怪我はないんだな? 1人か?」
来未 「彼氏が一緒・・・」
叔父 「ちょっと彼氏に替わって。」
加害者と話をしていた拓海の元へ来未がやって来た。
来未 「電話・・・」
拓海 「誰から?」
来未 「叔父さん。」
拓海 「例の保険会社の? 恐い叔父さん?」
来未 「うん。 替わってって。」
拓海は来未から恐い叔父さんのことを聞かされていた。
態度も恐いが顔も恐い。
悪徳保険会社の社長みたいな人だと想像していた。
拓海は一呼吸おいて電話に出た。
拓海 「初めまして、拓海といいます。」
叔父 「来未の叔父です。 状況が分からないからちょっと説明して。」
拓海はどこまで来未が話しているか分からなかったため、最初から掻い摘んで説明した。
拓海 「信号待ちでの追突事故です。 警察も呼びました。 相手の連絡先も・・・」
雨音が少しずつ大きくなってきており、相手の声が聞こえづらく、自分の声も次第に大きくなっていた。。。