巷で平成の大合併と言われる、市町村合併が次々と行われていた頃。


拓海たちが住む市町村でも合併が控えていた。


拓海はその煽りをまともに受け、仕事量が膨大な量になっていた。


毎日遅くまで残業しても減ることのない仕事。


日付が変わっても帰ることが出来ない拓海。


少しでも仕事をこなさないと、次の日に地獄を見ることになるから必死だった。


もちろん来未と会う時間も必然的に少なくなり、どこかに出かけることもほとんどなくなった。


たまに2人でいることがあっても、疲れた拓海に不満を漏らす来未。


週末は、来未は実家に帰るため拓海の気が休まる時間が訪れる。


二人のマンネリ化はますます進み、悪い意味で空気のような存在になっていた。





来未としては、拓海の仕事が忙しいのはよく分かっていたが、何にしても暇だった。


最近は拓海も来未の家に来ない。


半同棲生活も終わり、電話もほとんど来ない。


もちろん電話することもあまりなかった。


そんな生活に嫌気がさした来未は、拓海と別れる決意をしていた。



来未 「ちょっと話があるんだけど。」


拓海 「なに?」


来未 「最近うまくいかないよね。 もう一回最初からやり直さない?」


拓海 「えっ? 別れるってこと?」

拓海にとって、この話は急すぎた。


仕事のことで頭が一杯なのに、プライベートのことを考える余裕はなかった。



来未 「うん。 一度、昔みたいに友達に戻って…。」


拓海 「好きな人が出来たとか。」


来未 「そんなんじゃない。 嫌いになったわけでもないよ。」


拓海 「オレは…。 別れるのは嫌だ。 もう少し頑張ってみようよ。」



何も具体的な解決策が得られないまま、2人はもう少し付き合うことにした。


あるいは、この時点で別れていた方がお互いのためだったかも知れない。


そんなことは、このときの2人は全く予想していなかった。。。