別れのメールを受信した次の日。
拓海たちの町では夏祭りが開催され、拓海たちの会社も祭りの踊りに参加することになっていた。
本当なら、来未も颯太も出る祭りなんかに行きたくない拓海。
でも、拓海が会社の踊り連を束ねて、夜の打ち上げまで仕切っていたので休むわけにはいかなかった。
昨日のメールに、“たぶん、明日は目が腫れていると思うけど、気にしないでね。” と来未からあった。
来未は大泣きした次の日、必ず目が腫れて一重になることを拓海は知っている。
誰が見ても、「昨日なんかあったな。」 という顔で、その祭りの日も現れた。
何があったのか知っているのは、拓海と颯太だけ。
拓海は、来未の顔はもちろん、颯太の顔もまともに見ることが出来なかった。
そして祭りも終わり、拓海は打ち上げの準備をしていた。
祭りの時もそうだったが、今の拓海には覇気が感じられなかった。
昨日の今日では当然かもしれないが、何もする気が起きないでいた。
頭で考える余裕すらなかったかもしれない。
今まで、拓海の頭の大部分を占めていた来未という存在がいなくなり、ポッカリと大きな穴が開いたようだった。
予想どおりと言うのか、その日の打ち上げに来未と颯太の姿はなかった。
打ち上げという仕事を淡々とこなす拓海の背中は寂しく見えた。
いつも拓海の隣に来未がいた。
いることが当然すぎて、分かっていない部分が多すぎた。
山も谷も2人で乗り越えてきた。
プロポーズもした。
婚約指輪も買った。
最後の難関、家同士の問題を乗り越え、誤解を解くために必死だった。
4年と半年を掛けて暖めてきた愛情が一気に冷めるはずもなく、拓海は戸惑っていた。
できれば、来未とやり直したい。
何度もそう思った。
でも、来未とは結婚が出来る気はしなかった。
本当に愛していたのかは分からない。
長い付き合いで情が移ってしまったのかもしれない。
何にせよ、来未は拓海に一番影響を与えた女性。
彼女と一緒に過ごしたことが、拓海の大きな成長に繋がっていることは間違いない。
そして、その女性との交際が終わったことだけが拓海にとっての現実だった。。。