バスの中でも、何となく気まずい2人。


告白したものの、返事をもらう前にバスは出発しようとする。


バスの集合場所は、イルミネーションが綺麗なことで有名なデートスポットでもあった。


その場に居づらいかのように、バスはゆっくりと動き出した。



優菜 「私は…、拓海くんと別れてから色々な経験をして…。 昔とは全然違うと思うよ。」


拓海 「……。」


優菜 「拓海くんも変わったかもしれないけど…。 やっぱり一緒にいると楽しいな。」


拓海 「…うん。 オレも一緒だよ。」


優菜 「これからも…、よろしくお願いします。」


拓海 「こちらこそ、よろしくね。」



不意に笑い出す2人。


それから、昔のことや最近のことをたくさん話して、やがて眠りにつく優菜。


その唇にそっと口づけをし、優菜の幸せを約束する拓海だった。





ゲレンデでは大抵の女の子が可愛く見える。


パステルカラーのウェアに身を包み、白い雪の上を気持ちよさそうに滑る。


ウェアが大きめで体型を隠せるし、頭から足元まで完全装備なので見えている部分がほとんどない。


頭は帽子、目元はゴーグル、口元はフェイスマスクで隠れてしまい誰だか判別もつかない。


男だけでスノボに行くこともあり、女性だけの集団に出くわすこともある。


それぞれ新しい出会いを求めてゲレンデにやってくることも少なくない。


しかしこの日は、拓海にとって周りの女性など目に入っていなかった。


もし告白を断られていれば、どんな顔で一緒に滑ればよかったのだろう。


そう考えるとスノボに行く前に告白するのは良策ではなかったが、拓海はどうしてもこの日に告白したかった。





久しぶりにブーツを履き、ボードの上に足を乗せる優菜。


ここ数年スノボをしていなかったため、拓海に手伝ってもらいながら一緒に準備をした。


優菜も経験しているだけあって、徐々に感覚を取り戻していた。


急な斜面では、少し先で優菜を待っていて一緒に滑ってくれる拓海。


体力のない優菜は一人で休憩し、その間に拓海は思う存分滑っていた。


拓海にとっても優菜にとっても楽しい1日だった。




1月下旬に行った来未とのお別れのスノボ。


2月上旬に行った優菜との始まりのスノボ。


1人で滑っているときは、どちらもそれなりに楽しい。


一緒に滑っているときやリフトに乗っているときは、会話の弾み方やお互いの接し方がまるで違う。


もう完全に来未のことは、拓海の頭の中になかった。


そして、いつまでも優菜との楽しい日々が続くものと思っていた。。。