優菜の両親へ結婚の挨拶を終えた拓海は、すべての肩の荷が下りたような気持ちだった。


そして2人は、挨拶をした翌々日から京都旅行に出発した。


この京都旅行は、優菜の希望を叶えたものだった。


飛行機に乗るのが苦手な拓海がこの旅行を承諾したのも、2人の関係を少しでも回復させるためだった。


旅行の計画をしたのは拓海の二股が発覚する前だった。


3月末に二股が発覚して旅行に行くかどうか迷ったが、やっぱりそれでも京都に行きたいと優菜が言った。


ぎこちない旅行になるかもしれないが、優菜が行きたいのならと拓海も了承した。


改めて付き合いだしてまだ数ヶ月。


2人の思い出の写真もほとんどなかった。


いつの日か結婚することを考えて、披露宴でのプロフィールビデオ等に必要な写真撮影も兼ねていた。





実際に京都に行ったのは5月のゴールデンウィーク。


三十三間堂や金閣寺、清水寺、映画村にも行った。


GWということもあり、観光地は人で溢れかえっていた。


人混みが苦手な拓海にはそれだけで苦痛だった。


2泊3日の京都旅行は、綿密な計画のもと順調に進んでいた。


夜は同じ部屋に泊まる2人。


優菜の心には、まだ幾分かの壁があった。


1ヶ月と少し、当然ながら夜の営みをすることはなかった。


それどころか、いつもは拓海にくっついて寝る優菜だったが、今では触れてもこない。


いくら性欲の強い男でも、手を出すことはできないだろう。


優菜の心の壁が解放されるひとつの目安が、その行為だった。


そしてこの日、分厚い壁を打ち壊すかのように優菜は拓海の腕をとり眠りについた。


2人は改めてお互いの体を確認するかのように、ゆっくりと愛し合った。





婚前旅行ともとれる京都旅行から帰ってきた2人には、もう迷いはなかった。


2人でいくつか結婚式場を見て回った。


拓海の中では、挙式の日だけは既に決めていた。


式場もその日が空いている日を選んだ。


そうして2人で話し合い、満足のいく日程と式場を仮予約した。


その日は仏滅。


でも、どうしてもその日に式を挙げたかった。


最初、優菜が拓海に告白した日。


そして再会後、拓海が優菜に告白した日。


今度は、拓海と優菜が大勢の人に結婚を認めてもらう日。


2人がこだわった、そんな大切な記念日が2月10日だった。。。