拓海たちは通常業務ができないまま、災害からの復興に明け暮れていた。


被災家屋などの災害調査。


屋内や床下に入り込んだ土砂の除去。


倒壊寸前の家屋の解体。


被災ゴミの回収。


異臭漂う家屋の消毒。


ボランティア活動に来て頂いた方の統括や飲料水の提供。


国土交通大臣や各党党首の案内・先導や会議資料の作成。


災害見舞金等の配付。


実に様々な作業を行った。


どれだけやっても終わりはなかった。


数ヶ月は被災後の処理に追われ、休日なんてほとんどなかった。


最初の頃は家に帰れる日もなく、職場に泊まり込んでいた。





そんな拓海だったが、災害からまだ1週間しか経っていない週末は特別に休暇をもらっていた。


その日は、拓海の家族と優菜の家族との食事会が予定されていた。


2人には結納をするつもりがなかったため、実質的にこの日に婚約したことになった。


拓海の両親、兄夫婦に子供2人。


優菜の両親、弟夫婦に双子の妹。


総勢14名での食事会だった。


拓海は1週間ほとんど寝ていないで、頬も少し痩けており家にすら帰っていない状態だった。


しかし、直前に用意した婚約の挨拶をなんとか述べることができ、食事会も順調に進んだ。


その食事会では2人の結婚の話題で盛りあがったが、それ以上に拓海の町の水害の話に興味が集まった。





食事会も無事に終わり、拓海と優菜は久しぶりに繁華街を2人で歩いた。


数週間前に予約した結婚指輪を受け取るためだった。


ピカピカに輝きを放つ2つの指輪。


その内側には、2人の名前と2月10日の刻印がされている。


2人はそろって指輪に指を通した。


少し早い気もしたが、夫婦になる気持ちを再確認した日だった。。。