昔、拓海と颯太の間で揺れていた来未。
その後、来未と優菜に二股をかけていた拓海。
拓海は来未が揺れていたことを知っていたが、来未は拓海の二股を知らなかった。
今では、拓海も来未もお互い向き合っており、そんな昔の話題も普通に出るようになっていた。
拓海 「ぶっちゃげ、オレと颯太、どっちが好きだったの?」
来未 「え~、言わないとダメ?」
拓海 「別にいいじゃん。 昔のことだし…。」
来未 「う~ん、最初はヤツかな? でも、いつの間にか同じくらいになってた。」
来未は、必ず颯太のことをヤツと呼ぶ。
照れくさいのか、拓海がいるから昔の関係を意識するのかは分からない。
拓海 「いつから、オレのこと好きになったの?」
来未 「最初に意識し始めたのは、雪の日にタイヤ交換してくれたときかな。」
拓海 「あの時、強情だったね。 迎えに行くって言ってるのに逆切れして、パンクしたまま帰ってきて。」
来未 「・・・それから、風邪ひいて看病に来てくれたときに・・・たぶん好きになった。」
拓海 「そうだったんだ。」
来未 「そっちは? あたしと付き合う前に好きな人とかいなかったの?」
一瞬だけビックリする拓海。
気を取り直して来未の質問に答えた。
拓海 「好きな人っていうか・・・ 付き合う前に合コンがあって、そこでちょっと気になる人はいたよ。」
来未 「ふ~ん。 デートとかしなかったの?」
拓海 「まぁ、付き合う前に何回かはしたよ。 正直、迷ってたときもあったかな。」
来未 「で、あたしを選んでくれたんだ。」
拓海 「そういうこと。」
来未 「なんて名前の人だったの?」
拓海 「いいじゃん別に。 昔のことなんだし。」
来未 「昔のことでしょ、教えてくれてもいいじゃん。 寝言で言うかもしれないから聞いておかないと。」
拓海 「優菜ちゃん・・・。」
来未 「ふ~ん。 じゃあ、あたしと優菜ちゃんの間で揺れてたんだね。」
拓海 「まぁ、それ以降、連絡もとってないけど。」
こうして、来未は優菜の存在を知ることとなった。
でもそれは、来未と付き合う前のことだけで、それ以降の二股のことまでは知らない。
拓海は、もう優菜と会うつもりもなかったし、今さら優菜の存在を知られても特に問題はなかった。
ただ、さすがに二股をかけていたことは言えない。
拓海と颯太で揺れていた来未の天秤。
来未と優菜で揺れていた拓海の天秤。
今は、どちらの天秤も気持ちが固まっているため動かない。
その天秤のどちらかが揺れ動くことなど、このときは考えてもいない2人だった。