拓海と颯太は仕事の帰りに、よく2人で飲みに行くことがある。
そういう時は、いつも決まって同じ飲み屋の同じ部屋。
拓海と来未と颯太の関係を知っている人が見たら、不思議な関係だった。
最初、仲が良くてセフレだった颯太と来未。
その中に入っていって、来未と付き合った拓海。
その後、拓海たちが別れるきっかけになったのは颯太。
そして、颯太と来未は再びセフレへ。
こんな関係で、よく颯太と付き合えるねと言われることもある拓海。
実際、なんでこんなに親しく付き合えるのか自分でもよく分からなかった。
2人で飲むときは、よく来未の話になったりする。
あまり大きな声で言えない、昔の3人の関係も言い合える。
颯太 「この前、どこに行ったんですか? せっかく一緒にご飯食べてあげようと思ったのに。」
拓海 「あ? あのメールが来た日? スノボに行ってるってメールしたじゃん。」
颯太 「誰とですか?」
拓海 「スノボ仲間。」
颯太 「ふ~ん。 僕の知ってる人ですか?」
拓海 「知らないでしょ。 お前スノボしないんだし。」
来未と一緒にスノボに行った日のことをしつこく聞いてくる颯太。
もしかしたら、勘づいているのかもしれない。
でも、拓海は最後まで嘘を突き通した。
拓海 「それより、どうなってるの?」
颯太 「何がですか?」
拓海 「来未との関係。 人から彼女取っておいて、何もしないなんて。」
颯太 「失礼な。 何もしていない訳じゃないですよ。」
拓海 「だよな。 一応、手を出してるし。」
颯太 「こらこら。」
拓海 「ぶっちゃげ、付き合う気はあるの?」
颯太 「…う~ん。 今はまだ、分からないですね。」
拓海 「付き合う気のカケラも見えないんだけど。」
颯太 「そんな風に見えます?」
拓海 「お前が付き合う気にさえなれば、来未はいつでも受け入れると思うんだけど。」
颯太 「そうですかね~。」
拓海 「お前もよく分かってるだろ。」
颯太 「でも、来未ってすごくつよがりですよね。 もっと甘えてくれる人がいいんだけど。」
拓海 「それを知ってて、手を出したんだろ!」
いつものことながら、だんだんイラだってくる拓海。
颯太と来未のことを話すと、いつもこんな感じになる。
自分の本心をさらけ出さず、すんなり来未と付き合う気がない颯太だった。
飲み会も終わり、2人はそれぞれ家に帰った。
家に帰ってすぐ、来未に電話をする颯太。
颯太 「もしもし。 寒い! 迎えに来て!」
来未 「え~。 今、どこなの?」
颯太 「僕のこと理解しているなら、テレパシーで分かるよね。 今からテレパシー送ってみるから。」
来未 「え~! テレパシー弱くて分かんないよぉ~!」
などと言っているうちに、来未には大体想像がついた。
結構、酔っぱらっている颯太。
颯太がよく行く飲み屋を言ってみたら、予想どおり当たったらしい。
来未 「でも、もう飲み会も終わって、今は家でしょ。」
颯太 「え~っ! なんで分かったの!!」
こんなくだらない会話がとても楽しい来未だった。
この日は、飲んでたせいもありエッチな会話もたくさん出てきた。
いつもは結構クールを装っている颯太。
そのギャップがすごかったけど何でも言ってくれて、来未も何でも言えることがすごく楽で心地良かった。
暫くすると、もう1人の酔っぱらいからも電話が来た。
拓海 「もしもし。 元気?」
来未 「元気だよ~。 飲んでたね。 しかもヤツと。」
拓海 「飲んでたけど。 なんで相手が分かるの?」
来未 「こっそり見てたから。」
拓海 「はぁ? それよりも、スノボのことヤツに言った?」
来未 「言ってないよ。 なんで?」
拓海 「誰と行ったか、しつこく聞いてくるんだけど。 絶対、勘づいてるよ。」
来未 「別にいいんじゃない? ヤツと付き合ってる訳でもないしね。」
拓海 「まぁ、そうだけど。 でもさ、ヤツのどこがいいの?」
来未 「どこって…。」
拓海 「オレ、男だから一緒にいるし飲みにも行くけど、女だったら絶対に惹かれないね。」
来未 「………。」
颯太のどこに惹かれるのか、来未も正直分からなかった。
でも、どこか惹かれるところがあるのは確か。
拓海のことが嫌いで別れた訳じゃないから、こんなことを言われるとちょっと気分が複雑だった。
颯太でいっぱいなはずの来未の心のどこかに、まだ拓海がいる。
2人の男性を同時に愛してしまいたい来未だった。。。