『総選挙』って…。


このテレ東さんのツイートに違和感があるのは、ジャパンオープンに出た選手として羽生さんを思い浮かべる人は誰も(羽生ファンでさえも)いなかったのに、テレ東さんがジャパンオープン名場面の選択肢に羽生さんを選び、逆にジャパンオープンといえば誰もが思い浮かべる宇野さんを、選択肢に一つも置いていないからです。


テレ東さんは「ジャパンオープンは毎年シーズン開幕を告げる試合」と銘打ってませんでしたか?

開幕前に、現役である宇野さんを無視し、宇野ファンの心を折り、ないがしろにする企画をわざわざ打ち出すのも、意味がわかりません。


ジャパンオープンは興行の色が濃い団体戦で、ショートがなくフリーだけで戦う試合です。(ですが、出場選手にとってはもちろん、真剣勝負のガチ試合、"シーズン初戦"です。)


世界ランキングのポイントを得たかったり、ショート、フリーともグランプリシリーズ前に演技を試したかったりする選手は、実戦に即するのでチャレンジャーシリーズに出場する方が良いのです。

羽生さんは現役時代、チャレンジャーシリーズを選んで出場することが多かったためか、ジャパンオープンで戦うことはありませんでした。


宇野さんは、コロナ禍で拠点のスイスにいて、隔離期間があるため来日が難しく海外選手の招聘がなかった2020年を除いて、シニアに上がった2015年から毎年、ジャパンオープンに出場してきました。

2015年から2019年まではジャパンオープンとチャレンジャーシリーズの両方を掛け持ちしています。

羽生さんが出場しない以上、宇野さんは必ずジャパンオープンに出なければならない立ち位置でした。

日本はホスト国として、ジャパンオープンにトップ選手を出さなければならないからです。

それを一人で、長い間、当然のように担ってきました。

心に残る名場面も一つに選べないほど生んできました。

宇野さんは、今年も出場します。


「選りすぐりの10場面」に宇野さんを入れないことを決め、それを公表して悪びれないテレ東フィギュア班…宇野さんをここまで軽んじて平気なのだということに衝撃を受けるとともに、

一度も出場したことのない羽生さんを、「ジャパンオープンの名場面」として取り上げなければならないメディアの異常な構造に、疑問を持たざるを得ません。


不当な扱いと感じるので、テレ東さんにフォームから意見を送らせていただきます。


誠実に、日本フィギュア界に貢献してきた選手をメディアが無いものとして扱ってはいけないと思う。


そしてこれは、テレ東さんだけではないのです。

このように宇野さんの名前や写真を出さない不自然な報道を、ここ数年メディアはしてきています。


北京オリンピック後、更にそれは顕著になりました。

どう考えても意図的な報道の際は、それぞれのメディアのフォームから実名も電話番号もメアドも明記して、なぜ選手の名前を出すべきところ伏せるのか、私が記事のどこに違和感を感じるのか具体例を上げて質問してきましたが、約束されたものではないですが当然のことながら、一度も回答をいただいたことはありません。


羽生さんの現役引退の会見で、メディアがそれまでの選手にしてきたように「世代交代」と烙印を押すことがなかったのはこれからの選手のためにも良かったと思いましたが、

他スケーター、他選手にも、羽生さんに対するのと同じ敬意を向けてほしいと思います。


メディアが羽生さんを毎日繰り返し報道するのは、一般の人に向けたザイアンス効果(単純接触効果)を狙ってのことなのだろうと思っています。


※ザイアンス効果(単純接触効果)=何度も見たり聞いたりした物や人の好感度がだんだん上がっていく現象。心理学用語。


現役引退したプロである羽生さんは、各社メディアがまるでマネージャーのように手足となって、YouTube投稿のお知らせまでして宣伝役を買うのに、

これから本格シーズンを迎える現役選手は過小評価し、事実と異なる報道をしてまで無視するのはなぜなのでしょう。


Number1046号でも田村明子氏がパトリック・チャンさんの言葉を借りる形で、全日本王者がずっと羽生さんであり続けたと読者をミスリードする記事を書いています。


宇野さんが4年連続全日本王者であったこと、また現世界王者であることを、

一般の人がどれだけ知っているでしょうか。


今シーズン大活躍間違いなしの世界各国トップ選手が集結し、現世界王者宇野さんと現五輪王者ネイさんが貴重なコラボプログラムを滑ったザ・アイスというショーが、7月下旬に愛知、新潟、大阪と3ヶ所を巡ったことを知っている人はどれだけいるでしょうか。


報道されなければフィギュアスケートの裾野は広がりません。

ライトな視聴者の目に触れる機会がなければ、新規にファンを獲得できません。


フィギュア界の現世界王者であり、オリンピック2大会で日本人最多となる3個のメダル獲得者である宇野さん、北京オリンピックでフィギュア日本人最高位の銀メダルを獲り、世界選手権でも銀メダルで宇野さんとワンツーを飾った鍵山さんがいるのにも関わらず、「後進が育っていない」と言い放ったメディアもあります。

これ以上ないほど、育っていますよね?

後進が世界のトップで活躍していることを殊更に隠そうとするのは、なぜなのでしょう。


男子フィギュアが成績を出していたら何か羽生さんに都合の悪いことがあるわけでもないでしょうに。

なぜ事実を報道できないのでしょう。

後進が結果を出している今、アイスショーや試合を地上波で放送しなくて、いつフィギュアスケートを盛り上げるのでしょう。


現役選手の頑張った経過、結果が報道されなければ、フィギュアスケートは競技として衰退してしまいます。

悪循環の始まりです。


また、AKBの総選挙のようなことをしてアスリートをアイドルのように扱い人気投票をさせるのは、何か選手の真摯な演技を消費の道具にしているように思えて、まだフィギュアはメディアにそんな扱いをされてしまうのかと、そういうところでもガッカリします。


どの選手の演技も、唯一無二です。

テレ東さんが選んだ名場面以外にも、心打たれた選手もシーンも、数えきれないくらいあります。

そして感動は、他と比べて優劣をつけられるものではない。

この企画をすることに、何の意義があるのでしょうか。


メディアの方々には、もっとフィギュアスケーターと選手とスポーツ報道としてのフィギュアスケートに、敬意を持ってくださることを切に望みます。


ブログ記事のシェアをありがとうございました。



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