色を失った世界




「亜姫さん・・・夕食は・・・」


「いらないです。」







縁側にぼんやり座っている私がそう答えると草壁さんは困ったような顔をした。









「朝から何も食べてないじゃないですか。恭さんが心配しますよ・・・?」


「食欲ないんです。」













嘘じゃない。食欲がないどころか何かをする気にもなれなかった。

だから朝からココに座っているだけ。








目の前の庭もモノクロに見える。

昔の白黒テレビってこんな感じかなとぼんやり考えた。
















「あの・・・亜姫さん?」







ためらうように声をかけてきた彼の声を聞いてゆっくりと後ろを向く。









「実は・・・私も行ってこようと思って・・・イーピンさん、ランボさん、

 クロームさんを連れて・・・。」







はっきりとどこへ、とは言わなかったがめが泳いでいるのを見たところ・・・















「私も連れていってください。」


「それはダメです・・・。」


「どうして!?」




声を荒げた私を見て躊躇しながらも彼は言った。






「恭さんは・・・亜姫さんを危険なことに巻き込みたくないんですよ。

 あなたの身に何か起こるのが、恭さんはイヤなんです。亜姫さんのことが・・・」


「だから置いてったっていうんですか!?

 一人ぼっちにされるくらいなら死んだほうがマシです!」


「・・・恭さんの気持ちもわかってあげてください。

 亜姫さんは恭さんにとって唯一無二の大切な女性なんですよ・・・?」








大切にされていることなんてとっくにわかってた。













だからこそ一緒にいたい・・・いたかったのに。
















「・・・恭さんが死ぬと思ってるんですか?」


「そんなこと・・・ッ」


「じゃあ信じて待っててあげてください。」





草壁さんは優しく笑って言った。









「恭さんは必ず亜姫さんのもとに戻ってきますよ。

 ・・・今までのように。」














そう。彼は守れない約束はしない。














ヴァリアーとの戦いのときも、戻ってきてくれた。
















どんなに最悪な状況でも、絶対に戻ってくる。

















「・・・そうですね。

 あんまり落ち込んでると雲雀さんに怒られちゃう。」







そう言って少し笑った私を見て草壁さんは安堵するように笑った。














「そうですよ。亜姫さんには笑った顔が一番似合います。」


「・・・草壁さん。」


「何でしょう?」









言いたいことはたくさんあった。

雲雀さんに伝えて欲しいこととか

気をつけてくださいとか。











私はそれを一つの言葉にまとめる。

























「いってらっしゃい。」
















雲雀さん、私、もう泣きません。

あなたは必ず帰ってくる。

そうでしょう?




だから私は待ってます。

でも、なるべく早くお願いしますね・・・?















                   *













「?」





ふいに亜姫の声が聞こえた気がして雲雀は後ろを向いた。









足元には無数の人間が転がっている。











そろそろ時間だろう。














「行くよ。」







雲雀は膨張したハリネズミに向かって言った。





















亜姫―――――










彼女の姿を思いかべたあと、ハリネズミを引き連れて壁を突き破る。









そして見えた剣士に向かって問いかけた。



















「やぁ君。ちょうどいい。白くて丸い装置はこの先かい?」