受信料ってやつ | TNX 都筑 の よもやま話

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ティーエヌエクス・ジェイピーの都筑諒一のブログでございます。
tnxではありますが某なんちゃら娘。のプロデューサーがやってる事務所とは何の関係もありません。tnxはうちが本家本元です。取りたかったんだろうなぁ、tnx.jp。

どうも、都筑です。
はっきり書きましょう。今回は長いです。

NHKの受信料…何やかやと理由をつけて支払いをしたがらない人ってのはどこにでもいらっしゃいます。最近、某総務大臣殿が「ワンセグにも課金しよう」とか宣うて物議を醸しだしたのも記憶にあたらしいところです。一方でとある地裁判断で「受信料の支払い義務はない」というのが下されたのも最近の事だったと思います。

 でね、これについて個人的に思っていることを書いてみようと思うのです。

 基本、「受信料は支払う"必要がある"」というのが都筑の持論です。これはあくまでも都筑個人の見解ですから異論反論は個々であるでしょうし、コメント欄にて反論していただく分には構いません。しかし、「受信料は受信可能な状態にある人は支払う"必要がある"」とここで述べるのにはちゃんとした根拠もあることですので、そこを勘案されたうえでの発言をお願いします。

 さきほど「支払う"必要がある"」と書きました。文字通り義務ではないので支払わなくても咎めるものではありませんが、何故"必要がある"のか。これはNHKという放送局の存在目的が関わっています。NHKは国内唯一の「公共放送に与する放送局事業体」です。この「公共放送に与する」というところが一番大きいところで、「見ないから」というファクターが理屈で通らないと都筑が考える一つの根拠になっています。ここでNHKとは何かということをざっくり見てみましょう。

 NHKの存在は放送法という国が定めた放送事業に関する法律にて規定されています(第15条)。この条文には

公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように

と書かれてあり、民放さんのように「設立資金がないからネットワーク局を開局できません」なんてことが事実上不可能です。また

放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い

とあるように新しい技術の開発なども行っています。ハイビジョンとかBS放送とか4Kとかがそうです。
また、みなさんに馴染みのないことではありますが、ある無線局(これはアマチュア無線のみならずですが)の電波によってテレビ等の受信障害が発生した場合、各地域の総合通信局(これはかつての電波管理局で総務省の出先機関です)の委託で障害電波の探索もNHKが行なっています。実のところ
「NHKなんて見ないし~」
と言っていても全く無縁かというとそうではなかったりするのです。

 また、地震や台風等の災害が発生した場合、「速やかにより正確な情報をリアルタイムに」伝えられるのもNHKくらいです。チャンネルをCSまで拡げると「日経CNBC」であったり「ウェザーニューズ」であったりと的確な対応ができる事業者が出てきますが、パラボラアンテナを所有していて衛星放送(ぶっちゃけるとスカパー)を契約する必要が出てくるので一般的とは言いがたいです(ちなみに都筑はこの2社は大好きです)。それでも「観ない人は観ない」わけですが、「観ないから支払う"必要が無い"」とならないのは、この「公共の福祉のために存在が規定されている放送事業者」であるということが法律で規定されているからです。

 公共の福祉のために存在しているものは世間に数多くありますが、我々はその運営費用を負担しているという認識を持っていません。多くが公営であり、ときとして「箱モノ行政」と揶揄されつつもそれなりに存在しているのを多くご存知かと思います。そう、公営だったりするので出処は税金…いわゆるインビジブルコストってやつです。出処がはっきりしないために「負担している気がしない」だけで、きちんと払っています。
では、何故「公共の福祉のために存在している」のなら「税金でやりくり」しないのか。話は単純で「放送法で国営公営放送という規定をしていない」ために「運営に税金を使用することを認められていない」からです。

 放送法におけるNHKに関する条文は第15条~第87条(全体は第193条)までと大変多く、非常に細かく規定されています(その代わりNTTなどと異なり根拠法と呼ばれるものがないようです)。番組の内容にしても
第4条第1項の

公安及び善良な風俗を害しないこと。

のほか
第81条第1項の

一  豊かで、かつ、良い放送番組の放送を行うことによつて公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。
二  全国向けの放送番組のほか、地方向けの放送番組を有するようにすること。
三  我が国の過去の優れた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにすること。


とか定められています。ここに「国家のプロパガンダとして」と解釈できる項目は一切ありませんし、総務大臣が

「放送区域、放送事項(邦人の生命、身体及び財産の保護に係る事項、国の重要な政策に係る事項、国の文化、伝統及び社会経済に係る重要事項その他の国の重要事項に係るものに限る。)その他必要な事項を指定して国際放送又は協会国際衛星放送を行うことを要請する(第65条第1項)」

ことは定められていても、NHKに対してこれに関する強制力はなく

「応じるように務める(同第3項)」

にとどめています。政権に対して「放送の自主性が担保されている」ところが「国営放送」と全く異なるところだと思います(これはあくまでも法的理論上のことであって、事実がどうであるかは全く別の議論です)。

 国営でも公営でもないために税金は使えない、だけれど公共の福祉に与するためには慈善事業ではできないですから、当然どこかでその費用を負担する人が必要になる。ところが民放のようにできない根拠に

第八十三条  協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。

があり、これによってスポンサーをつけることが一切出来ません。つまり、営利企業がお金を出すというスタイルは成立しえません(毎年ン十億という費用負担を会計から出してくれるような民間企業があれば別ですが、そんなところ勤めたくないですよね)。「公共のために存在している事業体」であるからこそ、「公平に負担する」ベターな方法を考えると「受信設備を持っている人に」ってなるのは一定の筋が通ります。

「公共の福祉のためにみんなで負担しましょう。ないと困る人がたくさんいるから。」

これが「支払う"必要がある"」と冒頭で都筑が述べた理由になります。

 ちなみに、受信料についても放送法で規定がされているのですが、これがまた玉虫色の条文でして、

第六十四条  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

とあるのですが、ここに規定されているのは「受信設備を持っていたらNHKと受信契約をする」という義務だけです。契約したら支払い義務が生じるのは至極当然のことなので、そうなったら「払わない」は許されません。しかし、この義務を履行しなかったことによる罰則規定は存在しません。
「処罰規定がないのならなるべくなら無駄金は払いたくない
っていうのがおそらくは契約を渋る立場の人の言い分でしょう。支払いに係る金銭が無駄なものかどうかということについては都筑がここまで述べてきましたので割愛します。
この条文を見る限り「契約してない状態では義務が発生しない」という理屈も通ります。冒頭に挙げた地裁の「義務なし」という判決はこれに沿ったものでしょう。だから条文を確認せずに
「義務じゃないんだから!」
と受信契約を拒否する人というのは一定数出てくると思うんです。しかしながら「受信契約の義務」は残念ながら法律で規定されていますので、この理屈は実は通りません。

受信料は2ヶ月単位で数千円かかりますんで決して安い額ではない(とはいえスカパーの1チャンネル個別契約よりは概ね安い)わけですが、支払ってれば「なんてもんを作るんだ!」と文句も言えますし、そういう苦情については

第二十七条  協会は、その業務に関して申出のあつた苦情その他の意見については、適切かつ迅速にこれを処理しなければならない。

となっており協会の「義務」です。

「何かあった時に役立ってもらうために」受信料は「払う"必要がある"

のです。
長々と書きましたが、別に都筑はNHK信者でも何でもなく(かといって民放はあまり好きではありませんが)、「払いたくねえ!」と言ってる人に説得をしようとしているわけでもありません。ただし、
「払わない根拠って理屈が通る状態で存在しているの?」
という疑問くらいは投げかけてもいいかな…と思ったりしてはいるのです。