隣地とのプライバシー問題と目隠し(民法235条)


こちらもアシュレを建てる上で問題になるそうなので調べてみましたアセアセ


  隣地との問題となる事があるもののひつに目隠しがあります。誰でもそうだと思いますが、自分の室内を隣の人に見られるのは嫌ですよね。自宅にいるときのプライバシーは守りたいものです。

 目隠しとは、窓などから隣を見れないようにするためのものですので、目隠しを設置することで、互いにプライバシーを守ることができるのですが、設置した側はその窓などからの採光をあまり期待できなくなります

 窓をあけることはできますので、通風は期待できますが、暗くなるのは皆さん、あまり好みませんね。それだけに、「目隠しを設置してほしい」という隣地と「目隠しを設置したくない」という方とで揉めてしまうことがあるのです。

 都会の住宅地であれば、実際に街中を歩いてみても、目隠しを設置していないケースも多く、必ず守られているものでもありません

 「守っていないケースも多いなら、自分も守らなくても、、、」と考えるのは、危ないです。

 土地を購入して新築していく過程で、隣地の方から「目隠しを設置してほしい」と要求されることがあります。235条に該当するならば、対応しなければなりませんし、これをきっかけに隣地との関係が悪化する可能性もあります。

 また、隣地の方が本当は目隠しを設置して欲しいと考えているのに、言い辛くて言わないこともありますが、これもご近所付き合いとしては良くないですね。民法のことを知らずに(悪意なく)、目隠しを設置していない方が多いのですが。

 民法の内容だけで考えず、こういったことはご近所付き合いもあるものですから、住宅を新築する計画があるならば、計画段階で隣地へ説明しておかれるのが賢明だと言えます。建築する工務店やハウスメーカー、不動産会社から建築主(又は買主)に対してしっかり説明しておくのが良いですが、説明されていないことも多いです。

 住宅を新築する前に隣地とのプライバシーを考慮して、窓の位置をずらすなどして目隠しを設置しなくても良い建物のプランにすることも考慮したいところです。それが難しい場合には、目隠しを設置したり、地域の慣習を確認したりするように努めましょう。

詳しくは以下で。


❁目隠し設置義務の規定

1.規定の内容

窓・縁側・ベランダについて
次の『ア・イ』の両方に該当する場合に目隠しを設置する義務があります

ア 境界線から1メートル未満の距離にある

窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する
イ 他人の宅地を見通すことができる
※民法235条1項

2.例外

その地域の慣習の方が優先される

※民法236条

目隠し設置義務については『慣習』が優先されます。実際に次のような地域では,目隠し設置義務が否定されます。

☆境界から1メートル以内の窓に目隠しが設置されていない建物が非常に多いエリアについて
→地域の『慣習』と言える
→目隠し設置義務は否定される

❁目隠しを設置する設備の種類(概要)

民法235条1項には、目隠しを設置する対象となる設備として「窓・縁側・ベランダ」が記載されています。実際には,具体的な建物の一部(設備)が,これらに該当するかどうかがはっきりしないこともよくあります。


❁宅地の意味と解釈

目隠し設置義務が課せられるのは,見通すことのできる隣地が宅地である場合に限られます
実際には,『宅地(が見通せる)』かどうかがはっきりしないこともあります。
『宅地』とは要するに現に存在する住居の敷地ということです。

☆宅地の意味と解釈

1.基本的な意味(土地の用途)

宅地とは
人が住居として使用する建物の敷地をいう
工場,倉庫,事務所に使用されている建物の敷地は含まない

※東京高裁平成5年5月31日

2.住居の現存性

宅地とは
現に住宅が建てられている土地のことをいう

※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p371;通説


❁住居建築の前後関係と目隠し設置義務の関係

隣り合う2つの更地に住居が建築される状況はよくあります。
ここで,住居建築の時期がずれていると,宅地の考え方に関して問題が出てきます。
形式的には,先に建築した住居には目設置義務
がないように思えるのです。
そうではなく,両方の住居について,相互に見通せないように目隠しを設置する義務があるという解釈が一般的です。

☆住居建築の前後関係と目隠し設置義務の関係

1.住居建設の前後関係

住居Aが建築された
その後,隣地に住居Bが建築された

2.後に建築した住居

住居Bの建築時には隣地宅地である
目隠し設置義務の対象となっている

3.先に建築した住居

ア 住居A自体の建築時住居Aの建築時には隣地に住居Bは存在しなかった
隣地は宅地ではなかった
目隠し設置義務はなかった


イ 隣地の住居Bの建築時
住居Bが建築された時点において住居Aの隣地は宅地になった
この時点で住居Aへの目隠し設置義務が生じる
そうしないと建築時期が先の優先されることになり妥当ではない
※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p371


❁建築基準法65条と民法235条1項の関係

建築基準法では,(準)防火地域では,建物と建物の距離を空けずに建築することが認められています。
しかし,この規定と目隠し設置義務があるかどうかは別問題とされています

☆建築基準法65条と民法235条1項の関係

1.建築基準法65条の規定(前提)

防火地域又は準防火地域内にある建築物で,外壁が耐火構造のものについては,その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
※建築基準法65条

2.民法235条1項との関係

建築基準法65条は,民法235条1項の特則ではない
(準)防火地域でも目隠し設置義務は適用される
※東京地裁平成5年3月5日


❁不明瞭な調停による2次トラブル誘発事例

目隠し設置義務では『具体的な措置』が不明確になりやすい特徴があります。2次トラブルに発展した事例を紹介します。

境界から至近距離に,隣家を眺望できる窓があり、目隠し設置を求める調停が申し立てられた

『目隠しのために曇りガラスを使用する』という調停内容が成立した

→建物所有者は窓を不透明にするために『フィルムを貼付』し、『曇りガラスへの交換』を拒絶した

隣家所有者は慰謝料を請求する訴訟を提起した

成立した調停内容では『特定』(か)が不十分であったとし、裁判所は慰謝料請求は認めないと判断した

交渉や調停・訴訟では『現実的なガラス・遮蔽物の内容』をしっかり特定しないと,解決したはずの紛争が再発することになってしまいます。