「…おかえり、キョーコ。」

そろそろと私の身体にあなたの腕が回される。
そうすると、私全部が敦賀さんの香りに包まれて、一番安心するの。

「ご飯出来るまで、お風呂に入ったりして待っててくださいね。」

敦賀セラピーをいっぱい受けた私は、足取りも幾分か軽くなって台所に逃げ込んだ。

今日、来るのが遅れたのは仕事が遅れたからじゃない。
…あいつに会ったからだ。


『よお、相変わらずどっかの誰かさんの家政婦やってんのかよ。』


絡む第一声がそれ?と思うが、私の一番突かれたくない部分を確実に突いてるセリフ。
さすが幼なじみと言うべきか……
私自身が敦賀さんの愛情を、まだ疑っている事を見抜いている。
敦賀さんと付き合い始めたことを知ったショータローの嫌がらせ。
放っておけばいいものの、私もつい意地になって言い返す物だから…
今日みたいに時間かかっちゃうのよね。

(家政婦…ね、やってる事は確かに変わらないわ)

敦賀さんのお部屋にあがってご飯を作る。
時々お掃除したり、洗濯物をしたり…
ショータローにしていた事と、大して変わるわけではない。

(それでも、ショータローと敦賀さんは違うわ)

ショータローは、何でもしてもらうのが当たり前だった。
敦賀さんは『ありがとう』と言ってくれる。
ショータローは『便利な幼なじみ』だから、私のそばにいた。
ただそれだけだった。
敦賀さんは私に愛情を注いでくれる。
いつでも『愛してる』と囁いてくれる。

ショータローの時とは比べものにならないくらいのこの気持ち。

だけど、最近は好きだから余計不安に感じる事がある。

『私で本当に満足してますか…?』

敦賀さんのようにいつでも愛情を返すことは出来てない。
(恥ずかしくって「好き」って言うのも大変…)
料理上手な女性だって、私の他にも山ほどいる。
あっちの方も…知らない事だらけでほとんど敦賀さんにお任せ。

『イツカアキラレルンジャナイカ。』

そんな心配が常に付きまとう。

「………ダメね、キョーコ!敦賀さんを信じなきゃ…」

そうは言っても、そう簡単には払拭できない。
自分に自信がまだ持てないから……。

だから、こんな不安だらけで自信のない私は秘密。
自信が持てるその日までは、嘘を吐いて隠しちゃう。
いつか敦賀さんの隣を、堂々と歩ける自分になれるその日までは………。

「よしっ!気合いも入れた!ご飯ぱぱっと頑張るぞ!!」

今夜はお野菜いっぱい食べてほしいから、ポトフにするんだ。
包丁と俎板を取り出して、私はその日を夢見ながら料理を始めた。



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やはり着地点がいまいちですが…
男は不安を見栄で隠し、女は不安を化粧で隠す。
まあそのうち盛大に喧嘩でもして、不安は取り除いてね☆なSSでした。

こんなんでも一応フリーですので、煮るなり焼くなり(ry
…でお願いします☆