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それでは今日も、物語の続きをどうぞ音譜

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『しあわせ探偵の事件簿』
第三話:「ごんべえ」②

しばらくして、マキが自ら飲み物を運んでやってきた。

相変わらず、キレイで可愛い。そして、スタイルがいい。
マキ目当てで来る男性客も少なくないと聞くが、同性からも人気があった。ファッションやメイクのことで相談に来るお客さんも多いのだそうだ。

それと何よりも、年齢が不詳。結婚はしていて、成人した子供もいるという。
現れたマキを見て「相変わらず、ステキなだなぁ。それにしても、一体、おいくつなんだろう。聞いてみようかな」と思ったが、まずはマキに小泉を紹介した。

「小泉幸さん。いいお名前ね。私は『しあわせ探偵』の稲辺マキと申します。探偵歴では店長の内ヶ崎よりも長いので、安心してなんでもご相談くださいね」

「良かった。私、初対面の男性ってすごく緊張するので心配だったんです。それに、相談内容的にもできれば同性の意見を聞きたかったので嬉しいです。

それで早速、ご相談したいことなんですが、私には中学二年生になる娘がいるのですが、その娘が登校拒否になって、困っています。
小学校まではまったくそういうことがなかったのですが、中学に上がったときから『お腹が痛い』とか『吐き気がする』とかいって、ちょくちょく学校を休むようになりました。
それが二年生の5月の連休明けからまったく学校に行けなくなって、それから半年になります。
何度も学校の先生に相談をしたのですが、いじめの事実はないようです。

もともと内向的な子なのですが、でもクラスには友達はいて、その子たちとは時々遊んでもいるので、友達関係の問題でもなさそうです。
それで本人に聞くのですが『うるさい!』とか『ほっといて!』と言うばかりです。

小学校までは本当に素直で優しい子だったのに、反抗期だからしょうがないのでしょうか。
もう私、どうしたらいいのかわかりません・・・」

「そうなんですね。わかりました。他には何か、悩み事はありませんか?」

優しく微笑みかけるマキに安心したのか、小泉は実の母との問題なども聞かれるままに、即されるままに話した。

小泉が今まで誰にも話せなかったことまで打ち明けることができたのは、マキの穏やかで優しく話しやすい雰囲気もあるが、何よりもその的確な質問にある。

マキがしたすべての質問に対して、小泉は「そうなんですよ。それで・・・」と答えている。
小泉にしてみれば「この人は私の悩みをわかってくれているんだ」という気持ちになって、安心して素直に自分が抱えている悩みを打ち明けることができる。

かたや横で聞いている沙由里は、その的確な質問に対して「マキさんは最初から、犯人の目星をつけているな」と思った。

一通り話しを聞き終えると、マキはポケットから金色に輝くお札のようなものを取り出し左手に乗せ、その上に右手を乗せてから両手を胸の位置にもってきて目を閉じ、何かをつぶやき始めた。
それは内ヶ崎と同じく祈りを捧げているようでもあり、精神統一をしながら自分の推理を検証している風でもあった。

1分ほどしてからつぶやきを止め、ゆっくりと目を開けると小泉と視線を合わせ、優しく微笑み、こう言った。

「うん。大丈夫。すべての謎はスカッと解けました。
あなたのことを苦しめ続けている真犯人。
それは“ごんべえさん”ですね」

つづく・・・