オレンジの空景色
駅までの道のり
じいちゃん 小さな少年を
静かに駅まで送ってくれた
おんぼろ自転車 荷台に
緑のリュック くくってくれた
2秒後の未来を守る後ろ姿と
銀河に響く小さな足音
アガパンサスの下り坂
2人でゆっくりゆっくり
くだった
じいちゃん 一番上のシャツの
ボタンもいつも締めてた
真面目に生きろといわれてる
気がしていつからかいやだった
知らなかったけどじいちゃん
ばあちゃん殴ってた
そっからもう二度と会わなくなった
買ってくれた真っ赤な
ベースボールキャップ
捨ててやった
真綿で喉をしめつけられるような気分
あの頃からたぶん狂っていったんだと思う
そっけなく記号みたいに生きる
ことしかできなくなっていった
じいちゃん死んだのも
ずっと知らなかった
貧しくても卑しくなるな
って教えてくれた
ばあちゃんのために
泥にまみれて本気で働いた
ことなんて知らなかった
哀しいほど美しかったんだ
無人の改札まで無言で
見送ってくれた
汗ばむ季節
明日からまた1人の日常
線路が軋む音
もう踏切が鳴っている
まだ突っ立ってる はにかんだ
少年に少しだけ 笑って頭を
そーっと撫でてくれた
電車がゆっくり走り出し
切れては走る窓の景色に
晩夏の思い出が溶けていく
電車がホームを出た後も
みえなくなるまで
見送ってくれていたと思う
ただただあやまりたい
この願い 叶うなら