晩夏(無人の改札) | 貴方のこゝろにバンドエイドを。(失恋・難病)

貴方のこゝろにバンドエイドを。(失恋・難病)

~14歳の恋愛不能、難病ねこが寂しさと痛みを
ねこセンセーと手放していった宣戦布告手紙集~


オレンジの空景色 

 

 

駅までの道のり 

 

 

じいちゃん 小さな少年を

静かに駅まで送ってくれた

 

 

おんぼろ自転車 荷台に

緑のリュック くくってくれた

 

 

2秒後の未来を守る後ろ姿と

銀河に響く小さな足音

 

 

アガパンサスの下り坂

2人でゆっくりゆっくり

くだった

 

 

じいちゃん 一番上のシャツの

ボタンもいつも締めてた

 

 

真面目に生きろといわれてる

気がしていつからかいやだった

 

 

知らなかったけどじいちゃん

ばあちゃん殴ってた

 

 

そっからもう二度と会わなくなった

 

 

買ってくれた真っ赤な

ベースボールキャップ 

捨ててやった

 

 

真綿で喉をしめつけられるような気分

 

 

あの頃からたぶん狂っていったんだと思う

 

 

そっけなく記号みたいに生きる

ことしかできなくなっていった

 

 

じいちゃん死んだのも

ずっと知らなかった

 

 

貧しくても卑しくなるな

って教えてくれた

 

 

ばあちゃんのために

泥にまみれて本気で働いた

ことなんて知らなかった

 

 

哀しいほど美しかったんだ

 

 

 

無人の改札まで無言で

見送ってくれた

 

 

汗ばむ季節

 

 

明日からまた1人の日常

 

 

線路が軋む音

 

 

もう踏切が鳴っている

 

 

まだ突っ立ってる はにかんだ

少年に少しだけ 笑って頭を

そーっと撫でてくれた

 

 

電車がゆっくり走り出し

切れては走る窓の景色に

晩夏の思い出が溶けていく

 

 

電車がホームを出た後も

みえなくなるまで 

 

 

見送ってくれていたと思う

 

 

ただただあやまりたい

 

 

この願い 叶うなら