指定されていた公民館は
宿泊宿からかなり離れた所にあり

山の中の神社らしく小高いところに敷地と駐車場がありました。

一台しか通れないような細い道を車で降りると街灯も無い山道は、真っ暗です。

大きくカーブする山道をライトで照らしながらそろそろ降りていきました。


しばらく行くと
道が二つに分かれていました。


ナビを確認しようと画面を見ると


「あれ?何か画面がおかしい。」


私達が取っている宿を示すルートが
消えているのです。
映っているのは現在の位置を示す山道だけ。


「おかしいな、入力したのに・・・」


と、妹がもう一度入力しようとすると

今度は山岳地帯を示すロング画面になり、戻らなくなりました。


「さっきまで大丈夫だったのに
電波が悪いのかな?」


と、ボタンをいじり続ける妹。



私はもう、原因が何となく分かっていました。
私は原因が何となく分かっていました。


「やっぱり神楽宿に戻らない?
今なら来た道を引き返せばいいだけだから」


「いや・・・、ごめん正直帰りたい!
せっかく宿があるんだから暖まって休みたい。

宿までは一本道だから何となく覚えてる。
こっちの道だった気がするけど」


と、妹が車を切り返して
アクセルを踏むと・・・


「あれっ?・・・あれ?!
進まない???」


まるでアクセルが故障したように
踏んでも踏んでも

カスッ!カスッ!

と、引っ掛かりがなくなったように
空振りするだけ。


「どうして?
アクセルが壊れてる!
レンタルするとき何回も確認したのに!
どうしよう・・・こんな時間に、こんな山の中で・・・」

「だから戻ろう。
戻ってこいって言われてるんだよ」

「戻ろうにもアクセルがバカになってるんだから動けないじゃん」

「もう一回試してみたら?」


さっきからずっと試してる・・・と、妹がアクセルを踏むと、

グワッと、いきなり車が前に進みました。


「ブレーキブレーキ!!」


いきなり突っかえが取れたようにアクセルが効いたので、車が畦道の溝に落ちそうになりました。

「うごいた・・・」

「ほら、戻れってことだよ」

「そうだね
ここはまだ宿まで3/1くらいだから公民館に引き返した方が早い。アクセルがまた壊れたら大変だし戻るか。」

「いや、もう壊れないと思うよ。
戻ることにしたから」


しぶしぶ妹が車をUターンさせ、神楽宿に向かって引き返しはじめました。


びっくりした・・・と妹が安堵したのも束の間

今度は・・・


「えっ??えっ?!
ちょっと!ちょっと!!ブレーキが効かない!!」


今度はブレーキが壊れました。

ブレーキペダルの下に空き缶でも挟まったみたいにブレーキがおりないというのです。

山道のカーブなので、下りになると次第にスピードが上がります。
妹はもうパニックに陥っていました。


「怖い怖い怖い!!
ダメだ!ブレーキ効かない!!
やだやだ!!」

「落ち着いて、よく曲がり角みて!
大丈夫、大丈夫、そんなに急なカーブじゃないから曲がれる。集中~」

所々、ガードレールもない道もありました。
妹は半泣きになってパニック状態だったので
ひたすら

「大丈夫、行ける行ける。落ち着いて。
絶対落ちないから」

と繰り返していました。

街灯も全くない、真っ暗闇の山の中
坂道にしたがってどんどんスピードが上がってきました。

最後あたりになると、カーブを曲がるごとに

・・・ギュン!・・・ギュン!

と、体にGがかかるほど
スピードが出ていました。

妹は冷や汗びっしょりになって
泣き声をあげながら運転していました。

神楽宿に近付いてくると、
じょじょにブレーキが効きはじめ、

ようやく車は小高いところにある駐車場への坂道下に止まりました。

妹は疲弊しきっていました。

「良かった、無事ついたね。


駐車場への坂の下で言うと


「大丈夫じゃないよ~
本当に死ぬかと思ったよ!

・・・神楽はお姉ちゃんだけ行って。
私は、疲れたからここで寝てる。
もう、無理。キツイ。
車の中だと暖かいし・・・」


相当ストレスで疲れたようなので


「わかった。じゃあ行ってくる。」


と、ドアを開けようとしたとき


後ろから、車が来ました。


車のヘッドライトが私たちの車を照らします。
狭い一本道の坂なので二台は通れず
後ろからあおってきます。


「後ろから車が来た。
取り合えず駐車場まで上がろう」

「なんでこんな夜中に来るの~?もう・・・」

「まあ、取りあえず駐車場まで上がって
そのまま車で休んでなさいよ。
妹は調子悪くなって休んでるって
あの人には言っておくから。」

駐車場に上がる坂の一本道の途中に中途半端に止めたので、後ろから車が来るとトコロテン式に上に上がるしかありません。

取りあえず公民館の駐車場まで上がりました。


すると。


後ろから来ていたはずの車が
上がって来ません。


?と思って覗くと


その車は、忽然と消えていました。


すぐ後ろにピッタリつくくらい煽ってきていたのに。

狭い道なので、上がりかけたら駐車場に上がってしまわないと普通は方向転換できません。

バックで下りて切り返すにしても
そんなに早く出来るわけないし
真っ暗な下の山道で切り返すのは危険です。


「車・・・消えたね」

「なんで?!さっきライトに私達照らされたよね?!バックミラーに映ったもん」


呆然としていると、アナウンスが入りました。


『それでは、御神体の舞が始まります~
皆様 お戻りください』


何と・・・

それは薦められた舞がちょうど始まるタイミングでした。

私達は休憩時間の間だけドライブをして
戻ってきたのでした。



先程のライトの車にしても、
こんな深い山の中、それも深夜に

地元民の車だとしても
神楽が半分以上終わってるのに
中途半端に来るのは不自然です。

「間に合わされたね」

というと、
妹は気味が悪くなったらしく

一人で車の中にいたくない、と
結局里神楽を一緒に見ることになりました。


ご神体の舞は伊耶那岐(イザナギ)、伊耶那美(イザナミ)の夫婦円満な酒造りの舞です。

酔ったイザナギが、彫り物でつくった結界である「神庭」から出てきて女性客にちょっかいを出したり、イザナミが怒って追いかけたりする面白い演目です。

神庭は、言わば、神々の舞台。
その中でほしゃどん(奉仕者)は
神々の面を付けて踊る、演者です。

はるか昔はトランス状態になる人もいたとか。

演劇は、遡っていくと神事です。

役者が「河原乞食」と言われる
もっと、ずっと昔の時代。

役を演じることのルーツは、
祓をして、自分の内側を真っ白にし

神をその身に降ろして
トランス状態になり
神託を伝えることでした。

目の前でほしゃどん演じる神が、
一般客・・・人間の中に混じって
まさに、楽しんでいる。

伊耶那岐(イザナギ)、伊耶那美(イザナミ)

天手力男命(アメノタジカラオノミコト)、天細女命(アメノウズメ)、

人が、それぞれのご神体である神の面をかぶり
神になって、楽しんでいる。

神人合一。

役を演じるということの根源が、
分かったような気がしました。

そのあと、

「柴引」という演目があり、
タジカラオノミコトと客が柴を引き合うのですが、私が選ばれました。

タジカラオが女性客と柴引をしたのは
その年が初めてだったそうです。


続きます。。。



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