これは私の実家の台所にあるテーブルだ。
二人兄弟の兄は4歳年上で3学年上となる。
ヤツも実家から飛び出して遠くで暮らしていたが自立する生活力がないのか、もうかなり前から実家に住んでいる。
このテーブルの位置と椅子はヤツが酒をおつまみでチビチビやる場所。
ご覧のようにテーブルの上に調味料のようなものを囲んで置いて足元の床に酒が、このポジションをずっとキープしている。
ここはオレの席だと言わんばかりに、いない間も存在感を見せつけて、仕事帰りや仕事前に出来るだけ長く味わいたいということなんだろう。
それにしてのメリハリのない食事と晩食だ。
子供の頃ヤツは野球をはじめスポーツ万能でギターが弾けケンカも強かった。だからヤツはこの地方に住み過去のよかった日々を思い出しながら暮らしている。
オレはというとマンガが好きでマンガ家になる夢を持っていたが、そのうちマンガを取り入れたクリエーターになりたかった。
オレの学校生活ではこの兄の威を借る、居心地良さもあったのかマンガのことは忘れていたのだ。
この時期息子が高校を卒業した。
オレもその頃、学校で兄のニセモノをやる必要もなくなり、再びマンガへの情熱が湧いてきたとはいうものの中学、高校とずっとマンガ活動はおあずけてしていて自己流で芸術的漫画を描こうと何かを描きはじめガロ系のマンガ、青年マンガファンのままクリエーターとしての道は開かれなかった。
異性にモテる要素をたくさん持っている兄が男同士の友達は多かったが、どこかの町で少し恋愛はしたようだがついには身を固めるにはならなかった。
一方マンガ好きでは学生時代にモテるようにするのは特に生まれ育った小さな町で当時はなおさら遠い話だった。
当時モテたのはヤンキーかサーファーでありわが地方の土地柄周りも前者が多かった。
ワルとして女の子と付き合う能力は必須科目だったわけでその修行こそが世渡りを習得するための人生の勉強になった。
そして大きな希望を持って海外で世渡り修行の延長で事業を成功させるという我が道を発見した。
別に好きでもないことでモテる要素があるという活動に身を捧げるよりも、モテなくてもいいから好きなことで自らの幸福を探してそれに突き進めば人生の成功者になれる。
そうなればその世界でモテる。
アニメを観ることが一番の楽しみだという息子に「好きなことをやれ」と教えてやりたい。
実家で兄が仕事や寝ている時間以外の時間を過ごす椅子とテーブルに囲むように置かれたこのスペースはオレには必要ない