こんにちは、アリーシャです。
映画好きの友達に誘われ是枝裕和監督の話題作「怪物」を観てきました。
公立の校長職の定年は60歳なので田中裕子さん演じる校長先生が歳をとりすぎているのがかなりの違和感でしたが、それ以外は破綻のない、本当に良くできた脚本の映画でした。
この映画は三部構成となっているのですが、何ともないようなシーンが三部まで見ると大きな意味を持っていたことがわかり、なるほどこういうわけだったのね、と唸りたくなりました。
第一部では親として、安藤サクラ演ずるシングルマザーの自分の子どもが何を感じ、考えているのかわからないという不安に共感し共に心が揺れました。
第二部は永山瑛太演ずる小学校の教師の視点からみた世界が描かれます。親の立場からはまったく見えない世界がそこにあります。働く大人としてなかなか辛い場面が続きます。
第三部は小学生のある少年の視点から描かれます。
映画の中のほとんどすべての謎がここで解明されます。
少年たちが共に過ごした特別な時間の美しさと危うさのようなものが、坂本龍一の音楽と自然と相まって、とてもキラキラと描かれていて、感動しました。メインキャストの2人の少年がそれぞれとても魅力的でした。是枝裕和監督は本当に子どもを撮るのが上手いとつくづく感じました。
静かだけれど、心の中に嵐が吹き起こるようか映画でした。大人のずるさ、子どもの残酷さ、他人を傷つけたいわけではないのに、傷つけてしまう悲しさ。
私はある人物が一番のモンスター=怪物と感じましたが、誰を怪物と思うかは映画を観たそれぞれの人に委ねられています。
この映画を観て、人を噂や先入観で判断して決めつけること、自分の価値観の中に押し込むこと、の怖さを感じましたし、自分も知らず知らずやっているかもしれない、気をつけようと思いました。
特に子どもは周囲の大人の影響を受けやすく精神が壊れやすいので、対子ども、対思春期の青少年では気をつけすぎるぐらいでちょうど良いのではないかと感じました。
いじめ、経済格差、ジェンダー、ネットの情報の扱い、発達障がいなど現代社会の抱える多くの問題を巧妙に示唆していて、大人だけでなく高学年以降の子どもや思春期の中高生自身にも観てほしい映画だと思いました。
坂本龍一のミニマムな音楽も素晴らしく映像と合っていてエンドロールは目を閉じて美しい音と映画の余韻に浸りました。
個人的には、私には娘しかいないので、この映画を観て息子を持つ母というものを経験してみたかったと思いました。
小説化もされています。
ミニマムな音楽が映像をひきたてています。