オキビキとスリのあいだ

といえばいいのだろうか。


盗られる瞬間を見ていたから、スリではないと思う。
でも自分の座っている足のすぐ横に置いていたものを盗られた。
置いていたもの・・・・

よってオキビキか。



置引にあった。

アリストテレス広場で。
広場には映画祭の宣伝用の大型スクリーンが設置してあり、その前に映画祭50周年にちなんで“50”という形のベンチがある。

その“50”ベンチに座って夕陽を眺めていたときに。
テルマイコス湾をオレンジに染めて沈んでゆく夕陽はとてもきれいだし、“50”ベンチのでスクリーンから流れる音楽に合わせて足を踏みならしている少年もいて、映画の時間を待つにはとても良い場所だった。僕は“50”の“5”の下の方に座っていて、少年は“0”の下の方で跳ねていた。

別に夕陽や少年に見とれていて、注意不足になっていたわけではない。
犯人が近づいてきたのにも気づいていたし、犯人が手を伸ばしたのにも気づいていた。

犯人が女の子だったから、油断したってのはある。
むしろ、少しなら分けてあげても良いかな、と思った。


盗られたものはミネラルウォーター。
犯人は7歳くらいの女の子。

僕の足のすぐ隣に置いてあった500mlのミネラルウォーターに犯人は手を伸ばした。
その場で一口飲むのかと思いきや、そのまま持っていき、ベンチから5メートルほど離れたところでふたを開け、くるくる回りながら水を撒き散らし、水がなくなるとボトルも回転を続けたまま放り投げた。回転を止め僕の顔色を窺う。被害者が困惑しているのを確認すると、ふたを真上に放り投げ、犯人は走り去った。


鮮やかだった。

水がくるくる撒かれる様子も。
飛び上がったふたが落ちてきたときには、いなくなっている様子も。
犯行手口も。



0911201945


夕陽の写真ってどうやったらうまく撮れるの?
Michina(ミチナ) 世界一周旅行の記録
Michina(ミチナ) 世界一周旅行の記録