恋の季節は 16
《天気雨が見られるでしょう》
まるで禁断の果実を口にしてしまったようだ。
蓮の背中からゾクゾクと湧き上がるのは妙な興奮と、僅かばかりの罪悪感、高揚、今まで感じたことのないほどの幸福、そして満足感に充足感。
それらが全ての世界を満たすように蓮の身体を駆け巡る。
触れた唇は今まで味わったことのない甘さがあり、蓮の心を震わせた。
かつてこれほどまでに甘い唇を味わったことがあるだろうか?…それは、否だ。
離したくない。離れたくない。
ーーーもっと味わいたい…。
蓮の中で獣が目覚めそうになったところで、キョーコの身体の震えに気付いた。
ハッと我に返って、蓮は慌ててキョーコから自分の身体を引き剥がした。
ーーー俺は…今…一体、何を…??!!
自分のしてしまったことが信じられない。
今まで女性の唇をこんな風に奪ったことなどなかったのだ。
いつも必ず女性から求められ、それに答えるだけだった。
ただ唇を合わせるだけのその行為をしたがる女性の気持ちなど今の今までわからなかったのだ。
だけど…何故かキョーコにはしたくて堪らなくなった。
目の前にいる俺よりも、過去の俺をキラキラとした目で想う君…。
ーーーねぇ、お願いだ…。
「俺を…見て…」
情けない声色で言葉がぽとりと口から零れ落ちた。
ーーー過去の俺じゃない、今、この場にいる俺を見て…。
キョーコが真っ赤な顔して口を両手で抑え、涙で瞳を濡らしていた。
それでも真っ直ぐに見つめてくるその純粋な汚れのない目に、蓮の心には制御出来ない程の様々な感情が溢れ出す。
ーーー俺は…俺は一体どうしたんだ?!?!
自身に湧き上がる初めての感情に戸惑いと混乱が生じる。
それでも必死で平静を装って、目の前の彼女を怯えさせないようにすることに気持ちを集中させた。
ぽとりぽとりと、こぼれる涙の数だけ、蓮の中に罪悪感が湧き上がる。
ーーー俺が…泣かせてしまったーー。
「ど…して…」
キョーコから漏れた言葉が蓮に、疑問を投げかける。
ーーーどうしてーーー?
それが、わからないのだ。
わからないから混乱してるのだ。
このまま嫌われてしまうのではないかと言う途轍もない不安に駆られる。
「ごめ…。あの、いきなりこんなことするつもりは…」
キョーコの瞳からポロポロと涙が零れ落ちるのに狼狽えて、蓮はキョーコを抱き締めた。
「あぁぁ、泣かないでキョーコちゃん。ごめん。本当にごめん。お願いだから。泣き止んで。」
ひっくひっくとしゃっくりを上げ始めたキョーコの背中を蓮が必死に宥めるのだった。
キョーコは蓮にキスをされて驚いていた。
蓮の閉じられた瞼が目の前にあり、唇に柔らかい感触がある。
一体何が起こったのか分からなかった。
味わうように唇を啄まれてぞくりとした。
ーーー私、蓮君にキスされてる!!!!
キョーコはドキドキと胸を打ち鳴らしながらも怖くなった。
甘い痺れが全身を襲う。身体が震えるほどの喜びと幸福感、不安が渦巻く。
このキスから何かが変わってしまうような、そんな感じがして怖かった。
キョーコの瞳に涙が溜まると。ハッとしたように蓮から引き離された。
触れられていた唇が熱い…。震える手で恥ずかしくて、唇を覆った。
ーーーどうして?!どうして私にキスなんて!!
まだ残る蓮の唇の感触に一気に顔が朱に染まる。
驚きのあまり蓮を凝視すれば、蓮が苦しそうに顔を歪めた。
「俺を…みて…」
乞う様な蓮の表情にドキリと心臓が跳ねる。
今まで信じて疑わなかったのは、ショーちゃんを好きだと言う自分。
同時に2人も好きになっちゃうなんて…と思っているキョーコは
気付いていない。
既に、キョーコの中で蓮が占める割合の方が大きくなり過ぎていることに。
ーーーどうして?!何でこんなことをするの…こんなことされたら…蓮君のことしか…見れなくなっちゃう…。
「ど…して…」
言葉はそれしか紡げなかった。
言葉の変わりに流れるのは、瞳から落ちる涙。
次々と涙が溢れる度、松太郎への今までの想いが流され、逆に蓮への想いが溢れてくる。
「ごめ…あの、いきなりこんなことするつもりは…」
蓮が狼狽えてるのは分かったが涙は止めどなく流れてくる。
頭が混乱して上手く考えられない。
「あぁぁ、泣かないでキョーコちゃん。ごめん。本当にごめん。お願いだから。泣き止んで。」
そっと蓮に抱き締められて、キョーコの胸が苦しいくらいに締め付けられた。
「無理だよ…蓮君…止まらない…。」
優しい蓮の手がキョーコの背中を宥めるように撫でてくれる。
その腕の中は本当に気持ち良くて、心臓がドキドキとして壊れそうなのに、何故かひどく安心してしまうのだ。
ーーーだって…こんなに好きになっちゃった…。もう止められないよ…。あぁ、私、蓮君のことが好きなんだわ。
キョーコはその時ようやく自分の気持ちを自覚した。
蓮の全てが、キョーコを安心させてくれる。幸せな気分を味あわせてくれる。蓮を思えば思うほど、気持ちは膨らんでふわふわと夢見心地になる。
ーーー私、蓮君と…キスしたんだ…。
キョーコから流れる涙は、きっと悲しみでも何でもない。溢れるほど膨れ上がった想いに涙を流していたのだった。
(続く)
*****
あ、あれ?!キョーコだけ先に自覚しちゃいました!!
何だかまた考えていたお話からずれていきそうな予感??
蓮様が勝手に暴走しちゃうから!!(←必殺人のせい)
きゃー!軌道修正…出来るかしら?!(汗)
《天気雨が見られるでしょう》
まるで禁断の果実を口にしてしまったようだ。
蓮の背中からゾクゾクと湧き上がるのは妙な興奮と、僅かばかりの罪悪感、高揚、今まで感じたことのないほどの幸福、そして満足感に充足感。
それらが全ての世界を満たすように蓮の身体を駆け巡る。
触れた唇は今まで味わったことのない甘さがあり、蓮の心を震わせた。
かつてこれほどまでに甘い唇を味わったことがあるだろうか?…それは、否だ。
離したくない。離れたくない。
ーーーもっと味わいたい…。
蓮の中で獣が目覚めそうになったところで、キョーコの身体の震えに気付いた。
ハッと我に返って、蓮は慌ててキョーコから自分の身体を引き剥がした。
ーーー俺は…今…一体、何を…??!!
自分のしてしまったことが信じられない。
今まで女性の唇をこんな風に奪ったことなどなかったのだ。
いつも必ず女性から求められ、それに答えるだけだった。
ただ唇を合わせるだけのその行為をしたがる女性の気持ちなど今の今までわからなかったのだ。
だけど…何故かキョーコにはしたくて堪らなくなった。
目の前にいる俺よりも、過去の俺をキラキラとした目で想う君…。
ーーーねぇ、お願いだ…。
「俺を…見て…」
情けない声色で言葉がぽとりと口から零れ落ちた。
ーーー過去の俺じゃない、今、この場にいる俺を見て…。
キョーコが真っ赤な顔して口を両手で抑え、涙で瞳を濡らしていた。
それでも真っ直ぐに見つめてくるその純粋な汚れのない目に、蓮の心には制御出来ない程の様々な感情が溢れ出す。
ーーー俺は…俺は一体どうしたんだ?!?!
自身に湧き上がる初めての感情に戸惑いと混乱が生じる。
それでも必死で平静を装って、目の前の彼女を怯えさせないようにすることに気持ちを集中させた。
ぽとりぽとりと、こぼれる涙の数だけ、蓮の中に罪悪感が湧き上がる。
ーーー俺が…泣かせてしまったーー。
「ど…して…」
キョーコから漏れた言葉が蓮に、疑問を投げかける。
ーーーどうしてーーー?
それが、わからないのだ。
わからないから混乱してるのだ。
このまま嫌われてしまうのではないかと言う途轍もない不安に駆られる。
「ごめ…。あの、いきなりこんなことするつもりは…」
キョーコの瞳からポロポロと涙が零れ落ちるのに狼狽えて、蓮はキョーコを抱き締めた。
「あぁぁ、泣かないでキョーコちゃん。ごめん。本当にごめん。お願いだから。泣き止んで。」
ひっくひっくとしゃっくりを上げ始めたキョーコの背中を蓮が必死に宥めるのだった。
キョーコは蓮にキスをされて驚いていた。
蓮の閉じられた瞼が目の前にあり、唇に柔らかい感触がある。
一体何が起こったのか分からなかった。
味わうように唇を啄まれてぞくりとした。
ーーー私、蓮君にキスされてる!!!!
キョーコはドキドキと胸を打ち鳴らしながらも怖くなった。
甘い痺れが全身を襲う。身体が震えるほどの喜びと幸福感、不安が渦巻く。
このキスから何かが変わってしまうような、そんな感じがして怖かった。
キョーコの瞳に涙が溜まると。ハッとしたように蓮から引き離された。
触れられていた唇が熱い…。震える手で恥ずかしくて、唇を覆った。
ーーーどうして?!どうして私にキスなんて!!
まだ残る蓮の唇の感触に一気に顔が朱に染まる。
驚きのあまり蓮を凝視すれば、蓮が苦しそうに顔を歪めた。
「俺を…みて…」
乞う様な蓮の表情にドキリと心臓が跳ねる。
今まで信じて疑わなかったのは、ショーちゃんを好きだと言う自分。
同時に2人も好きになっちゃうなんて…と思っているキョーコは
気付いていない。
既に、キョーコの中で蓮が占める割合の方が大きくなり過ぎていることに。
ーーーどうして?!何でこんなことをするの…こんなことされたら…蓮君のことしか…見れなくなっちゃう…。
「ど…して…」
言葉はそれしか紡げなかった。
言葉の変わりに流れるのは、瞳から落ちる涙。
次々と涙が溢れる度、松太郎への今までの想いが流され、逆に蓮への想いが溢れてくる。
「ごめ…あの、いきなりこんなことするつもりは…」
蓮が狼狽えてるのは分かったが涙は止めどなく流れてくる。
頭が混乱して上手く考えられない。
「あぁぁ、泣かないでキョーコちゃん。ごめん。本当にごめん。お願いだから。泣き止んで。」
そっと蓮に抱き締められて、キョーコの胸が苦しいくらいに締め付けられた。
「無理だよ…蓮君…止まらない…。」
優しい蓮の手がキョーコの背中を宥めるように撫でてくれる。
その腕の中は本当に気持ち良くて、心臓がドキドキとして壊れそうなのに、何故かひどく安心してしまうのだ。
ーーーだって…こんなに好きになっちゃった…。もう止められないよ…。あぁ、私、蓮君のことが好きなんだわ。
キョーコはその時ようやく自分の気持ちを自覚した。
蓮の全てが、キョーコを安心させてくれる。幸せな気分を味あわせてくれる。蓮を思えば思うほど、気持ちは膨らんでふわふわと夢見心地になる。
ーーー私、蓮君と…キスしたんだ…。
キョーコから流れる涙は、きっと悲しみでも何でもない。溢れるほど膨れ上がった想いに涙を流していたのだった。
(続く)
*****
あ、あれ?!キョーコだけ先に自覚しちゃいました!!
何だかまた考えていたお話からずれていきそうな予感??
蓮様が勝手に暴走しちゃうから!!(←必殺人のせい)
きゃー!軌道修正…出来るかしら?!(汗)