ミニマム!!【2】
いつにない気合いを入れて撮影をサクサクと続けて行く蓮を、社はスタジオの隅から不思議そうに見ていた。
清々しいまでにイキイキしている姿は、やはり何かあったとしか思えない。
そしてそのうち、嬉しそうに蕩けるような笑みで胸ポケットを覗き見たり、大切そうに胸ポケットを庇ったり、撫でたりする蓮の姿に気付いた。
休憩で戻ってきた蓮に、社は早速探りを入れる。
「お疲れ~。ところで蓮、胸ポケットに何を入れてるんだ?」
「え?な、何って…何のことです?」
そう返してきた蓮に社は呆れたような視線を向ける。
「とぼけるなよな。さっきからポケットの中を嬉しそうに見つめたり、大切そうにポケットをそっと包み込んだり…。まぁ、そんな顔をするってことは全部キョーコちゃん絡みなんだろうけどな。」
社のその言葉を聞いて、蓮は驚愕の表情で固まった。
どうやら無自覚だったらしい。
「お前な…敦賀蓮としてのブランドがあるんだからな。もっと自覚しろ!…ほら。」
そう言って社が手を差し出した。
「…え?」
「だから、終わるまで預かっててやるから、胸ポケットの中身を渡せ。」
「なっ!!嫌ですよ!!絶対に渡しません!!」
社の言葉に、蓮はギンっと社を敵を見る目で睨み付けた。
「な、なんだよ。そんなおっかない顔するなよ。なにも、そのまま貰おうとしているわけじゃないんだからさ。」
「当たり前です!例え社さんであろうと最上さんは渡しません!!」
「なっ!なんでキョーコちゃんをもらうって話しになってるんだよ。大丈夫だよ!終わるまで預かってやるって言ってるだけなんだから、ちゃんと後で返すよ。」
「…いえ、結構です。それだけは出来ません。すみません。」
蓮は頑として社の申し出は受けようとしなかった。
そんな蓮の姿をキョーコは不思議そうにポケットの中から眺めていた。
確かに、誰かに見つかれば大騒ぎになるだろう。
その為、社にも教えないのかもしれない。
だけど、社は蓮のマネージャーだ。きっと騒ぎ立ててトラブルを起こすこともないだろう。
それなのに、何故キョーコのことを話そうとしないのか、キョーコの中で疑問だけが残った。
「誰にも…渡さないからね。」
そんなキョーコに、そっと優しく胸ポケットを守るように手を添えてキョーコにだけ聞こえるようにつぶやく蓮のぬくもりと言葉に、キョーコはぽわんと心が暖かくなるのを感じていた。
カメラの関係で待機時間が出来てしまった蓮は、先ほどのような失敗をしない為に、さっさと一人になれる場所に向かった。
なるべく人通りが少なくて、目立たない場所を選ぶ。
台本を覚える時など良く一人になる蓮は、テレビ局の中のこういう場所を大体把握している。
今日も台本を片手にそう言う場所に向かった。
しかし、今回は一人になる為ではもちろんなく、キョーコと二人っきりになる為だ。
浮き足立ちそうになるところを必死で抑えて、何処に行くのかと声をかける共演者や社の質問を笑顔でかい潜り、行き着いた先で、蓮はキョーコをポケットからそっと取り出した。
指にしがみ付くようにして出てきたキョーコに思わず笑みが零れる。
この数時間で蓮のキョーコへの想いもまた数段と膨れたように思う。
一緒にいればいるほど、どんどんと惹かれてしまうのだ。
不安そうに見上げる瞳とか、はにかんだ笑顔とか、全てが可愛くて愛しくて堪らない。
10数分ほどの休憩時間をキョーコと話すのに全てを費やして、また撮影へと戻っていった。
蓮のキョーコへの気持ちが膨れ上がるのと同じように、キョーコの気持ちもまた、蓮の温もりを感じれば感じただけ育って行く。
優しい笑顔が、暖かい手の温もりが忘れられない。
できる事ならずっと手で包み込んで欲しいと思う。
一緒にいればいるだけ安心感を感じる事が出来るのだ。
キョーコの中で今まで感じた事のない想いが湧き上がる。
蓮の事をもっと知りたい。蓮を一人占めにしたい。そんな貧欲な想いに自己嫌悪しながらも、その想いは強くなる。
あの笑顔を一人占めしたい。
優しい手も自分だけに触れて欲しい。
そんな事を考えて見上げると、蓮と目が合った。
ニコリと微笑まれて、キョーコの心臓がはねる。
それと同時に、フワリと香水の香りが漂った。
「敦賀君、おはよう。」
「七海さん、おはようございます。」
聞こえてきた女性の声にキョーコの顔が曇る。
蓮のポケットの中からみていて、これまでも、蓮に取り入ろうとする女優やモデルがいた。
それに反して、蓮は、笑顔を通しながらも、煩わしそうに相手をしていた。
蓮の釣れない返事を聞いても、頑として引かない彼女達に苛立ちが増す。
ーーー敦賀さんは忙しいのに!!貴重な敦賀さんの休憩時間をそんな風に奪わないでよ!!
「敦賀くぅん。今夜は空いてる?食事でもどうかしら?」
しかし、今回は先程と勝手が違った。
いきなり潰されそうな圧迫感を感じ、キョーコは混乱した。
柔らかい壁が、キョーコを潰すようにグイッと押し付けられた。
ーーーなっ何?!く、苦しい!
「七海さん、食事はまたの機会で。あいにく今日は予定がありまして…。あの、離して頂けますか?」
胸を押し付けてくる七海を煩わしく思いながら、キョーコが心配で思わず口調がキツくなる。
そんなことに気付きもしない七海は、胸ポケットにちらっと目線をやる蓮に、自慢の胸を気にいられたんだと思って更に擦り寄る。
「じゃあ、いつにする?いつなら…きゃっ!」
七海が一気に蓮から飛び退いた。
胸を庇ってるとこをみると、何かが当たったのだろう。
「む、胸…触った?」
七海は真っ赤になりながら言うが、蓮の手の位置はそんなにピンポイントで触れる位置になかった。
しかし、七海が離れたことで、蓮は、すぐにポケットの中のキョーコを気にして、手で確かめるように、そっと包み込んだ。
「ぽ、ポケット?う、動い…て…?」
キョーコの震えている振動で、無事なことにホッとした蓮だったが、七海をギロリと強い視線で睨みつけた。
「離れて下さいっていいましたよね?今後一切俺に近付かないで下さい…じゃないと…」
七海は蓮のあまりの剣幕に耐えられず逃げ出したのだった。
キョーコは蓮の胸ポケットの中で真っ青になっていた。
ーーーだだだだだ、大魔王?!
苦しくて堪らなかったキョーコは、ついに、七海を押しやってしまったのだ。
そしたら、七海が離れて大魔王が現れて、キョーコは恐怖に怯えた。
ーーーこ、これって、私が動いて七海さんを突き放しちゃったから怒ってるの?!
何やら見当違いなことでぐるぐるしていたキョーコだったが、蓮の優しい手がキョーコの身体を大切そうに撫でてくれたことで、やっとキョーコは蓮を見上げた。
すると、申し訳なさそうな蓮の顔がありごめんね?と、キョーコにだけ聞こえるように囁いた。
キョーコはその蓮の優しさに、いえ、と頭を振りながらも泣きたい気持ちになっていた。
ーーー心配…してくれたのかな?
蓮の優しい手の平がキョーコの身体をポケットの上から撫で続ける。
キョーコは蓮の服にキュッとしがみ付いて、嬉しさでポロリと涙を流すのだった。
ーーーこんな風に守られたら…この先ずっと敦賀さんしか見えなくなっちゃう…。
キョーコはそんな予感がしたのだった。
《続く?orEND?》
※面白く感じたら拍手お願いします♪
*****
なんだろう… 全然進んでないぞう!
本当はマンションまで行く予定だったのにっ!
因みに七海は、背の高いスーパーモデルで、10センチのヒールを履いてると思って下さい。
ヒールを履いて蓮の隣に並ぶと、顎の位置ぐらいに目があるくらいの身長差ぐらいの気持ちで書いてます(笑)
何だかシリーズ化しそうな気配が…(笑)
また思いついたら続き書きますね♪
いつにない気合いを入れて撮影をサクサクと続けて行く蓮を、社はスタジオの隅から不思議そうに見ていた。
清々しいまでにイキイキしている姿は、やはり何かあったとしか思えない。
そしてそのうち、嬉しそうに蕩けるような笑みで胸ポケットを覗き見たり、大切そうに胸ポケットを庇ったり、撫でたりする蓮の姿に気付いた。
休憩で戻ってきた蓮に、社は早速探りを入れる。
「お疲れ~。ところで蓮、胸ポケットに何を入れてるんだ?」
「え?な、何って…何のことです?」
そう返してきた蓮に社は呆れたような視線を向ける。
「とぼけるなよな。さっきからポケットの中を嬉しそうに見つめたり、大切そうにポケットをそっと包み込んだり…。まぁ、そんな顔をするってことは全部キョーコちゃん絡みなんだろうけどな。」
社のその言葉を聞いて、蓮は驚愕の表情で固まった。
どうやら無自覚だったらしい。
「お前な…敦賀蓮としてのブランドがあるんだからな。もっと自覚しろ!…ほら。」
そう言って社が手を差し出した。
「…え?」
「だから、終わるまで預かっててやるから、胸ポケットの中身を渡せ。」
「なっ!!嫌ですよ!!絶対に渡しません!!」
社の言葉に、蓮はギンっと社を敵を見る目で睨み付けた。
「な、なんだよ。そんなおっかない顔するなよ。なにも、そのまま貰おうとしているわけじゃないんだからさ。」
「当たり前です!例え社さんであろうと最上さんは渡しません!!」
「なっ!なんでキョーコちゃんをもらうって話しになってるんだよ。大丈夫だよ!終わるまで預かってやるって言ってるだけなんだから、ちゃんと後で返すよ。」
「…いえ、結構です。それだけは出来ません。すみません。」
蓮は頑として社の申し出は受けようとしなかった。
そんな蓮の姿をキョーコは不思議そうにポケットの中から眺めていた。
確かに、誰かに見つかれば大騒ぎになるだろう。
その為、社にも教えないのかもしれない。
だけど、社は蓮のマネージャーだ。きっと騒ぎ立ててトラブルを起こすこともないだろう。
それなのに、何故キョーコのことを話そうとしないのか、キョーコの中で疑問だけが残った。
「誰にも…渡さないからね。」
そんなキョーコに、そっと優しく胸ポケットを守るように手を添えてキョーコにだけ聞こえるようにつぶやく蓮のぬくもりと言葉に、キョーコはぽわんと心が暖かくなるのを感じていた。
カメラの関係で待機時間が出来てしまった蓮は、先ほどのような失敗をしない為に、さっさと一人になれる場所に向かった。
なるべく人通りが少なくて、目立たない場所を選ぶ。
台本を覚える時など良く一人になる蓮は、テレビ局の中のこういう場所を大体把握している。
今日も台本を片手にそう言う場所に向かった。
しかし、今回は一人になる為ではもちろんなく、キョーコと二人っきりになる為だ。
浮き足立ちそうになるところを必死で抑えて、何処に行くのかと声をかける共演者や社の質問を笑顔でかい潜り、行き着いた先で、蓮はキョーコをポケットからそっと取り出した。
指にしがみ付くようにして出てきたキョーコに思わず笑みが零れる。
この数時間で蓮のキョーコへの想いもまた数段と膨れたように思う。
一緒にいればいるほど、どんどんと惹かれてしまうのだ。
不安そうに見上げる瞳とか、はにかんだ笑顔とか、全てが可愛くて愛しくて堪らない。
10数分ほどの休憩時間をキョーコと話すのに全てを費やして、また撮影へと戻っていった。
蓮のキョーコへの気持ちが膨れ上がるのと同じように、キョーコの気持ちもまた、蓮の温もりを感じれば感じただけ育って行く。
優しい笑顔が、暖かい手の温もりが忘れられない。
できる事ならずっと手で包み込んで欲しいと思う。
一緒にいればいるだけ安心感を感じる事が出来るのだ。
キョーコの中で今まで感じた事のない想いが湧き上がる。
蓮の事をもっと知りたい。蓮を一人占めにしたい。そんな貧欲な想いに自己嫌悪しながらも、その想いは強くなる。
あの笑顔を一人占めしたい。
優しい手も自分だけに触れて欲しい。
そんな事を考えて見上げると、蓮と目が合った。
ニコリと微笑まれて、キョーコの心臓がはねる。
それと同時に、フワリと香水の香りが漂った。
「敦賀君、おはよう。」
「七海さん、おはようございます。」
聞こえてきた女性の声にキョーコの顔が曇る。
蓮のポケットの中からみていて、これまでも、蓮に取り入ろうとする女優やモデルがいた。
それに反して、蓮は、笑顔を通しながらも、煩わしそうに相手をしていた。
蓮の釣れない返事を聞いても、頑として引かない彼女達に苛立ちが増す。
ーーー敦賀さんは忙しいのに!!貴重な敦賀さんの休憩時間をそんな風に奪わないでよ!!
「敦賀くぅん。今夜は空いてる?食事でもどうかしら?」
しかし、今回は先程と勝手が違った。
いきなり潰されそうな圧迫感を感じ、キョーコは混乱した。
柔らかい壁が、キョーコを潰すようにグイッと押し付けられた。
ーーーなっ何?!く、苦しい!
「七海さん、食事はまたの機会で。あいにく今日は予定がありまして…。あの、離して頂けますか?」
胸を押し付けてくる七海を煩わしく思いながら、キョーコが心配で思わず口調がキツくなる。
そんなことに気付きもしない七海は、胸ポケットにちらっと目線をやる蓮に、自慢の胸を気にいられたんだと思って更に擦り寄る。
「じゃあ、いつにする?いつなら…きゃっ!」
七海が一気に蓮から飛び退いた。
胸を庇ってるとこをみると、何かが当たったのだろう。
「む、胸…触った?」
七海は真っ赤になりながら言うが、蓮の手の位置はそんなにピンポイントで触れる位置になかった。
しかし、七海が離れたことで、蓮は、すぐにポケットの中のキョーコを気にして、手で確かめるように、そっと包み込んだ。
「ぽ、ポケット?う、動い…て…?」
キョーコの震えている振動で、無事なことにホッとした蓮だったが、七海をギロリと強い視線で睨みつけた。
「離れて下さいっていいましたよね?今後一切俺に近付かないで下さい…じゃないと…」
七海は蓮のあまりの剣幕に耐えられず逃げ出したのだった。
キョーコは蓮の胸ポケットの中で真っ青になっていた。
ーーーだだだだだ、大魔王?!
苦しくて堪らなかったキョーコは、ついに、七海を押しやってしまったのだ。
そしたら、七海が離れて大魔王が現れて、キョーコは恐怖に怯えた。
ーーーこ、これって、私が動いて七海さんを突き放しちゃったから怒ってるの?!
何やら見当違いなことでぐるぐるしていたキョーコだったが、蓮の優しい手がキョーコの身体を大切そうに撫でてくれたことで、やっとキョーコは蓮を見上げた。
すると、申し訳なさそうな蓮の顔がありごめんね?と、キョーコにだけ聞こえるように囁いた。
キョーコはその蓮の優しさに、いえ、と頭を振りながらも泣きたい気持ちになっていた。
ーーー心配…してくれたのかな?
蓮の優しい手の平がキョーコの身体をポケットの上から撫で続ける。
キョーコは蓮の服にキュッとしがみ付いて、嬉しさでポロリと涙を流すのだった。
ーーーこんな風に守られたら…この先ずっと敦賀さんしか見えなくなっちゃう…。
キョーコはそんな予感がしたのだった。
《続く?orEND?》
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なんだろう… 全然進んでないぞう!
本当はマンションまで行く予定だったのにっ!
因みに七海は、背の高いスーパーモデルで、10センチのヒールを履いてると思って下さい。
ヒールを履いて蓮の隣に並ぶと、顎の位置ぐらいに目があるくらいの身長差ぐらいの気持ちで書いてます(笑)
何だかシリーズ化しそうな気配が…(笑)
また思いついたら続き書きますね♪