何だか現在、短編脳??


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警戒心をお持ちなさい。


「京子ちゃん!ラブミー部に依頼したらご飯作りにきてくれるって本当?!」

「え…?」

「敦賀くんのマネージャーが敦賀くんに言ってるのをたまたま聞いたんだよ!キョーコちゃんにラブミー部の依頼で夕飯頼んだからなんたらってさ」

「はぁ…」

「敦賀くんの家に作りに行ってるんだろ?だったらさ、俺の家でもさっ!お願い!!」

最近バラエティ番組でも活躍している気さくなお兄さんキャラの先輩タレントにそう言われて、キョーコは戸惑った。

「あの…でも…」

「それとも何?キョーコちゃんってもしかして敦賀くんと付き合ってるとか?」

「な?!つ、付き合ってません!!敦賀さん程の方が私みたいなペーペーと付き合うはずないじゃないですか!!」

「じゃあ全く問題ないよね?俺…一人暮らしでさ、手料理を随分長いこと食べてないんだ。いつもロケ弁とか外食ばっかりでさ…」

「え…そうなんですか?それは身体に良くないですね。」

「うん。でね?京子ちゃんラブミー部だからさ、俺も京子ちゃんが愛を取り戻すのに協力したいし、一石二鳥だと思わない?」

「そう…なんですか?」

「だからさ。どうかな?今夜…ダメ?」

「………わかりました!!不肖最上キョーコ!!夕飯作りに伺います!!」

「やった!!じゃあ、俺今日19時には上がれるんだけど、京子ちゃんは?」

「あ、私もそれくらいです。住所伺えれば食材買って向かわせて頂きます。」

「オッケー今、書くから待ってて」

「リクエストとか…ありますか?」

「んー。任せる!あ、でも和食が食べたいな。」

「わかりました。和食ですね。それではーー」

そんなこんなで、ラブミー部への食事の依頼を受けてしまったキョーコは、その日の夜少し浮かない顔をしていた。

「はーーー。何か…気が進まないな…。」

ブツブツと言いながら、食材を選ぶ。
蓮に作る時は普段ご飯を食べない蓮に食べさせると言う使命感に燃えて作りに行くことが出来るのだが、蓮には作って他の人には作らないと誤解されたくなくて今回は受けてしまったが、そもそも本当に作りに行く必要があるのだろうか?

「何か…行きたく…ないな…」

正直、こんな風に作る時間があるなら、蓮のところに作りに行きたいと考えてしまう。
少し多めに作って、帰りに蓮のところへ持って行こうか…と思い至ったところで、キョーコの顔にぱぁぁと光が戻った。

ーーーそうか!それが良いわ!!今日は敦賀さんじゃないから食べ終わるのを見守る必要なんてないし、二人分多めに作ってタッパーに詰めて持って行っちゃえばいいのよ!!帰るのが遅ければドアにでもかけて留守電残してたら食べてくれるだろうし…。

そう思うと、キョーコの中でやる気が漲って来た。

「ふふ。今日は和食がメインだから…敦賀さんの好きなこれを入れて…。」

ルンルン気分で買い物を終えたキョーコは指定された住所のマンションへ向かうのだった。

「いらっしゃい!京子ちゃん。」

「お邪魔します!ラブミー部の依頼で伺いました~!」

「わ!結構量あったね、ごめん。重かっただろう?迎えに行けば良かったかな?」

「いえ。大丈夫ですよ!このくらい普通ですから。えへへ。ちょっと張り切って買いすぎちゃいましたし。」

そう言って照れ臭そうに笑ったキョーコに男は目を見開く。

「あ、そっか…ま、入ってよ。」

そう言われて通された部屋は意外と綺麗でびっくりしてしまった。

「わー。柳さんって綺麗好きなんですね。」

「まぁ、そこそこね。本当は自分で料理したくて調理器具も揃えてるんだけど、中々…」

「あはは。本当だ。あまり使われてないですね。」

こういうところ、敦賀さんもそうだから、もしかして男の人って皆そうなのかな?とキョーコは考えながらも、テキパキと手を動かした。

「では、取り掛からせていただきますね!」

そう言ってキョーコは微笑むと、男は嬉しそうに頷いた。
対面式になっているキッチンに立ち、鼻歌交じりに作り始める。

あっという間に美味しそうな匂いが立ち込め、感心して柳がキッチンに近付いた。

「美味しそうな匂いがするー!」

「ふふ。もう少しですので、リビングで寛いで待ってくださいねー。」


色取り取りの色彩で盛り付けられた和食が運ばれてきて、柳が目を見開く。

「うっわ!!凄いっ!!これ…全部俺のために?!」

柳はジーーーンと感激していた。

「一応バランスは考えて作ってますので。」

そういいながら自分は蓮のところで一緒に食べるようと、いそいそと食事をタッパーに詰める。

「あれ?京子ちゃんのは?」

「あ、私は帰ってから食べるので詰めさせて頂きました!」

「え?一緒に食べないの?」

「はい。食事作りが依頼ですし…」

「そんなこと言わずにさ、折角だから一緒に食べようよ。」

「いえ、長居してもご迷惑でしょうから、私はここで…」

「待って!」

支度を済ませてカバンに手を伸ばしたところで、そこをパシッと掴まれた。

「柳…さん?」

「折角だから…もっと一緒にいようよ。」

ギュッと握られた手が妙に熱く感じてキョーコの身体が強張った。

「ちょっ…は、離してください。」

この部屋に二人っきりだと言うことに何だか急に怖いとキョーコは感じた。
背筋に冷や汗が流れる。

「折角、料理してもらったのに、はいこのまま帰ってなんて言えないでしょ?」

「いえ…でも、あの…ちょっとこの後行きたいところがありまして…」

「行きたいとこ…?」

そう言って、キョーコが手に持っているタッパーを見つめる。

「もしかして、男のとこ?それ、一人分じゃないよね?」

「え…あ…」

「彼氏?」

「ち、違います!!か、彼氏なんているわけないじゃないですか!!私、ラブミー部ですよ!!」

「うん。だよね?だからさ、俺が協力してあげるよ。そのラブミー部の卒業…」

「へ?!」

そう言って、柳がキョーコの細い腕を引き寄せた。

「きゃっ!」

「こんな素敵な料理を俺のためだけに作ってくれたのに、さっさと帰ろうとするなんて…ね?もしかして計算?」

「は?!ちょ、何わけわかんないこと言ってるんですか?!離してください!!」

「ん。やだ。だって京子ちゃん良い匂いするし、こうやってると落ち着くんだもん。」

今キョーコは胡座をかいた柳の足の上にひっくり返されて中途半端なお姫様抱っこのような状態だ。
「ほ、本当に離してください!!柳さん!!ふざけるのはこのくらいに…」

「京子ちゃんも迂闊だよね?男の家に上がり込んでホイホイ料理を作りに行くなんて…。男なんて皆狼だって知らないの?」

「し、知りません!!とにかく離してください!!」

キョーコは段々と嫌悪感と恐怖に襲われ始めた。

「ふーん?敦賀くんは君に興味がないかもしれないけど、俺はあるからね。知らないなら教えてあげるよ。男がどんなものか…」

そう言って、そのまま唇を重ねられた。

「?!?!?!」

驚いて目を見開くと、舌を捻じ込まれいつかのバレンタインデーを思い起こさせられた。

ーーー気持ち悪い!!!!

そう思ったキョーコは渾身の力を振り絞って柳を突き飛ばすと、そのままカバンだけ持って外に飛び出した。

「ちょ…京子ちゃん!!」


逃げるように無我夢中で走り、辿り着いたのは蓮のマンションだった。ポロポロと涙が零れる。カタカタと身体が震える。
無意識に足がこちらに向いていた。
唇をゴシゴシと拭っても消えてくれない感触にキョーコの目からは益々涙が零れて来た。

どのくらいその場所にいたのかわからない。辺りが真っ暗で沈みかえってくると、キョーコは諦めて帰ろうと思い直し立ち上がった。

「最上さん?」

立ち去ろうとしたところで、不意に背後から呼び掛けられ、キョーコの目から涙がこぼれた。

「最上さん?こんな夜中にどうし…」

蓮は近寄ると、キョーコが涙を流して泣いているのを見つけて驚いた。

「ど、どうしたの?何かあった?」

突然の涙にオロオロと狼狽える蓮の胸に、キョーコは自分から抱きついた。

「も…がみ…さ…」

そう言って抱き締め返そうとしたところで、ここが外だということを思い出した蓮はそっとキョーコの頭を撫でた。

「とりあえず、中に入ろう?」

優しい声にコクンと頷いたキョーコの手を引いて、蓮はエレベーターに促す。

最上階について、自分の部屋の扉を開けて促すと、キョーコは少しだけ躊躇しているようだったが、やがて意を決したように部屋に足を踏み入れた。
落ち着くようにソファに座らせたキョーコのために香りのいいコーヒーにミルクを注いで運んだ。

「どうぞ。」

「ありがとう…ございます。」

そう言って、コーヒーに口をつけて少し飲むと、キョーコはカップをテーブルのソーサーに戻した。

「どうしたの?何があった?」

キョーコの前に跪いて問いかけるも、キョーコは話す気分ではないのか俯いたまま、まだ目にいっぱい涙を溜めていた。

蓮はキョーコがマンションの外で抱きついてきたのを思い出し、少し考えたのち、そっと両手を広げた。

「おいで。」

キョーコは少し戸惑いを見せつつも、それでも誘惑に勝てなかったのか、蓮の首に飛びつくと、わっ。と泣き始めた。

蓮はヨシヨシと優しくキョーコの頭を撫でると、足の上にキョーコが辛いくないように座らせた。

わんわん泣くキョーコに何も聞かず、蓮はただただキョーコを抱き締めていた。

暫くするとキョーコが落ち着いたのか、泣き声が収まりしゃっくりが響き始めた。

「何があったかは…話したくない?」

キョーコが小さく頷くと、蓮はそっかと言いながら優しく頭を撫でた。
そんな蓮に安心してキョーコは身を任せる。

「何があったかはわからないけど、俺は君の味方だからね?」

「ふぇ…ひっく、敦賀さ…」

「大丈夫。俺がついてるから…」

キョーコはギュッと蓮にしがみついた。どんどん強くなるキョーコのしがみつく力に、蓮はキョーコの背中を撫でながら問い掛けた。

「何か、俺にして欲しいことがある?」

キョーコの肩がビクッと震えた。

「何でも言って?俺に出来ることならなんでもする。勿論出来ないことならキッパリ断るよ。だから大丈夫。安心して言ってみて?」

キョーコは蓮にしがみついたまま暫く沈黙を続けていたが、やがて蓮から少しだけ身体を離して、小さな声でいった。

「…ス……い…」

「え…?」

蓮が聞き取れずに、キョーコの顔を覗き込むと、キョーコが赤く腫れ上がった目で蓮を見つめた。

「キス…してください。」

揺れる瞳と言われた言葉に、蓮は目を見開いた。
返事に困ってよくみるとキョーコの唇はゴシゴシと擦ったように赤くなっていた。

「…………。」

蓮は無言でそのキョーコの唇を指で撫でた。

「本当に…いいんだね?」

キョーコはコクンと頷いた。

「キスだけじゃ済まなくなるかもよ?」

「いい…です。」

そう言って目を瞑るキョーコに、蓮は苛立ちを覚えた。

「誰…?」

「…え?」

「君を泣かせたのは誰?」

「あ…」

カタカタと震え出したキョーコを蓮はギュッと抱き締める。

「教えて…。何でそんなことになったんだ?!」

その言葉で蓮は全てを悟ったのだとキョーコは感じ取った。

「……ラブミー部…に、依頼されて…」

「何を?」

「食事…を…」

「何で…何で断らなかった?!」

「敦賀さんに作ってるから…」

「君は…男がわかってない!!何でそんな危険な場所にノコノコと行くんだ!!そして今日も…そんな涙を抑えられないほど怖い目にあったのに、男の元に来るなんて…!!」

「だって…」

「君が俺の家に来て、怖い思いしなかったのは、俺が必死で自分の理性が暴走しないように抑えていたからだ!!」

「え…?」

「いつも思ってた。君を抱き締めてキスして…君を手にいれたいって…!!でも、君の心の傷がまだ癒えてないのを知ってたから!!」

「敦賀…さん?」

「女の子と二人っきりで自分の部屋にいて、どうにかしたいと思わない男がいたとしたらその方がどうかしてる!!でも俺は、君に嫌われたくないから、君に頼られるのが嬉しいから、ずっとずっと耐えてたんだ…!!それなのに…」

蓮はギュッとキョーコを抱き締めた。

「俺の家で平気だからって、別の男の部屋に行って、襲われそうになっただって?!君は馬鹿か!!!!」

「なっ?!馬鹿って…!!そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!!誰も好き好んで私みたいな素うどん相手にしないって…」

「君は自分のことを過小評価し過ぎだ!!こんなことになっても自分の魅力に気付かない大馬鹿者なのか?!」

「だって…あれは何かの間違いで…っ」

「間違い?!間違いなはずないだろ?!男が部屋でご飯を作ってくれなんて…口実に過ぎない!!それとも椹さん経由で依頼されたのか?!」

「ち…がい…ます…けど…」

「君はもっと人を疑って警戒心を持つべきだ!!」

キョーコはぐっと黙り込んだ。自分の警戒心のなさが今回の事件の発端になったということが明らかだから反論の余地がない。

「俺だって、君を抱き締めてキスして、めちゃくちゃにしたいって思ってる男の一人なんだ!!」

「え?!」

「そんな男の前にノコノコ現れて、挙句…キスして欲しい?俺は一体君の何なんだ?!」

「…あ…ぅ…」

「その男のキスを忘れるために上書きするだけの男?俺がキスしたら君はその男を忘れられたと満足して何事もなかったようにさっさと帰るのか?!」

「……………。」

キョーコは何も答えられなかった。
キスしてもらった後のことまでは考えてなかったのだ。

「そんな君に、キスしてそれだけで済むとでも?!」

「…敦賀さん…なら…」

「俺なら…何?」

「助けて…くれるって思ったんです。」

「…………。」

「それに、敦賀さんになら私…何されても…」

蓮の目がギラッと光った。
キョーコを射抜き熱い視線で蓮が見つめる。

「へぇ…そう?俺には何されてもいいんだ…?」

「…あ…の…」

どんっ!蓮がいささか乱暴にキョーコを床に押し倒した。

「何…してもいいんだ?」

そういいながら蓮がのそりとキョーコの身体にのしかかる。
キョーコの心臓がバコバコと煩く騒ぎ始めた。
ザワザワと身体中をわけのわからないものが駆け巡る。

「あ…」

蓮の顔がキョーコの首筋に埋まった。

「いっ…」

強く吸い付かれて、キョーコは思わず顔を顰めた。

キョーコの耳元で蓮が呟く。

「俺が安全な男だと思ってここに来たんなら今すぐ逃げて…。」

蓮はキョーコのラブミーつなぎのチャックに手をかけた。
ゆっくりと下ろされるチャックに気付きながらも、キョーコはビクとも出来なかった。

半分ほどチャックを下ろした所で、蓮は唇を噛みしめると、ドンっとキョーコの頭がある場所のすぐ側の床に拳を叩きつけた。
ビクッとキョーコの肩が飛び上がる。

「何で…逃げない…っ!!」

悔しそうにそう言った蓮が、キョーコの身体を抱き締めた。

「敦賀さん…。」

「本当に…するよ?」

行動とは裏腹の優しく甘い声がキョーコの耳に届く。キョーコは何も答えなかった。

「俺はっ!!君にとって安全な男に見える振りをしてるだけだ!!本当は他の誰よりも君にとって危険な存在なんだ…」

蓮は懺悔をするかのように悔しそうに言った。

「こんな嫉妬でドロドロした感情の時に君に触れたくない。キスも…君には悪いけど、出来ない!!何で俺の所に来た?何で…俺なんだ?!君の気持ちが知りたい…!!」

キョーコは胸が締め付けられた。自分のせいで蓮が苦しんでいるのがわかったからだ。
抱き締められて、体全体を使ってキョーコへの想いを伝えて来る蓮に、キョーコは胸がいっぱいになった。

そしてキョーコは漸く気付いた。
いや、とっくに気付いていたのに、気付かないふりをしていただけだと言うこともわかっているのだが、突然理解できたのだ。

自分がここに来た意味も、蓮にキスして欲しいと言った理由も、全部自分の内側に持っていた。
常に蓮のことを考えていた。あの男の家で料理を作りながらも、蓮は絶対ご飯食べてないはずだとか、どんな料理なら喜んでくれるかとか、どんな顔して食べてくれるかとか、思い浮かべるのは全部蓮の顔ばかりだった。

あの料理も、あの男に食べさせたいものではなく、蓮のために作ったものなのだ。それをお裾分けしたような気分だった。

キョーコは蓮の胸もとを握る手にギュッと力を込めた。
そして、蓮の腕から逃れるようにそっと身体を離した。
蓮もそんなキョーコの動きに従い、そっと腕の拘束を解いて、力ない目でキョーコを見つめた。

キョーコはこう垂れた蓮の前に正座をすると、そんな蓮をおずおずと見上げて、唇を噛みしめ、覚悟を決めた目で蓮を見上げた。

「好きです!」

「…………え?」

蓮は不意を突かれた顔をして、キョーコを見つめた。

「敦賀さんが、好きです!!」

とても愛の告白をしているようには見えないキョーコの顔と言葉のギャップに、蓮は今言われた言葉の意味が中々頭に入ってこなかった。

言い終えたキョーコは真っ赤な顔して俯いてしまったので、赤くなった耳だけが蓮の視界に入るようになって、その時漸く言葉の意味が飲み込めた。

「え…?本当…に?」

「はい。本当です…!」

「俺のことが…好き?先輩としてだけじゃなく?」

「先輩としても好きですけど、男の人としても…その…好き、です…。」

両手の拳をギュウッと握りしめておずおずと答えたキョーコに、蓮は顔を崩した。

一瞬にして柔らかくなった雰囲気を感じ取ったキョーコが顔をあげると、そこには顔を真っ赤にして嬉しそうに照れている蓮がいてーー。

「「あ…」」

何だか、互いに恥ずかしくなって慌てて顔を逸らしていた。


暫く沈黙が続いたのち、ふぅー。と蓮が息を吐き出して口を開いた。

「最上キョーコさん。」

「はい!!」

キョーコがピシリと正座をして背筋を伸ばして蓮を見ると、蓮も正座をしてキョーコを見つめていた。
ドキドキと妙な緊張感を感じながら、キョーコも蓮を見つめ返す。

「君が好きだよ。」

ふわりと微笑みながら言われた言葉が照れ臭くて、でも嬉しくて口元が緩む。

「はい。…はい!私も…好きです。」

今度ははっきりと笑顔で蓮に返事を返すことが出来た。

「じゃあ…」

蓮はそう言って、キョーコをチラリと伺うように見つめた。
キョーコはその視線を受けてそっと恥じらいながらも目を閉じて、少しだけ上を向いた。
蓮の気配がそっと近付き、漸く唇に待ち望んでいた感触が与えられた。

蕩けるようなキスを受けて、そっと目を開けると、蓮から真剣な目で覗き込まれていた。

「もちろん、そいつにも一回しかされてないんだよね?」

「も、勿論です!!」

「じゃあ、今のは役者の法則。次のが、ファーストキスだよ?いいね?」

「っ!!はい!!」

そろりと愛おしそうに唇をなぞられて、再びキスをされた。

優しく啄ばむように、そして徐々に深くなるキスに溺れそうになりながら、キョーコは蓮とのキスに酔いしれたのだった。


END


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何と無く…蓮以外からお食事依頼されたらどうなるんだろ?と思ったら出来上がったお話でした。

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