えー。期待されてる皆さん、申し訳ありません!!

最初に断っておきますが、この番外編には蓮もキョーコも出て来ません!!

そして事もあろうに、メインはヤツです!!!!

何故久しぶりの恋の季節は の更新なのに、ヤツがメインなの~!!と思われるかもしれませんが、浮かんでしまったのです。

しかも、時間軸が一年ちょっと進んでおります!!
二年生になった秋のヤツのお話です!!

ここに行き着くまでにまだまだ時間がかかりそうだったので、番外編にして出しちゃえ!と思って書いちゃいました。
そして、一人か二人はいるかもしれないヤツが好きだと言う皆様、コテンパンにしちゃってすみません!!

それでもいいよーって方はどうぞ心ゆくまでお楽しみください☆


*****


恋の季節は 番外編1
ーーー今までの暑さが嘘のように急激に冷えるでしょう


「え?!彼氏が出来た?!」

「そうなのよ~。ごめんねショー。そう言うことだから、連絡はこれからは控えて欲しいの。」

松太郎は電話で祥子から告げられた言葉に、軽いショックを受けた。
今年の春、大学生になった祥子は大学で高校の時に片思いをしていた二つ上の先輩と大学で再会したのだと言う。
相手も自分に気があって実は高校の時から両思いだったことを知って、付き合い始めたというのだ。

別に祥子のことは本気だったわけではないが、胸もあって色気もある祥子は松太郎の相手をしてきた女の中でも上玉の女だった。

松太郎はつまんねぇとばかりに電話を切ると、険しい顔をして黙り込んだ。
何だか最近、薄々とだが周りの様子が変わってきたように思うのだ。

高校2年になり、新しいクラスと新しい取り巻きに囲まれていたが、春先ぐらいから妙な噂が広がり始めた。

その噂というのは、幼馴染のキョーコが校内一ピーとか言われている敦賀蓮と付き合っているというものだった。
キョーコがそんな男と上手く行くはずないし、結局は自分のところに泣いて戻ってくることになるだろうとタカを括っていた松太郎だったが、いつの間にか校内公認のバカップルとまで噂されるようになっていた。
校舎の裏庭でキスしていただの、休みの日に手を繋いで歩いてるのを目撃しただの、お弁当を食べさせあっていただの、本当だとはとても思えない話ばかりだ。
冗談じゃねぇ!あいつは俺のだ!!と叫びたいが、クールでカッコいい自分のイメージを崩したくなくて、それも出来ずイライラだけが募って行く。
一年の頃は、体育祭で自分を応援せず他の男を必死で応援しているキョーコがただ気に食わなかった。
お姫様抱っこでゴールをする蓮がはまり過ぎててうっかり恰好いいと思いそうになった自分自身へもイラついて、蓮がキョーコにメロメロなのは見ていてわかったが、キョーコは絶対に俺以外に靡くわけがないと思っていたので、ちょっとした優越感に浸かる為に、キョーコにちょっかいをかけたりしていたが、いつの間にかキョーコはそんな俺がいる家を出て行ってしまっていた。
それが面白くなくて不機嫌を募らせていたが、それは周りに微塵も匂わせていないはずだった。手当たり次第に女を抱いて気を紛らわしていたのだが、そんな松太郎の周りにいたはずの取り巻きは、松太郎の気づかぬところでいつの間にか数を減らしていた。

「えー!!本当に?!おめでとう~!!」

前の席でキャイキャイとはしゃいでいるのは春先に自分へ告白してきた女達だ。
適当に相手して遊んでいた女だが、そういえば最近話しかけてこなくなったよなと思って気になったので、一応声をかけて見た。
自分から声かけたら喜んでキャーキャー煩くなるだろうなと想像しながら声かけたのだが、反応は想像していたものとは違い、普通すぎて拍子抜けしたほどだ。

「んな騒いで、どうしたんだよ?」

「あ、ショー!聞いてよ~!この子彼氏が出来たんだって~。」

「ちょっと!綾子!!勝手にバラさないでよぉー!!」

「いーじゃんいーじゃん!!恋ってやっぱりいいよねぇ~!!」

「は?!お前、彼氏出来たの?」

「そーなのよ!!いいよね~!!」

「も~!!綾子!!あんたこそ、バイト先の先輩とどうなったのよ~!!」

「な、なななな!!ま、まだ!!まだどうにもなってないわよ!!」

「まだぁ?!ってことは…いいところまで行ってるんだ?!」

「ちちち違っ!!」

「綾子ったら真っ赤になっちゃって可愛い~!!」

「も~!今は朋子の話してるんでしょー!!」

勝手に目の前で他の男の話題で盛り上がり始めた女達が気に食わない。

イライラしながら聞いていると朋子の相手が明らかになった。

「ウチのクラスで初カップルじゃない?!かっこ良くて密かに人気あるもんね~田淵君!!」

「ちょっ!ちょっと綾子ぉ!!」

「え?!嘘!!本当に?!田淵君?!」

いつの間にかクラスの他の女達も会話に加わっていた。
皆にバレて、バカバカァとか言いながら全然嫌がっていない朋子が照れながら惚気ている。

「は?田淵ぃ~?」

松太郎はあんぐりと開いた口が塞がらない。
田淵は小学生の頃、松太郎がパシリにして使っていた男だったのだ。

「はっ。あんな奴の何処がいいんだよ。」

自分のものを取られた気分になった松太郎は、面白くなくてボソリと吐き捨てるように言ったのだが、その言葉に今の今までキャイキャイ楽しそうにはしゃいでいた女達の目がシラけたものに変わる。

「ちょっと、ショー!人の彼氏捕まえてそれはないんじゃない?」

「そーよ。何?自分が一番カッコいいとか思ってんの?ダッサ…」

「いるよねー。ナルシストっていうの?サムイよね~。」

「サイテー。」

「なっ?!」

ーーーお前ら数ヶ月前まで俺にメロメロだっただろうが!!!!!

心の中で盛大に噛み付くも、それをぐっと抑え、怒りに震える拳を握り締める。

そういえば、最近弁当を作って来る女達がいなくなったということにここへ来て漸く気づいた。

一学期の終わりの期末テスト後くらいからなくなっていたのだ。

二学期に入ってからは一度も弁当を食べていない。

ーーーんだよ!皆、俺様の虜じゃなかったのかよ!!掌返しやがって!!

ムッとしている内に、授業の開始を知らせるチャイムが鳴り、言われっぱなしで終わってしまった。

むしゃくしゃしていた松太郎は、帰りにポチリこと、美森に声を掛けた。そこそこ可愛くて松太郎が世界の中心だとでもいうように自分にベタ惚れなこの女は使い勝手がいいし、扱いやすい。

「おい、ポチリ。帰り付き合えよ。」

「あ…、ゴメンね?ショーちゃん…美森この後予定があって…」

申し訳なさそうにもごもごというその姿は何処か幼馴染と陰が重なる。

「そーかよ。」

なら、しょーがねぇか…。と言った松太郎だったが、内心面白くない。

ゴメンね。と言いながら、慌ただしく教室を後にする美森に見向きもせずに、帰り支度を始めると、後ろの席の女の子達がひそひそ話を始めた。

「やっぱりさ、あの噂本当なんじゃない?」

「あれでしょ?七倉さんと五十嵐先輩…。」

「そうそう!最近いい感じなんだって!!」

「いーよね~!七倉さん!!羨ましい~!!」

松太郎は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
絶対に裏切らないと忠誠を誓われていた下僕から裏切られた気分だ。

「嘘…だろ…。んなはずねぇ~。ただの噂だ…。」

呆然とそんなことを呟いて、帰路についた松太郎は決定的な場面を目撃してしまう。

「待たせてゴメンね。美森ちゃん。」

「あ!五十嵐先輩!美森、全然待ってないよ!!」

「そんなこと言って、ちょっと鼻が赤いよ?もう秋だからね。風が冷たくて寒かっただろう?教室で待っててくれたら迎えに行ったのに…。」

「えへへ。美森、秋の風ってなんだか好きだから平気なの!」

「そっか。でも、手も冷えてるよ。」

「あっう…」

突然手を握られて、真っ赤になった美森を見て、五十嵐がクスリと笑みを漏らす。

「手…繋いで帰ろっか?」

顔を覗き込み、ふわりと笑う五十嵐に、美森ははずかしそうに頬を染めてコクんと頷いたのだった。

その一部始終を見てしまった松太郎はその場に呆然と佇んで暫く動くことなど出来なかった。
秋の風がざわり松太郎の髪を撫ぜ、吹き抜ける。
幼馴染を皮切りに、どんどんと自分を取り巻いていた女達が遠ざかって行く…。
絶対にこいつは俺から離れられないだろうと思い込んでいた美森にまで男が出来て、心にぽっかりと穴が空いたようなそんな気分になりながら、松太郎はフラフラと帰路につくのだった。



END


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