突然ですが、皆さんにとって「自分へのご褒美」って何ですか?
スタバのコーヒー?一粒のチョコレート?それとも、週末の一人旅?
最近の自立した女性は、誰かに依存するのではなく、自分で自分を幸せにするチカラを持っています。たとえ落ち込むようなことがあっても、自分をうまくなだめ、上手に励ましながら、たくましく立ち直っていく方法をいくつも知っていること。ご褒美上手な女性が増えたのも、そうした経緯からでしょうか。かく言う私も、自他共に認める「ご褒美主義者」の一人です(笑)。電池が切れかかってきたなぁと思うと、「ご褒美の前借り」をして自分をなだめ、すかし、思いっきり甘やかすタイプ(笑)。

次屋妙子のサプライズ☆ラボそんな私のご褒美の定番と言えば、やっぱり「映画」。20代の頃から年間100本を目標に映画館へと足を運び続けていますが、週末ともなれば、ビデオ鑑賞(今はDVD)のハシゴをすることが何よりの楽しみです。さすがに最近は忙しいので、なかなか年間100本とまではいきませんが、それでも朝イチで映画館に足を運ぶのは何よりのストレス解消ですし、私にとって最高のご褒美です。
そんな映画好きを自称する私には、映画を観るための「三大美学」があります。
その一、映画は「平日の朝イチの回で」観るべし。
その二、映画は「一人で」観るべし。
その三、映画は「最後列で」観るべし。


これは、あくまでも個人的な見解ですので、読者の皆様に押しつけるつもりはありませんが(笑)、学生時代から映画を観る時は、この三大美学に則ってシネマライフを楽しんで来ました。大人になった「今」でも、ちっとも変わりませんけどね(笑)。
最近観に行った映画の中で特に感動したのは、「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」でしょうか。言わずと知れた、ノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチーさんの激動の半生を描いた作品。約15年もの間、自宅での軟禁生活を余儀なくされながらも、決して権力に屈することなく、最後まで祖国のために、気高い信念に生き抜いた孤高の女性の物語です。未だかつて、これほどまでに「凜」という言葉が似合う女性がいたでしょうか。私は場内が明るくなってからも、しばらくの間、シートから立ち上がることができませんでした。こんな風に魂を揺さぶられたのは久しぶりです。人生観を根こそぎひっくり返されたと言っても、決して過言ではありませんでした。

次屋妙子のサプライズ☆ラボアウンサンスーチーさんは、どんな絶望下にあっても終ぞ品格を失うことのなかった、佇まいの美しい女性です。そう考えると人間の真価とは、逆境の中でこそ問われ、試され、量られるものなのかも知れません。髪に花を飾り、ガンジーの言葉を書き出し、時にピアノを奏でる姿は優雅でさえあり、この人が囚われの身だったということをふと忘れかけそうになることも一度や二度ではありませんでした。敵の兵士でさえ、彼女の人間力に心を開くシーンがあり、思わず胸が熱くなりました。
「逆境の中での品格」――祖国のためとは言え、母として妻として、家族を犠牲にしてまで、あのような選択をでき得るものなのでしょうか。覚悟と使命感、そして勇気と信念が彼女をアウンサンスーチーたらしめたのだと思います。私心を一切捨て去り、正義と信念を貫き通したスーチーさんの半生は、かの人権の闘士ネルソン・マンデラ氏を彷彿とさせます。まるで、女性版マンデラ。スーチーさんを讃えるのに、これ以上うってつけの表現を見つけることができません。

更に特筆すべきは、主演のミシェル・ヨーの存在です。脚本を手にしたミシェルは、「この役だけはやらないわけにはいかない」と一大決心。(ここでも一人の女優の覚悟と使命感が新しい時代の扉を開けました)。この作品は、ミシェルが友人でもある監督のリュック・ベッソンに相談を持ちかけ、映画化に至ったと伝えられています。容姿が酷似しているのはもちろんのこと、ミシェルがアウンサンスーチーの魂までをも表現し得た背景には、アウンサンスーチーへの並々ならない深い敬意と愛情があったればこそ。パンフレットにも非常に興味深いエピソードが紹介されています。いくつかご紹介すると――ミシェルはアウンサンスーチーを演じるにあたり、まずスーチー女史の愛読書や彼女の著書を読破することから始め、極めて難しい言語とされるビルマ語を半年間でマスター。更には、200時間にも及ぶスーチーさんの映像を入手し、微妙なしぐさや訛までも習得。そして映画に描かれている10年以上の間に少しずつ変化したスーチーさんの人への話し方や態度までも理解し、役に臨んだと言われています。
また、映画関係者の中で、撮影前にスーチーさんご本人と面会が許されたのは(政府から許可が降りたのは)ミシェルだけだったそう。この奇跡が後に、どれほど大きな意味を持っていたかは映画を観れば一目瞭然です。ミシェルの想像を絶するような努力と、桁違いなプロ意識が、この映画を歴史に残る名画へと昇華させたのだと思いました。まるでドキュメンタリー映画と見まがう程に、リアルで繊細で圧倒的な映像美に彩られた秀作。一人でも多くの女性に観てほしいと心から願ってやみません。

私は弱虫だから、ちょっとしたことで凹んでみたり、涙を流してしまうこともありますが、この映画を観て、アウンサンスーチーさんのような心の強い大人の女性になりたいと、そう思いました。どんな逆境にあっても、彼女のように毅然と、そして「凜」として生きて行けたら、どんなに素晴らしいことでしょう!そして何より今、アウンサンスーチーさんと同じ時代を生きていることを心から誇りに思います。今回のように、今までにも数々の映画に鼓舞され、触発を受け、多くの学びを得て来ることができました。たとえば「ショーシャンクの空に」や「潜水服は蝶の夢を見る」「ホセ・リサール」「ミツバチのささやき」など、大好きな映画を挙げればキリがありません。何歳になっても、映画は私の「学校」です。