希望のブログ 上越新幹線の新潟空港乗り入れ

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東京一極集中の緩和、地方の活性化、新潟の人口減少抑制、経済活性化、国土強靭化のため、上越新幹線の新潟空港乗り入れを考える。人口、経済、GDP、保健福祉、政務活動費、議会活動などにも関心を持っています。専門統計調査士。

「基幹業務システム標準化 自治体1割間に合わず」と題した地元紙の新潟日報の今年3月6日朝刊の記事。新潟日報だけに限らず、新聞各紙が報じていることと思います。

これは、市町村の基幹業務に使う情報システムを、国が示したシステムの標準仕様へ移行することについて、国が示した令和7年度末の期限までに移行が間に合わない自治体があるという内容の記事です。

3月5日公表のデジタル庁からのお知らせ

記事の資料元は、デジタル庁が今年3月5日に公表した「移行困難システムの把握に関する調査における調査結果の概要(令和5年10月調査時点)」。
国のホームページで確認できます。

システム標準化の対象は、住民基本台帳、国民健康保険、介護福祉、児童・子育て支援等の関連業務の20項目で、基本的な事務処理に使う情報システムを国の基準に統一、標準化するもので、コスト削減や効率化が目的。
各自治体でそれぞれシステムを構築するより、自治体で仕様が異なるよりは、全国で標準化されたほうが、財政的にも、住民や職員の手間が少なくなることにもメリットはあると思います。
 
 さて、新潟県は、毎年3月に「新潟県人口移動調査結果報告」を公表し、市区町村ごとに理由別の転入出数などを公表しており、県内外自治体の人口分析の基礎資料として活かされてきました。

しかし、この基幹業務システムの標準化により、新潟県がこれまで公表してきた転入出の移動理由が、今後収集できなくなり、公表もできなくなると、新潟県と新潟市の各担当課から電話で短く説明を聞いて確認しました。

さて、理由別の転入出数が分からなくなるのに、今後正しい人口減少対策が立てられるのかという内容の一般質問が、新潟県議会と新潟市議会で行われたので、その質疑の概要を以下に掲載します。
 
 
●新潟県議会の令和6年2月定例会が、2月19日から3月22日までの日程で開催されました。

2月28日の本会議の一般質問で、中川隆一議員(自由民主党)は、次の4項目について質問しました。
1 地震災害対策について
2 交通政策について
3 「佐渡島の金山」の世界遺産登録について
4 県政の諸課題について

県政の諸課題の中で、中川議員は次のように述べました。
新潟県議会で質問する中川隆一議員

------中川議員の発言------
本県は新潟県人口移動調査として、推計人口及び人口移動の状況を、国勢調査の確定値をもとに、出生、死亡、転入、転出数を加減し、各市町村の人口と世帯数を毎月推計し、新潟県推計人口として毎月公開し、年報として新潟県の人口移動を公開しています。
新潟県人口移動調査報告は、総務省が公表している住民基本台帳人口移動報告とは異なり、移動理由が分かる点が最大の特徴で、最も重要であり、人口減少対策など、行政施策立案の基礎資料となっています。

総務省では現在、令和7年度までに自治体情報システムの標準化、共通化を目指しています。
情報システムの標準化の対象範囲は、児童手当、子ども子育て支援、住民基本台帳、戸籍の附票、印鑑登録等20業務に及び、行政のデジタル化は全国の市区町村のシステム化による行政運営の効率化、住民サービス、住民の利便性の向上、システム間の互換性確保、コスト削減等メリットが考えられます。

しかし、住民基本台帳関連業務の標準化、共通化によって、これまで県で独自に調査していた移動理由の項目が標準化の対象にならず、人口移動の理由が入力できなくなります。

移動理由のない共通化ではなく、本県のような移動理由項目を追加して全国共通化することで、今までサンプル調査を行っていた自治体の経費削減にもつながるとともに、全国規模で移動理由が分かれば、国や地方自治体にとって、人口減少の分析や人口減少対策の立案に役立つ等メリットが大きいと考えますが、知事の所見を伺います。

また、自治体情報システムの標準化、共通化が施行され、移動理由が入力できなくなった場合、本県だけでもこれまでと同様に移動理由項目を確認するような対応は可能か、国に対して移動理由項目の追加を提言することも検討すべきと考えますが、所見を伺います。

------花角知事の発言------
人口の移動理由に関わる調査について、現在、人口移動理由を調査している県は少ないため、全国共通の調査として移動理由項目を追加する場合、実施していない都道府県においては、市町村の窓口における業務量の増大につながる等、実施にあたっては課題もあると考えます。

一方で、議員ご指摘の通り、仮に移動理由の調査を全国共通化した場合、人口減少の要因分析において他県との比較検討が全国的にも可能となる等、メリットが大きいと考えます。
 
 
●新潟市議会の令和6年2月定例会が、2月21日から3月27日までの日程で開催されています。

3月11日の本会議の一般質問で、高橋聡子議員(ともに躍動する新潟)は、次の3項目について質問しました。
1 今回の震災を踏まえての防災・減災対策について
2 物流の2024年問題について
3 人口減少対策の視点からの基幹業務システムの標準化について

3番の基幹業務システムの標準化の質問の中で、高橋議員は次のように述べました。
新潟市議会で質問する高橋聡子議員

------高橋議員の発言------
国は行政手続のオンライン化とともに、地方公共団体の基幹業務システムの統一、標準化の取り組みを進めています。
これは住民基本台帳や税、国保、児童手当等、国民生活に直接関係するシステムのことで、標準化の対象として国は20業務を挙げています。

標準化により、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供できることを期待していますが、全国1700にも及ぶ自治体の各システムの移行は非常に壮大なスケールだと感じます。
国が目指す移行スケジュールが来年度まで残り1年となることから、本市のスケジュールの現状、標準化のメリット、デメリットについて伺います。

------小俣総務部長の発言------
地方公共団体の情報システムの個別開発による人的、財政的負担を軽減し、地域の実情に則した住民サービスの向上に注力できることを目指し、全国の自治体は基幹業務システムを令和7年度末までに標準準拠システムへ移行することになっています。
本市では、本年1月に対象業務で初めての住民記録システムの標準準拠システム移行を行い、他の業務システムも順次移行を進めていますが、現行システムの契約期間がシステム毎に異なることや、指定都市ならではのシステム要件等の課題を抱えており、いくつかのシステムは7年度末までの移行は困難であり、他の政令市と同様、国との調整を実施しています。

標準化のメリットは、人的、財政的負担の軽減と、全国一律の新たなサービスの迅速な展開が可能となることが期待できます。
一方、標準準拠システムにはない本市独自の機能をどのように実現させるかの検討や、法令で対象の20業務以外の業務システムと標準化された基幹業務システムとの連携で改修が必要な場合がある等の課題があります。

------高橋議員の発言------
国が進める業務なので、効果を最大限に活用しながら、デメリットをできるだけ小さくしていくことが必要と思います。
標準化によって、今年1月から住民基本台帳関連業務で、本市では今まで転入、転出の際に、職業、住宅、学業、家族、戸籍等、移動理由を項目毎に記載していましたが、移動理由のデータが標準化により得られなくなりました。

人口減少が本市の最大課題とされている中、人口移動の理由を把握できないことは、標準化のデメリットと考えますが、この点について再質問します。

------小俣総務部長の発言------
今までの住宅記録システムとは別に、現在の標準移行されたシステムでは、移動理由を取ることはできなくなります。
これは全国一律に行われることで、どのような影響があるか各部局の中で検討していきます。

------高橋議員の発言------
標準化によってカスタマイズできなくなるデメリットを踏まえた本市の対応についてお聞きします。

------小俣総務部長の発言------
標準化後の基幹業務システムでは、国の標準仕様にはない自治体独自の機能をシステムに直接盛り込むことはできませんが、独自の機能を別に構築し、その機能を標準化後のシステムと連携されることは許されています。
システム連携の活用や運用上の工夫を行うことにより、基幹業務システムの標準化による市民サービスの低下を招かないよう努めます。

------高橋議員の発言------
標準化システムに当てはまらないものでも、必要があれば、本市の情報として継続できる手段があることが分かりました。
これから標準化基幹業務システムの移行が進められますが、効率化だけでなく、本市独自の取り組みで施策に活かすことのできるデータはなくすのではなく、残すことを検討してもらいたいと思います。

次に、今回の住民基本台帳関連システムでは、機能を付加しない方針で始まっており、人口減少という最重要課題について、実態を把握する必要性を考えると、本市ではこれまで転入出の移動理由のデータをもとに、年代別、県内外、移動理由別等のデータから、若い女性が職業を理由に首都圏への移動が多い等の分析を行ってきました。

人口減少対策は最重要課題であり、あらゆる分野、角度から分析を行い、施策に活かしていくためにも、引き続き移動理由についてデータを得ることが必要と考えます。
正しい数字を押さえることができなければ、正しい対策を打つこともできません。

人口の移動状況についてのサンプル調査の必要性について見解を伺います。

------日根政策企画部長の発言------
本市はこれまで就職のタイミングで県外へ多く転出している現状を踏まえ、職業を理由とした県外との転入出数に注目して数値を把握してきました。

今後、システムの標準化により、住民移動届による移動理由の把握はできなくなりますが、東京圏を中心とした転出超過の傾向は大きく変わらないと想定されるため、男女別、年齢階層別等の得られるデータをもとに、引き続き本市の暮らしやすさを一層高め、若者から選ばれる取り組みを進めていきます。

人口移動の傾向が以前と大きく変わる場合には、社会状況の変化を捉えて、新たな調査を行うことも検討していきます。
 
 
以上、新潟県議会と新潟市議会での一般質問の概要を掲載しました。

このような文章を作成していた今日3月18日に、新潟県は「令和5年新潟県人口移動調査結果報告」を公表しました。



昨年までこの調査結果報告のホームページでは、「県外移動の状況」に続いて、「職業による県外移動」と「学業による県外移動」について解説していましたが、今年はなくなり、「県外移動の状況」の次には、概要や統計表が続く内容となっていました。
人口の移動理由が来年度の報告からなくなることを意識しての対応ではないかと思っています。

昨年の解説には、県外移動の状況の次に職業、学業による県外移動の解説がありましたが、今回の3月18日公表分からその解説が消えてしまいました。

新潟県も移動理由をなくしたいと思っているはずはなく、国の方針に逆らえずに、やむなく移動理由を諦めたのではないかと思います。

長い歴史のある新潟県の移動理由の統計ですから、特に県の統計所管課としては残念だったのではないかと推測しています。

国が標準化する項目に、移動理由の選択を加えれば済む話だと思うのですが、国の検討委員会に、住民基本台帳や税、国民健康保険、システム構築の専門家がいても、統計の専門家がいなかったからこういう単なる標準化につながったのだと思います。

もし、人口統計の専門家が入っていれば、特に総務省統計局の関与がもっとあったなら、移動理由を全国で把握できる標準システムができていたかもしれません。