マインド・イーター完全版(創元新社) | A300yamadaのブログ

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現在、踊り子さんの世界に特化しつつあります。

作者、水見 稜は私の学部の後輩だそうである。優秀な後輩だ。今は編集者として生活しているらしい。
SFファンの知り合いから教えられて買ったが、80年代から早川から出ていたものを再編集した作品を追加したのだそうである。このような形で再リリースした必然性はよくわからないが、読んで、時代性のずれはほとんど感じなかった。米ソの対立が自然に描かれたり、今だったら、携帯電話が当たり前なのに、という違いだろうが、それを感じないのは、前編を流れる緊迫感のせいではないだろうか。
正直、私の読解力で、マインドイーターというものの存在の統一性というものは、分からなかった。あるいは科学的な統一性というのだろうか。ただ、怖いもの、という一貫性があるのみだった。それでよければ、十分に高レベルである。最初のインパクトは、ハンター同士の親子であることを、主人公が、変わり果てた姿の父と対面することで知る、第1作である。しかし、そこに感じるのは、父の無念である。マインドである。もしかして、マインドをイートされたことを目の当たりにすることで、逆にその無念を悟るという意味と考えるなら、すごい書き方だな、と思う。それ以外の作品は、そういった無念さのバリエーションだろう。
書けない物を書くことのすごさとしたら、本当に比類なき作品である。
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