ポップスが最高に輝いた夜 

     原題『The Greatest Night in Pop』     

(2024年 米国 NETFLIX)

#少し前の事と思ったら40年前だった

来年の「米国アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞」ノミネート、

行くでしょう!これは!

 

 

We Are The World DVD+CD (30周年記念ステッカー付)

 

♪We Are The World♪

♪We Are The Children♪

 
食べ物がなく餓死していくエチオピアの子供たちを救うために
世界のトップミュージシャンが結集して、
チャリティーソング「We Are The World」を製作・発売して、
食料をアフリカに贈った世界的なチャリティ音楽活動、
グループ名は「USA For Africa」。
 
 
当時の世界のトップミュージシャン45人が集まった奇跡のユニット。
そのメイキング映像と、当時リーダーを務めたライオネル・リッチーさんをはじめ、
歌で参加したシンディーローパーさん、ヒューイルイスさんなどの証言を交えて作られたドキュメンタリ映画。


 

ああ、もう懐かしすぎる。
この曲が発表された当時のことよく覚えています。
 
高校生の時に、期末テストが終わって、その後の授業は予習くらいしかやることがなかったので、
先生が特別授業をやって、この曲の歌詞を配って、みんなで覚えて歌いました。
たしか、12月で年明けの一回目の授業で暗記してるか確認されて、またみんなでうたった覚えがあります。
 
当時のクラスメイトは本当に仲が良くて楽しかった思い出しかないのですが、
(私の高校はイジメとか、他人にイジワルする人がいなかったんです。みんないい人でした)
 
受験や進路に関することはつらい出来事も多くて、
優秀な同級生が大学に行かないことにした!と宣言したり、クラスで一番優秀な子のお父さんが急死して、
(受験勉強やめてバイトしないと…。と大学行けなくなるかもしれない)というので、みんなで「負けるな!」と応援したり。
第一目標の大学に受かった子もいれば落ちた子もいるし、「いいやこの程度の大学で」という子は、私もそうでしたけれども、
推薦入学でさくっと合格して、12月は遊んでたり、バイトしてたり。
 
高校3年の決断が、将来を大きく左右するんだろうなということはなんとなくわかってたので、「もうちょっと上の大学チャレンジしようかな」とほんとは悩んでいたり。
心の浮き沈みはあったけど、クラスメイトたちがすばらしい子たちで、あのクラスの子たちとは一生付き合えます。
 
そう、あの子たちと一緒にウィーアーザーワールドを暗記して、私たち卒業式にも、この曲うたったんです。
 
なんだか、昨日のように覚えているのに、
もう39年前の出来事なんですね。

 

マイケルジャクソンも死んじゃったし、ティナターナーも、レイチャールズも、いない。

 

 

  芸能人の老いをみて自分の老いを知る

 

私は当時から一cmも成長してない気分でいるのですが、
このドキュメンタリーに出てくる人達がみな年をとっているので、衝撃を受けました。
 
最初に出てくるのはライオネル・リッチーさんで
ライオネル・リッチーさんのマネージャー(白人)さんがエチオピアに行って
餓死していく子供の死体をたくさんみて、shockを受けてライオネルリッチーさんに相談したら
「よしやろう!」とプロジェクトを立ち上げてくれたんだそうです。
 
にしてもライオネルリッチーさん、年をとられました。
おじいちゃんなったというより、清川虹子さんみたいな、おばあちゃんになってる!
 
ハートフルなおじさんって、人格の成長とともに母性が成長しておばさんになっていくというか、
武田鉄矢さんも母性が備わったおじさまになってますよね。
あんな感じのおじい様になってました。
 
その他にも私たちの憧れの人が、おじいちゃんおばあちゃんで出演していて、
ということは、認めたくないけれども、私も年をとったんです。
 
 
シンディーローパーさんも、当時はギャル!という感じでしたが、
知性を感じさせるチャーミングな女性になっていて、ああいい年の取り方をしたんだなというのがつたわってくるし、
 
ヒューイルイスはシブカッコいくて、皺の入った顔がセクシーな初老の男性になっていて、
なんてチャーミングな人達なんでしょう。スターだなあ。

 

素敵な年の重ね方をしているアーチストさんたちを見て、

(いや、私も傍目から見たら、意外と悪くないかも)と年をとった自分を再肯定してみたり。
 
還暦の同窓会で40年ぶりに再会した友人たちとの逢瀬のような気分を味わいました。
 

 

  スタジオの入り口に書かれた「エゴは入口に預けてきて」
 

 

この映画で知ったのが、
レコーディングを行った日のスタジオの入口に
「CHECK YOUR EGO At THE DOOR(エゴは入口に預けてきて)」と
ライオネルリッチーがマジックで手書きした紙が、入口に貼ってあったんだそうです。
 
面白いですね。この表現。
 
日頃は自分がピン、ソロで自由にボーカルをとってるアーチストさんなので、
合唱といわれても、個性が出てきてしまいます。
 
でも、ユニゾンはユニゾン! 調和を!で、ダメ出しが出てきます。
 
ソロをきかせる時間はそれぞれ用意してあるので、そこまでは我慢してもらって。
統制大変だったんだろうなあというのが、すぐに見てわかりました。
 
スタジオが狭いので、ミュージシャン以外は立ち入り禁止で、マネージャーや関係者は隣のパーティ会場で待機(待機してた関係者は500人いたそうです)、ミュージシャン46人と録音スタッフと撮影スタッフのみがスタジオに入って、ライトも入ってるし、熱くて、皆さん深夜に(-_-;)汗かいて、「ちょっと臭った」というエピソードも、暴露されてました。
 
 

 

  私ドキュメンタリに出てくる「アメリカンミュージックアワード」見ましたよ
 

 

ミュージシャンズは、それぞれの個性も、キラキラに輝かせて、素敵な歌のリレー、よく短時間でここまで構成したもんだと、世界ツアーからこのレコーディングのためにハリウッドに戻って、体がヘトヘトなミュージシャンもいるし、スタジオの隅で寝てたり、このレコーディングの日は「アメリカンミュージックアワード」の受賞式で、そこからミュージシャンがそのままスタジオに流れこんで、朝までレコーディングという無茶苦茶なスケジューリングだったようです。このドキュメンタリに出てきた「アメリカンミュージックアワード」、私、沖縄の米軍放送(FEN)で観ましたよ。ちょっと画面がチラチラするけど、ビデオに録画して何回も何回も見直した。そうそう、ライオネルリッチーが受賞したんです。
 
あの頃の洋楽は最高に面白かったです。
 
アメリカンミュージックアワードの会場から、A&Mスタジオというチャップリンがご用達だったというスタジオにミュージシャンたちが結集して、「奇跡の夜がはじまる!」的な感じでしたけれども、
 
ミュージシャンも疲れすぎていて、寝不足でなにをやってるか分からなくなってたり、やたらめったらハイテンションの人もいるし、そこからの「ご陽気!」展開は、さすが音楽の神々に選ばれた人達で、ハーモニーもばっちりでした。
 
音楽をやってる人って「ハーモニー」=調和をとれる人達で、
大変な個性集団で基本ワガママな人達なのに、すーっと一つになって結束して、奇跡を生む。
 
これです!これ!
これが音楽!
これがミュージシャン!
 
ワンネス!

 

  未公開映像が豪華、アーチストの意外な素顔を知って何度でも見返したくなる

未公開映像が最高でした。
 
メイキングのお宝映像で、ボブディランが最初は、黒人のトップスターやcountry歌手、ロック歌手に囲まれて、
一緒に歌うことになってるのに、もう固まってて、まわりのミュージシャンズが自由に歌ってるのを聞いて
 
モータウンのスイートなテイストで展開される曲の世界をを全力で吸収してる感じ。
ああ、感覚を最高に研ぎ澄ましてるんだ!とゾクゾクしました。
 
でも、なんというか「脳がバグってるのかな?」というくらい、固まって口元だけ動いて、曲を暗譜してたのか、
もともとソウルフルな曲なので、ボブディランのテイストと全然合わないから。
 
詩人のように詞を詠うボブディランが合唱「ユニゾン」に参加する場面では、個性を排除して小さな声で歌ってる様子でした。
 
彼はソロの場面で、「ソロパートは自由にやっていいよ!」という指定で、
レコーディングの前にどうもうまくいかなくて、ボブディランが「スティーブお願い付き合って!」と
スティービーワンダーにお願いして、スティービーの演奏で、一緒にリハーサル、歌の練習をするのですが、
 
スティービーがボブディランの真似をして一緒に歌をうたい始めるから、
もうボブディランもだんたんノッてきて、歌がふくらみだして「楽しくてしょうがない」状態になっていくんです。
 
さっきまでガチガチに固まっていた、ボブディランが笑った!
歌い終わったら、子供のような顔になって、とろけそうな顔をして、幸せそうに笑ってるんです。
 
あんなボブディラン初めてみた!
すげー‼スティービーワンダー!
 
レイチャールズも休憩時間に、ウィーアーザワールド、レイバージョンをピアノで弾いて遊んでるし、
ああ、すごい、この場所にいたかった!って思いました。
 

 

  モータウン系のミュージシャンのほどんどが教会の聖歌隊出身者と考えるとこの奇跡は必然

 

そして、ライオネルリッチーがすごかった。
 
なにがすごいかというと、「あなたは生徒会長か?」というくらい、
メンバー全員に声をかけまくって、夜通しの作業で疲れているメンバーを慰労しながら、チームを盛り立てていたんです。
感謝の言葉をかけながら、全員のヤル気を引き出し、最高のムードメーカーで、すごいですこの人!
 
ライオネル・リッチーの、肩ポンのコミュニケーション力。
イニシアチブをとって目出とうとはせずに、ひたすら参加者の中に入って、ドリームチームをまとめてる!
優秀なリーダーでした。

 

 

 

黒人歌手は教会の聖歌隊出身者が多くて、ボランティア活動や社会貢献活動の現場に教会の牧師さんとともに参加して、
ボーイスカウトンのように、ボランティアを集めて「善いこと」をずっとやってきた人なんだろうなあという気がしました。

 

モータウンレーベルのコモドアーズ出身のライオネルリッチー。

 

 
後に出てくる黒人シンガーのMCハマーさんも教会の聖歌隊出身の人で、
彼の将来の夢は「ミュージシャンと牧師さん」で両方の夢を実現されましたけれども、
黒人ミュージシャンでトップに出てくる人には、そういう教会活動のリーダー的存在が選ばれることも、少なくないと思います。
 
音楽って調和だから、よいハーモニーが生まれる場所には、いいリーダーがいるんですね。
 
 
ライオネルリッチーが、ギャルキャラで気分屋の若い頃のシンディーローパーが途中バックレそうになるのを、うまくつなぎとめて、結局、彼女朝までコースで参加して、最後はこの曲作りに感激してたし。モータウンの先輩のスモーキーロビンソンも来てるし、先輩も後輩も、白人も黒人も、ジャーニーやcountry歌手まで集まって、すごいよ、これだけよくまとめた。
 
といっても、ライオネルリッチーだけではなくて、クインシージョーンズと天才マイケルジャクソン。
「天使の歌声」のマイケルは本人も妖精みたいな人だから、もう「ウィーアーザワールド」は讃美歌のような聖なる美しさをたたえていてグレーシー!、
そこに、ブルーススプリングスティーンやシンディの雄たけびがインしてきて、神に祈りがとどけ!とばかりにガーン!響いて、これは神に届くでしょう!
 
やっぱり最高でした。
 
ついこの間の出来事だと思っていたのに、
これは39年前の話だと気が付いて、shock。
マイケルもレイチャールズも、もう、いないんだなあ。
 
死神はちょっとずつ、ちょっとずつ、私に近寄ってきてる。
瞬間的に涙がブワッ!と出ましたけれども、生きなきゃ!
 
 

 

  青春時代に奇跡をリアルタイムで見ていた幸福
 

 

 

 

 

 
当時はMTVが人気を博していて、洋楽全盛時代。
日本の音楽はJPOPという言葉が使われ始めた頃でしょうか。
 
マイケルジャクソンのスリラーのダンスの真似をして遊んだり、
とんねるずの石橋さんが「せいゆー!せいみー♪」と歌うライオネル・リチオというキャラでギャグをやってたり、
学園祭ではバンドで女の子がマドンナかシンディローパーをうたって、ものすごく洋楽が身近でした。
 
この曲が発表された時、私は高校2年か3年で、♪We Are The Worldは英語の授業でもすぐテキストに使われて、
休みに入る前の最後の英語の授業が、たしか「予定より早く教科書の内容を教え終わったから」というので
お楽しみ会を兼ねて「We Are The Worldを覚えて歌おう!」という授業があったのを覚えています。
 
たしか冬休みに入る前で、年明けの授業までに暗誦して、また皆で歌うということをやった記憶があります。
卒業式にも歌ったような記憶です。
 
当時の洋楽のトップスターが送り出す音楽は心の糧であり、アーチストは憧れの先輩でもあり、心の友でした。
当時のメイキングで青春の思い出にひたりながら、39年後、同じ時代を生きて、
年をとった先輩方の表情や言葉のひとつひとつが胸にささる、ドキュメンタリーでした。
 
シンディローパーがかっこいい年の取り方をしていて、
私も、こうやって年をとって行こう!と前向きになりました。

 

ライオネル・リッチー

 

 

シーズ・ソー・アンユージュアル

 

スリラー

 

TALKING BOOK

 

フリー・ソウル クラシック・オブ・スモーキー・ロビンソン

 

はじめてディラン:Mixing Up The Medicine (CD) (特典なし)

 

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