スライ: スタローンの物語 

(2023年 米国 NETFLIX)
 
『ロッキー』『ランボー』『エクスペンタブルズ』などでおなじみのアクションスター、
シルヴェスター・スタローン の自伝ドキュメンタリ映画。
 

※今回、ほとんどネタバレです。ネタバレ嫌いな方はスルーでお願いします。

 

 

 

 

  シチリア移民といえば美容師にマフィアに映画?

 

シチリア系移民2世で、「典型的なシチリア顔」なんだそうで、そんな顔あるの?という。
 
 
そんなにシチリア顔だったら、次にコッポラ監督が「ゴッドファーザー」の続編をつくるときは
シルベスタースターロンを主役に作ればいいんじゃないの?とおもったりしたのですが、
そういう話は本当にあったんだそうで、
(ゴッドファーザーの続編を作るときは声かけるって言われたのに、続編の時、声がかからなかった……)らしいです。
 
だけど、シルベスタ・スタローンは映画監督で映画プロデューサー兼役者だから、
忙しすぎて、他人の映画の撮影にスケジュール合わせきれなかったんじゃ?
と思いました。
 

典型的なシチリア顔のスタローンさん

ロッキー4 (吹替版)

 

 

呼ばれなかったゴッドファーザーってこれ?

ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期 - マリオ・プーゾ原作

 

 

マーチン・スコセッシ監督もたしかイタリア系移民の子どもで、
ニューヨークのクイーンズの生まれで、
親が整髪料販売だか美容室だかを経営してる人の子どもなんですよね。
 
スタローンのお父さんも理容師・美容師で美容院をやってたんだそうです。
なんだろう、イタリア系(シチリア)移民の人ってバーバー経営者多いんですかね。
 
ファッションの国イタリア!
腕は身を助く!
 
若き日のスコセッシ監督。
ブロマイド写真★マーティン・スコセッシ/監督/カメラを覗く

 

 

  DV父とイカレた母、出生時の医療ミス

スタローンさんはマンハッタンの下町・ヘルズキッチン生まれの都会っ子。
 
ヘルズキッチンは、文字通り「地獄の台所」と呼ばれるマフィアがたくさんいる街なんだそうです。
それでお父さんはDV野郎で、お母さんはイカレてたんだそう。
 
両親が離婚して、お父さんと一緒にド田舎のメリーランドに引っ越して、馬に乗って暮らしてたんだって。
 
スタローンさんが映画の世界に入る話を紹介するのですが、
もう、ことあるごとに「お父さん」の話が出てきて、
お父さんのことダイキライだったみたいですよ。
親孝行はしてたみたいだけど。
 
子どもの頃から父のDVに耐えるのが日課だったそうで、
カウンセリング用語がたくさん出てくるので、カウンセリングを受けたり本を読んで勉強したり、
大変な努力をして自分のメンタルを守ってきた人なんだなというのが分かりました。
 

 

 

 

  「筋肉はウソをつかない」の源流にいる人のグリッド力がハンパなかかった

 

それと、やっぱり「筋肉はウソをつかない」の源流にいる方なので、
やっぱりグリッドがハンパない。

 

K090A3 ランボー 映画 ポスター シルベスタスタローン レトロ クラフト

 

俳優になった後も、ホームレスをしながら役者を続けて、
エキストラの仕事を見つけるのがやっとだったそうです。
 
デビュー作がポルノという、それでもあきらめずに、映画の世界にいて、エキストラだろうと端役だろうと頑張っていた。
オーディションを受けても、落ちる、落ちる、落ちる。
「顔がシチリアすぎる」「たれ目すぎる」というのが理由だったそうです。
 
映画に出たくて、自分で映画を作ったけれども、酷評、酷評、酷評。
 
すごいもがきよう。
 
人生うまく行ってない人って、私もそんなに人生うまく行ってる方じゃないですけれども、
ここまで必死にやってないんじゃないかと思いました。
 
ロッキー2 (吹替版)
 
 
いくらオーディションを受けても受からないから、
自分の長所(筋肉と性格)が生きる脚本の話を自分で作ってしまおう!と、
「ロッキー」を自分で書いたんだそうです。
 

 

 

お父さんとの関係が最悪だったから、父子喧嘩や男同士の喧嘩で言い争うシーンは、
お父さんに言いたくて言えなかったこと「ぶちまける」ように書いてきたんだそうです。
迫力あったよね。
 
ぶちまけるのなら、私にも書けそうだわ台本。

 

 

親を殺したくなったら読む本 (親に疲れた症候群の治し方)

 

 
お父さんのエピソードがほんとにひどくて、
ド田舎のメリーランドに住んでたころ、お父さんの馬でポロの試合に参加して、
スタローンさんが強いもんだから、お父さんが嫉妬して怒ってしまって、
試合中に棒で馬から突き落としたとか、
優勝候補の息子なのに。
 
ロッキーがヒットした後は「続編を書いた」とお父さんが脚本を持ってきて、
息子がどんだけの思いして映画作ったんだ?というのが理解できなくて、
お前が出来るなら俺の方が上!みたいな感じで、きちゃったらしいですパパが。
 
 
自分の体験、苦悩やなんだかかんだをすべて作品にぶち込んだ!とあって、
そういえば、ロッキーって「イタリアの種馬!」とリングで紹介されてましたよね。
 
スタローンさんってデビュー作がポルノ作品なんだそうです。
スタローンさんが自分の人生で言われてきて悔しかったことや怒り、悲しかったことを全て
ぶち込めた映画がロッキーなんだってことですから、「イタリアの種馬」も逃げも隠れもせず、
それらも表現も全て活用して、「だから全方向的に強いんだ」という表現に昇華してしまったのかな。
 
この執念。本気ってこういうことなのかもね。
 
 

 

  ロッキーは恋愛映画!

 

それで、企画書と脚本を書いて書いて書きまくり、プロダクションをまわって、
書いた「ロッキー」の脚本は、書いて書いて書きまくって、9割の原稿はボツ。
書き「続けること」や、筋トレ「続けること」がこの人の人生なのかな…とみて思いました。
 
あれは台本といえるのか、殴り書きの「自動筆記」カウンセリング・ノートのように見えましたけど、
心の中にあるもの怒りや悲しみや、ぜんぶぶち込めた感じでした。真っ黒で消された部分も、なんだか激しい感じがして。
 
それで、ロッキーは暴力映画ではなく「愛の映画」なんだって。
たしかに、「エイドリアーン!」のために生きるロッキーの話でしたね。
 

 

 

 

ロッキー (字幕版)

  「ランボー」が守っていたのはPTSDで自殺しようとしていた兵士たちの命だった

 

それと戦場で殺人マシーンとなって人とのコミュニケーションができなくなった殺人マシーンの映画『ランボー』は原作があって、原作はランボーが死んじゃうらしいのですが、戦争から帰ってきた兵士がPTSDに年間2万人自殺するアメリカで「ランボー殺しちゃだめでしょ!」とスタローンが頑張って、「人を殺さず(怪我はさせるが)ランボーもどうにか人を殺さずにアメリカの片隅で人知れず生きてる」話に脚本を変えてしまったんだそうです。

 

ランボー

 


 

 

 

  PTSDに苦しむ兵士たちの話に耳を傾けて苦しみを直で受け止めたスタローンの信念
 

 

関心したのが、ランボーを作るにあたって、
PTSDに罹患された元兵士の元を訪ねて、本人が話を聞きにいって、
本人がたくさんたくさん!取材してるんですね。
 
ランボーは「殺人マシーン」と呼ばれるようになるくらい凄惨な戦争の死闘ばかりしてきたから、
人が無残に死ぬ場面をたくさん見てきて、兵士の仲間の壮絶な死もたくさん経験してるから口も重い状態で。
 
だけど、セリフは喋ってもらわないといけないから、吐露する言葉は心の中にある「大きな傷」の話になるわけで。
実際に兵士から聞いた「話」を盛り込んで、だから、すごくタドタドしくて、すごく生々しいという。
 
ちゃんと徹底的に取材して、PTSDに苦しむ兵士の心に寄り添って、
共感しながら作ってるから、
力のある作品を作れたんだということが分かりました。
 
これは、すごい!
沖縄の大学で新聞記者を目指して大学でマスコミのゼミなどに入ると、
最初の「取材インタビュー」として、沖縄戦の聞き取りをやらせるんです。
 
傾聴スキルも求められるし、ひたすら聞く。凄惨な話であることが多いので、それを聞く。
将来新聞記者になったとしても、テレビマンになったとしても、
報道記者は事件の現場にいやがおうにも行かなくはならないし、
だから、聞く。相手は傷ついている人だという前提でお話を聞く。
聞く姿勢を学ぶ。
 
このドキュメンタリを見てわかりました。彼はとても優秀な取材者なんだということが。
魂が震えながら取材したことが、映画に昇華されてる。

 

 

 

  アメリカの「燃える闘魂」は労働争議という闘いも映画化してる

 

スタローンのハリウッドの自宅が出てくるのですが、絵に書いたような「成功者」の暮らしを送っていています。
スタローンの自宅拝見するような感覚を楽しめるのも、このドキュメンタリの特典の一つだなと思いました。
 
死に物狂いで努力すれば、人は成功できるし、頑張れば生活は楽になるというより、お金は入ってくるけれども、
(精神的な苦しさは、成功しても夢がかなっても、新たな問題がどんどん出てきて、常に問題を抱えている)という話は実感がありました。
 
ランボーをやった後は、ドタバタ喜劇映画を撮っていたそうなのですが、新たな自分の境地を作ろうとしたんだそうですが、イマイチ評判がよくなかったんだそうで。
 
ウケなかったらしいですけど、スタローン可愛い~♪

 

オスカー [DVD]

 

 

 
でも、ちょっとまって、一作目のランボーの後に作られた「フィスト」というトラック野郎の労働組合の話、評判がよくなかったって言ってましたけど、あれは面白かったよ!!私は良作だと思います。
大ヒットはしなかったと思うけどさあ…。

 

F.I.S.T. [DVD]

 

F.I.S.T. - Ein Mann geht seinen Weg - Special Edition

 

あと、ジョントラボルタの「ステイン・アライブ」が、やたらダンス系スポコンだと思ったら、
シルベスタースタローンが脚本・監督作品なんだそうです。
 
もう、「サタデーナイトフィーバー」の不良を、完全に更生させてしまったという(笑)
ジョントラボルタもイタリア系移民2世で、サタデーナイトフィーバーのあの不良の鬼畜な終わり方、
同郷人として本気で許せなかった、そういう人なんじゃないでしょうか、超一本気で、スタローンさんって。

 

バッチバチに鍛えまくってます。

ステイン アライブ (字幕版)

 

 

 

  かつてのライバルのシュワちゃんは超ネアカキャラだった

 

 

スタローンさんの半生の話は正直、暗くて暴力が身近にあって辛い感じで、
(そうだろうなあ)と予想はしてたのですが、
 
唯一の救いはライバルでお友達のシュワちゃん(アーノルド・シュワルッツネッガー)が
「筋肉ですね!筋肉! どちらが腕が太いか、どちらの方が胸板が厚いか、どちらの機関銃が大きいか、そんなことばかりを競っていました♪」と楽しそうに語っていて、シュワちゃんもおじいちゃんになっちゃって。
アーノルドシュワルツェネガー 日清カップヌードル オリジナルグリーティングカード シュワちゃん
スターロンさん、売れに売れた後、新しいジャンルに挑戦したくて、
一時期、コメディ(ドタバタ)を集中してやってたんだそうです。
 
なのにスタローン、それでもまだ暗いなあと思ったら、最愛の息子さんが2012年に死んじゃったんですね。心臓病で。
それは落ち込むわね。
負けるな!スタローン!
 
シュワちゃんとスタローンさん、2013年に『大脱出』で共演。
いいなあ、友情を感じます。

 

 

 

 
今は「エクスペンダブル」で、おじいちゃんたちになったアクションスターたちが仲良く映画造りを楽しんでいらして、
その感じがなんとも、心を和ませてくれます。
それにしても、エクスペンタブルズの「お願いマッスル!」っていうコピー、松竹、どうなの(爆笑)!
にしても、シュワちゃんは何作目に出てるんだろう。

 

 

 

 


 

 

負けるなスタローン!
 
 

  ところで、スライって何?

 

 
このタイトルの「スライってなに?」と思ったら、
 
スライというのは、スタローンさんのニックネームなんだそうです。
私もこの文章最初から「シルベスタ・スターローンさん」と長い名前をかくの、
めんどくさいなと思ってましたよ。
 
スライね!
OK!
 
今後はスタローンのことをスライと呼ぼう!
(と思ったけど、呼びません、なじまないから)。
 
 
この作品を見ながら、自分で脚本を書いて、自分が主役を演じて、自分がスタントマンをやるというスタイル、
ジャッキーチェンに似てるなあと思ったりしました。
 
ジャッキーとロッキー、対決してほしかったなあ。
ジャッキーとロッキー、「Ex-Baghdad」 見たかったなあ!
またの機会を作ってほしいです。