奥山真司 2014年02月09日

東シナ海での日中対立の陰であまり注目されていない南シナ海の領海争いについて、NYがタイムズが短いながらも社説で簡単に触れておりますので、それの要約を。

===

中国との紛糾
byNYタイムズ論説委員

●フィリピンは、国連に海上の領有権の侵害について訴訟を起こすことによって、中国側の南シナ海における領有権の主張に抵抗している。国連側はハーグで3月にこの訴えを審査することに合意している。

●フィリピンのアキノ大統領は、国際社会にたいしてこの領土問題における自らの立場を「法の支配」を通じて訴えかけている。

●中国側の南シナ海ほぼ全域にわたる領有権の主張にたいして、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、そして台湾などはそれぞれ一部の領域の主権を主張している。南シナ海は漁業資源が豊富であり、潜在的には石油や天然ガスも多いと言われている。

●フィリピンのロザリオ外相によれば、フィリピンが国連に訴えたのは、中国とのあらゆる外交チャンネルを通じても問題を解決できなかったため、これが最後に残された手段であったからだというものだ。

●去年1月のフィリピンによる提訴の後、中国は準軍事的な艦船を係争海域にとどめており、フィリピン側の漁船や商船にたいして嫌がらせを行っている。

●中国側は国連の裁判には応じないと主張しており、フィリピン側にたいして外交交渉による解決を要求している。

●この裁判は、中国の参加なしに判決が出るものだが、これによって中国側が主張している岩礁(そのいくつかは完全に水没したもの)が領有権を主張できる根拠になるものかどうかが決定されることになる。 

●国連海洋法条約(UNCLOS)によれば、国家は岸から12海里沖まで領海を主張でき、200海里沖まで漁業と海底資源の採掘を主張できる排他的経済水域(EEZ)を設定できることになる。ただしこの裁判は、岩礁や島の主権を決めることはできないし、それを強制するメカニズムも持っていない。

●中国は1982年のUNCLOSの批准国であるが、いくつかの領海問題については国際的な管轄権を認めないことを選択している。それでも中国が南シナ海や東シナ海において緊張を高めているため、国際社会は中国が法の支配に従い、国連の調停採決を真剣に受け止めなければならない。

●フィリピンが始めたことは、単にフィリピンだけの問題ではなく、国際社会が支援しなければならない問題における一つの大きなステップなのだ。

===

これも中国にたいして腰が引けている感じですが、リベラルとしてはフィリピン側にたいしては肩入れしておかなければならないという姿勢なんでしょうね。

フィリピン側が中国のことをナチスドイツにたとえてもあまり問題になっておりませんが、やはり「国際社会」では「中国が弱い者いじめをしている」というイメージが重要なのかと。

実はフィリピン側もかなり積極的な外交攻勢を行っておりまして、この辺の経緯にかんしては、拙訳のルトワックの『自滅する中国』に詳しく解説されております。ご興味のある方はぜひ。

http://blogos.com/article/79958/