これまでのお話
デカゲロ)ある夏のことです。前日まで元気に来ていたメガゲロが、その日はいつまでたっても来なかったんです。それで、近くを探してみると、メガゲロは血だらけで倒れていました。誰かに刺されたらしく、ぼくたちは、メガゲロの回復を待ちながら捜査をしました。
そして、犯人が判明しました。
その犯人とは……マリンでした。
なかゲロ)その事件から数ヶ月たった時のことです。
かえる第一交番の隣の家が火事になってしまいました。
それで、ぼくたちの事務所に電話が来たんです。
デカゲロ先輩が捜査して、この事件も犯人が判明しました。
その犯人も……マリンでした。
とくゲロ)その二つの事件により、マリンは、禁錮二十年の刑に処されました。
それで、マリンは、かえる刑務所に入れられました。
かえる刑務所は、かえる県の中で凶悪犯罪をした人が入る刑務所です。
マリンは、おとなしく刑務所で暮らしていました。
ついこの前までは……。
メガゲロ)ちょっとぉ!!ぼく喋ってないんだけど!みんなひどーい!
1 マリンが脱獄
かえる県最大の刑務所、かえる刑務所。
そこには、凶悪犯罪を犯した者たちがいる。
厳重に警備され、脱獄が出来ないようになっている。
有刺鉄線がいたるところに張ってあったり、警備員が目を光らせ警備したり。
だがしかし、この刑務所の門をくぐり抜け、脱獄した者がいる。
……マリン。
彼は、殺人未遂事件と、連続放火事件を犯した。
殺人未遂事件で被害にあったのはなんとメガゲロ。
いつも元気なメガゲロもこの時ばかりは元気がなくなっていた。
そして、連続放火事件。
なんと、デカゲロ探偵事務所も玄関を燃やされてしまった。
これによる事務所の損害額は100万円。
メガゲロの時間と、デカゲロ探偵事務所の資金額を奪ったマリン。
四人は、マリンを恨んでいた。
賑やかな音楽とともに、ニュース番組は始まった。
『速報です。かえる刑務所に服役していたマリン容疑者が、脱獄をしました。
かえる刑務所は午前10時に、マリン容疑者が脱獄したことを発表しました。
9時半から10時にかけての点呼およびチェックの時間に、マリン容疑者がいなかったことが発覚したとのことです。』
これを見ていたなかゲロは目を丸くした。
「ちょ、ちょ、ちょっと!!見てください!これ!」
大声を出すが、三人は気づいてくれない。
デカゲロは寝ていて、メガゲロはお菓子に夢中、とくゲロはナンプレをしていて、なかゲロの声など入ってこない。
なかゲロは、デカゲロを思いっきりぶっ叩き、
「起きてください!見てください!このニュースを!!」
と怒鳴るくらい大きな声で言った。
「ふぇ??なにー?」
デカゲロは間抜けに返した。
「だから、このニュースを見てください!」
「うぅ?ふぇ、あ、マリンが脱獄っ!?マジでー!」
やっと気づいたようだ。
「やばいね。」
「そうですよ。ほらー!!二人もこれを見なさーい!」
「え?」
「ん?」
「あーっ!」
二人は、声を揃えた。
「マリンくんが脱獄したのー?ぼく痛い思いしたのにまだ悪いことするの?」
「ぼくたち何すればいいんだろう。」
とくゲロが困ったように言うと、なかゲロは、
「マリンを探すのは、警察に任せていいでしょうから、ぼくたちは、マリンがどういうふうに脱獄したかを調べましょう。また脱獄人が出ると困りますからね。」
と答えた。
2 かえる刑務所へ
事務所と同じピクルス市に、刑務所はあった。
ピクルス市にある理由は、人がたくさんいるため、容疑者が脱獄した時にすぐ通報できるからなのだとか。無論、マリンの脱獄に関しては、何の役にも立っていない。
一行は、厳重に警備されている刑務所の門に来た。
警備員が言う。
「ここはかえる刑務所です。お名前は?」
「デカゲロです。」
「なかゲロです。」
「メガゲロだよ~!」
「とくゲロでーす!」
警備員は、メガゲロととくゲロを軽蔑するような目で見て、言った。
「身分を証明するものはありますか?」
「はい。これです。」
デカゲロは、かえる県の探偵が持っている「探偵証」を出した。
三人も出した。
「どーぞぉー!」
警備員は、メガゲロをじっと見て、言った。
「はい。分かりました。ご用件は?」
「マリンさんが脱獄したとのことですが、ぼくたちは前に被害にあった身です。だから探偵としてこの事件を解決しに来ました。」
デカゲロが冷静に答える。
「分かりました。どうぞ。」
警備員から刑務所の地図を貰った。
門が開いた。
檻がある部屋へ来た。
たくさんの容疑者が檻に入れられている。その中には、以前製薬会社を爆破したピカミもいた。ピカミは、デカゲロを眼中に入れた途端、デカゲロを睨みつけた。
デカゲロは、ピカミから目を反らして歩いて行った。
3 証拠は?
デカゲロたちは、牢獄まわりを歩いていた警備員に聞いた。
「マリンが入れられていた檻はどれですか?」
「こちらです。」
と、警備員は優しく答えた。
「みんなで証拠があるか探すんだ。」
「うん。頑張ろう!」
メガゲロが答えた。この事件に関しては、メガゲロが一番頑張ってくれそうだ。
そして、しばらく、その檻の中を探していたのだが、特に証拠らしきものは見つからなかった。
「うーん……。ないみたいだね。とりあえず今の時点で脱獄に使えそうなものはないね。この部屋は換気扇や通気口もないし。」
デカゲロの言葉に、メガゲロはしょんぼりした。
「……他の受刑者の部屋から脱獄したとかはないのかな?」
しかし、警備員さんが、
「檻のなかには換気扇や通気口は設けていません。」
と答えた。
「そっか……。」
メガゲロは更にしょんぼりした。
「じゃあ聞き込み捜査だね……。」
聞き込み捜査はメガゲロが苦手で、嫌いな分野だ。
「他の受刑者に何か気づいたこととか、もしくは知っていることがあるか聞いてみましょう。」
4 聞き込み捜査
「すみません、マリンはいつまでこの部屋にいましたか?」
なかゲロがある受刑者に聞く。
「さぁ。俺が起きた時にはいなかったぜ。俺が起きたのは9時だが。」
他の受刑者は、
「私が起きた時もいませんでした。朝食に行ったのかと思いましたが。あっ、私が起きたのは6時半です。」
「ぼくは起きてすぐ朝食に行きました。この部屋でマリンさんは見てないですね。ぼくがぼーっとしてたから気づかなかったのかもしれませんが。」
「今日の朝3時くらいにトイレの方面に向かって行ったのを見ました。」
と言った。
「朝3時にトイレの方面というのは関係がありそうだなぁ。」
「でもデカゲロくん、ただ普通にトイレに行ったっていうのも考えておかないと。」
と、とくゲロ。
「分かっているよ。」
「でも朝3時以降だね。脱獄したのは。」
「うん。」
「ねぇねぇ、デカゲロくん。他の階にも行こうよ。」
とくゲロが言った。
受刑者がいるのはこの階だけではない。
他の階の受刑者にも話を聞いてみようということなのだ。
一行が移動しようとしたその時、
「あっ!!」
メガゲロが大声を出した。
5 メガゲロが発見
「なに??なにメガゲロ。」
「ほら……見て。」
メガゲロが指差すところは檻の柵のすぐそばの床。
「特に何もないよ。メガゲロ。行こう。」
デカゲロが言う。
「もー!何で気づかないの!!この床、カーペットっていうか、壁紙を床に貼るというか、床紙っていうのか分かんないけど、何か貼ってあるじゃん。他の部屋はないよ。」
「本当だ!メガゲロ、すごい。ぼくもなかなか気づきませんでした。」
なかゲロが褒めた。
よーく見てみると、床紙が少しめくれていたのだ。
「ベッドとかタオルとかで見えなかったけど、この床紙をめくったら、なんかあるんじゃないかな。」
ということで、4人で床の床紙をめくった。
すると、出てきたのは……。
「板だね。」
部屋の奥の隅の床がへこんでいる所に板がある。
「板なんて脱獄に使えるの?この部屋だけ壊れてたとかじゃなくて?」
とくゲロがつぶやく。
しかし、その板を外してみると……。
「穴が出てきた。」
ちょうど1人入れそうな穴だった。
マリンはここから脱獄したのだろうか。
一番痩せているなかゲロが入ることに。
なかゲロは、スマホを持って、中を撮ることにした。
「つながっているところが近かったら戻りますが、もし遠くだったら、連絡します。」
そう言って、なかゲロは入っていった。
6 なかゲロ……。
なかゲロがいつまで経っても出てこない。
電話も来ない。
時計を見ると、3時間程経っている。
デカゲロは、スマホを取り出した。
「なにするの?」
とくゲロは興味津々。
「とくゲロのスマホにもGPSがついているでしょ、なかゲロがどこにいるか調べるんだよ。」
スマホ画面に出てきた、なかゲロの位置は……。
「ここから地下10m、東に7mだって。」
「え、全然進んでないじゃん。見間違えじゃないよねkmと。確かにmって書いてある……。」
デカゲロはなかゲロに電話を掛けた。
「もしもし。」
「はい。はぁはぁ。」
なかゲロは凄く苦しそうだが……。
「あの、なかゲロ、全然進んでないみたいだけど……。」
「すいません……。ぼくにはこういうのは無理です。」
「だったら早く言ってよー。」
「すいません……。今から戻ります。今すごくトイレ行きたいんで、進んだのに戻ってしまいました。」
「はぁ……。早く来て。」
5分後くらいになかゲロが戻ってきた。
「トイレ~!」
なかゲロが走って通り過ぎた後、
「違う人にしよう。」
とデカゲロは言った。
「次は一番体力がある人ね。」
「じゃあぼくやる~。」
メガゲロが答えた。
「トイレ行ってね。」
とくゲロが注意する。
「もちろん行くよ。ぼくなかゲロくんとは違うもん。」
メガゲロは、ちゃんとトイレに行った後、穴に入った。
7 どこにつながっている?
約1時間後。メガゲロから電話が来た。
「マンホールから出たらね、何か知らない人の家に来ちゃった~。」
「どこ?」
「知らな~い。GPSで見ればいいじゃん。」
デカゲロはむかっとしながらスマホの画面を見ると……。
「ここから北東に10km ピクルス市中々町3-4-9」と出てきた。
「あ、ここぼくん家からすぐです。車で向かいましょう。」
メガゲロが来たところは……なんと、マリンが住んでいた家だ。
「もしかしてマリンいるかな?」
とくゲロが心配そうに言うが、メガゲロは、
「ぼくが見る限り誰もいないと思うよ。人気がないし。」
と言った。
「とりあえず、刑事さんにでも報告だね。」
デカゲロは電話をする。
「もしもし。デカゲロ事務所のデカゲロです。マリンが収容されていた檻の床から、穴が見つかり、それが、マリンの家に繋がっていることが分かりました。」
横でとくゲロが、
「よーし、事件解決だねっ!!」
と嬉しそうに言った。
「とくゲロくん。まだマリンは見つかってないよ。」
とメガゲロ。
とくゲロはしまった!というふうに、
「あ、、、、そうだった。。。。」
と言った。
「あとはマリンを探すのみだね。」
8 マリン捜索
「マリンどこいるんだろう……。」
「あっ!見て見て!あそこに囚人服があるよ!」
メガゲロがまた発見。
「本当だ!この家で着替えたんだね。この家入れるかな?」
「入ってみれば~?」
と、メガゲロ。
「あ、ドア開いてるね。」
デカゲロが足を踏み入れる。
その瞬間。
ぶーっ!ぶーっ!ぶーっ!
「なんか鳴ったよ。」
「なにこれ!?」
四人は唖然としてその場に突っ立っていた。
5分後位に警察が来た。
「不法侵入で逮捕!……デカゲロさんですか。捜査ですか?」
「はい。」
「特別に許してあげましょう。」
その時、メガゲロの目に、警察官の奥に青い物体が映った。
「あ!!!マリン!!!」
「えっ!?」
警察たちが追いかける。
「頑張れ頑張れ~!」
メガゲロは自分で追いかけずに応援。
もちろん、他の三人も移動していない。
「捕まえたぞ!!」
遠くから警察官の声が聞こえた。
9 再逮捕
マリンは再逮捕され、刑務所に連れ戻された。
マリンは買い物から帰ってきたところで捕まえられたらしい。
マリンは、地下から脱出したので、マリンの部屋は1階ではなく3階に移された。
そして、1階の受刑者たちの脱獄を防ぐため、地下には地下鉄が通されることになった。
さらに、刑務所ショップでの床紙・壁紙の販売も禁止された。
この事件は、刑務所の欠陥もあって起こった事件であった。
「ふう。疲れたね。」
「疲れましたね。」
「なかゲロくんは全然役に立ってないよ!」
メガゲロが怒った。確かに、この事件で最も活躍したのはメガゲロだ。
「だってさ、『トイレ~!』って子供みたい。」
「……すいませんでした。」
「でもとくゲロくんもマヌケだったよね。『よーし、事件解決だねっ!!』って自信たっぷりに言ってたし。」
「興奮しちゃったの……。」
二人はメガゲロに叱られている。
とくゲロはともかく、なかゲロよりメガゲロの方が探偵らしい。
「次はちゃんと活躍出来るように頑張りたいです……。」
なかゲロが反省しながら言うと、メガゲロは調子に乗って、
「せいぜい頑張ってね。」
と言った。
「こらー!先輩ヅラしてんじゃないの!」
なかゲロに怒られた。
デカゲロはそれを微笑ましく見ていた。