小説 *夢をかなえる片づけ観音さま NO9 | 70代パーキンソン自宅介護 収納の工夫とストレスケアで豊かに!

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夫76歳パーキンソン病要介護2。今まで磨いた厳選力で、少ない家具モノで介護収納し
コーピングなどストレス緩和も取り入れながら豊かな暮らしを楽しんでいます。

夢をかなえる片づけ観音さま

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夢をかなえる片づけ観音さま No.9

 

『言いわけ大王 現るの巻  3』

 

 

8月30日(火)仏滅

 

今年は台風が例年になく多い。8月に入ってから、4つも日本列島に上陸してる。

 

だいたい、北海道にも3つの台風が上っていくなんてことも驚き。いつもは温帯低気圧に変わるのに。

 

台風だけじゃなくて大雨も猛暑も気象庁観測以来、記録に残るほどのことらしい。

 

こうジメジメした日が続くとテンションも下がり気味。

 

洗濯物も渇きが悪くて家干しで、この頃家の中の臭いも気になる。

 

 

だけど、徹はめっちゃ元気。湿度が多いときはカタツムリが元気らしい。

カタツムリの観察に夢中で細かく日記をつけてて、将来は学者になりたいなんて言っている。

 

 

徹はあの日以降、部屋の片づけも夏の宿題もすっかり終わらせた。

 

「やっぱり部屋がキレイだときもちいいね」と徹。

 

 

どうやら片づけ観音さまと話したことがきっかけらしい。

 

「おばあちゃんがね、教えてくれたの。片づいたお部屋をね、目でパチリって写真撮るんだ。でね、いつも写真とおんなじようにしておくの。そうすれば、外からお部屋に帰ってきたときに気持ちがスッキリするんだ」と教えてくれる。

 

「へえぇ、そうなの。目でパチリと写真ねぇ」わかるようなわからないようなの私・・・。

 

収納は自分なりにルールを決めてやっているらしい。

 

さらに時おり工夫して、より片づけやすい方法を探してる。

 

以前は散らかった部屋を片づけるのは私で、徹に何も聞かずに見栄えが良くなるように収納を決めていた。

 

でも、考えてみれば使うのは徹で、徹が使いづらい収納だと散らかるのは当たり前の話だ。

 

 

で、私は? っていうと徹に完全に後れを取っている感じ!!

 

 

片づけ観音さまに出された問題

猫ノートの3の回答に困りきっている。

 

 

夢中になっている徹を見ていると羨ましい。

 

確かに、子供の頃は好きなことはあったし、

 

やりたいこともいっぱいあった。

 

だけど時間が無いし お金も無いし・・・

 

毎日の生活をするので精一杯。

 

趣味を伸ばして仕事にしている人の話とかも聞くけど、

 

その集中力とかって、私にはもうない気がする。

 

仕事して帰ってきて家事をして、もうクタクタ。

 

 

 

 

起業した同級生の智子は、広告代理店勤めの旦那さまの協力とかあったからだと思うし・・・

 

頭も胸の中もモヤモヤとしたまま、整理がつかない。

 

 

 

8月31日(水)大安

 

 

蒸し暑くて眠れない夜。

 

弘さんは帰りが遅く、ビールを飲みながらテレビを見てすぐ寝ちゃう。

 

モヤモヤ感を相談してみたいと思うけど、

 

なにをどう話したらいいのか言葉にできない。それがまたもどかしくてイライラしてしまう。

 

 

ベッドから抜け出し、

 

キッチンでクーラーを付け

 

冷蔵庫から出した、冷たい缶酎ハイを一口飲む。

 

そのとき、パツッと突然蛍光灯が消える。

 

「え? ナニ停電?それともブレーカー落ちた?」

 

クーラー付けたから電気の使い過ぎかなと思いながら

 

懐中電灯片手に配電盤を見に行く

 

(あれ? 大丈夫じゃない。どうしたんだろう)不思議に思っていると

 

背中の後ろに冷や水みたいな冷気を感じる。

 

恐る恐る振り返ると、白い人影が・・・

 

「きゃぁ〜!」っと声を上げそうになったそのとき電気がついた。

 

白い布を頭の上から外しながら

「ちょっと脅かしてみたかったんよ。ごめんごめん」って片づけ観音さまがイタズラっ子ぽく笑って顔を出す。

 

「やだぁ、やめてくださいよ、もう。ただでさえおっかながり屋なんですから私」と怒っていると

 

「ゴメンゴメン。でもたまにはさ、こういう演出もいいんじゃない? けっこうドキドキしたでしょ。ドキドキ大事だからね」と暢気に片づけ観音さまが答える。

 

 

「答えが出ないで悩んじょるみたいやから、来たんよ」

リビングに二人で戻りながら片づけ観音さまが言った。

 

「 で、悩みのタネはなんね?」

 

「宿題の答えが見つからないんです。私、何やりたいのか、夢とかどっかに置いてきちゃったのかも」

 

「あらあら。きっと自分のこと考えるゆとりがなくなってるんやね〜。じゃ、ちょっと角度を変えて考えてみちゃったらどうかね」

 

角度を変える?

 

「例えば今から10年後、20年後、50年後の自分、想像してみてごらんち。徹ちゃんは10年後、大学卒業しちょるかね。就職してお嫁さんもらったら、20年後にはもう受験生のパパかもしれんね。そん時、久枝ちゃんはどうしちょるかね」

 

10年後って私55歳・・・今の仕事続けてられるのかな。徹は就職できるのかしら。

 

20年後は65歳。年金受け取りの歳だ。徹が結婚してたら夫婦二人だけの生活になるのよね。そうしたら私なに楽しみにしてるのかな。徹の家のこととか口出ししたくなはいし、自分の趣味とか・・・趣味?


 

50年後って・・・まあ、94歳。長生きできて元気だったら何してんだろう?

 

 

私の缶酎ハイをコップに注ぎ、ゴクッゴクッと美味しそうな音を立てて片づけ観音さまが飲み干す。 

 

「そうそう、会社辞めたっち女の子ね、佐藤さんち言ったっけ? あん子世界中旅して、美味しいもの探して食べて、そん国にしかないような文化や風習見聞きして、それを旅行記にして紹介することが夢なんよ。日本に来ちょうる外人さんたちがトラブルあったりするのは、お互いがよく知らないからじゃないかっち思ったんがきっかけらしいよ。ネット検索で安い海外旅行があると休みとって行くけん、なかなか仕事が長続きせんのよ」

 

ずいぶん壮大な夢。今どきそんな夢って実現できるの? 

 

「あ、今、久枝ちゃん、そんなでっかい夢 無理っち思ったでしょ。でもね、みんなちっちゃいキッカケがあって、何年も頑張っちょるのよ。たとえばフィギアスケートの浅田真央ちゃんや宮原知子ちゃん、才能だけでオリンピック出られたわけじゃないでしょう。もちろん運もあるかもしらん。でも他の人より練習して練習して、技量磨いてきたから今があるんよ。一朝一夕だけであるわけじゃないんやから」

 

そりゃ、若い時は時間も自由になるし、自分好きなことする時間も持てるじゃん。片づけ観音さまって、人間界の時間の流れわかってない。

 

「おりゃおりゃ、こんどは時間の流れっちゅう話ね。じゃ、時間ん、ち どう思ちょうの? たとえば時間いっぱいあっちゃら、なんか自分みつけられうちゅうの?」

 

・・・・・。

 

「久枝ちゃんもやっぱり言い訳大王呼ぶんちゃね。ほなら、言いわけ大王と闘う手段、まず教えてあげりょかね」

 

「闘う手段、ですか?」

 

「そ、一度しか言わんから、そこに置いたある猫ノートに書きんさいね」

 

部屋においてきたはずの猫ノートが目の前に開いている。テーブルの上にはお気に入りのペンまで用意されていた。

 

「ほなら、いくよ。

まず、その1 過去の日記と家計簿と手帳を持ってきて並べて見てみる。

 

その2 一年の大まかな流れを書き出してみる。たとえば、お誕生日とか徹ちゃんの学校行事とか、衣替えの時期とか、ベランダの植物の植え替えの時期とか、毎年してることあるでしょ。それを拾い出して、ノートに何月になにをしちょるか書き取ってみんさい。

 

その3 その流れを手帳に書き込んでおくの。今は8月だけど、9月から12月の把握したことを先に書き込んじゃうんよ。来年の手帳はまだ出ちょらんけど、10月頃になったら出るから予想されるイベントを記入しちゃうの。

 

どう? 簡単でしょ?

 

去年、今年、タイムスケジュールを見直してみることが時間を作ることにつながるの。そこから、自分の自由になる時間を作ることが出来るんよ。

 

なんね? ぼーっとした顔しちゃって」

 

「え、自分のタイムスケジュールなんて考えてみたこともなかったんで・・・」

 

「普通の人はそう。だけど、そのまま時間に流されてると人生なんてあっちゅう間に過ぎちゃうよ。久枝ちゃんにはそうなって欲しくないの。言い訳大王呼んでると結局何もしないまま終わっちゃうよ。まずは私が言ったことやってみてなさいね。あ〜〜〜久しぶりに飲んだから酔っぱらっちゃったわぁ。したら、またね」

 

赤い頬の片づけ観音さまは陽気に鼓を叩き、はぁ〜スッポンスッポンと言いながら消えていった。

 

鼓持ってたっけ? なんて記憶を辿りながら(まずはこのモヤモヤ解消させるには時間を作ることなんだ)と感じ、猫ノートの手順を読みながらやってみようと決めた。

 

 

 

つづく

 

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 

猫ノートに書かれている 「手帳術」実践編はコチラをご覧下さい。

 

 

 

前回の物語を見て、お便り頂きました!

良かったらご覧下さい。

 

 

 

前回の物語の元となったお話はコチラ!

そしてスゴイ変化が起きたそうです。