<陣痛促進剤>産科医療補償報告書 8割で基準逸脱
毎日新聞 5月7日(火)19時50分配信


 出産で重度の脳性まひになった子どもに対し補償する「産科医療補償制度」について、運営する公益財団法人「日本医療機能評価機構」は7日、補償対象事例の原因分析結果をまとめた報告書を発表した。陣痛促進剤が使われた事例の8割近く(56件中43件)で診療ガイドラインなどの基準を逸脱していたほか、妊婦本人に投与の同意を文書で得ていたのは2割(同12件)にとどまるなど、ずさんな投与実態が明らかになった。
 09年1月の制度開始から約4年間で補償対象は461件(今年3月末現在)。このうち原因分析が済んだ188件分を機構が報告書にまとめた。
 陣痛促進剤の不適正な投与が相次いでいるとされており、機構が投与例56件を調査した結果、投与が脳性まひの主な原因だった事例が1件あった。原因の一つとして何らかの影響を与えた可能性がある事例も6件あった。
 一方、産婦人科診療ガイドラインの基準より過剰投与していた事例は41件(73%)に上り、うち胎児の心拍数の確認など、投与時に必要な分娩(ぶんべん)監視が不十分な事例が12件あった。病院側が投与量を把握していない事例も3件あった。
 さらに、投与前に妊婦への同意を得ていなかった事例は7件(13%)、同意を取ったか不明も21件(38%)あった。口頭での同意は16件(29%)だった。
 陣痛促進剤の添付文書(医師向け説明書)は、文書による同意や十分な分娩監視を求めている。日本産科婦人科学会などが定める産婦人科診療ガイドラインも、事故防止のため適正投与量の基準などを定めている。
 補償制度の再発防止委員会の池ノ上克委員長(宮崎大医学部付属病院長)はこの日の記者会見で「再発防止のためガイドラインを守るよう呼びかけていきたい」と話している