意地 | ゆんたの妄想ブログ

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とある空き工場。そこに二人の人影が。

一人はつなぎの上だけ脱いだ、タンクトップの青年。もう一人は中年くらいのスーツの男。

青年は全身汗で濡れており、張り付いたタンクトップが青年の鍛えあげられた身体を浮かび上がらせている。また、いたるところに泥がついており、つなぎやタンクトップはところどころ切れていた。しっかりと筋肉のついた腕にも擦り傷が見て取れる。

一方のスーツの男は汗ひとつかくことなく涼しい顔で構えており、上着を着ておらず、ネクタイをはずしたワイシャツ姿。厚い胸板と、広い肩幅のせいかシャツはぴちぴちで、腕まくりをしている袖から覗く腕は筋肉で覆われており、ただのビジネスマンではないことがうかがい知れる。

「もういいだろう。」

「はぁはぁ。へへ、もう疲れちまったのか

「これ以上は無意味だと言ったんだ。」

「冗談、まだまだこれからだろう、が

拳を振り上げスーツの男に殴りかかる青年。スーツの男はため息をひとつ付いた後、青年の拳をあっさりといなし足を掛けると、青年はバランスを崩しそのまま前のめりに倒れた。

「て、めぇ真面目にやる気あんのかよ

さらに汚れた顔を拭いながら、怒りをあらわにする青年。

「これ以上は無駄だということを君が一番自覚しているのではないかいい加減駄々をこねるのはやめるんだ。見苦しいぞ。」

「くっ

それに対し、冷静に青年を諭すように話す男。先ほどから一方的に殴りかかっているのは青年の方で、男からは一切手を出していない。さらに的を得た言葉に悔しそうに顔を歪める青年。

「今更この工場の取り壊しは覆ることは無い。どんなにあがこうとも、な。」

「うるせぇ卑怯な手を使ってうちの工場を追い込んで、叩き潰して、満足かよ

「人聞きの悪いことを言うものではない。これはビジネスだ。我々は勝利し、君たちは負けた。ただそれだけだ。」

「何がビジネスだ従業員を引き抜いて、取引先に手を回して契約を取り消させて追い込んで!!

「そして君だけが残った。はじめから我々の要求に応じていればもっと穏便にことを済ますことができたものを。」

「だまれ!!

あきれたような男の物言いに青年はさらに顔を険しくし、怒気をあらわに男に殴りかかる。

それを再び軽くいなし、言葉を続ける男。

「何をそんなにこだわっているのか知らないが、これは決定事項だ。この工場、ひいてはこのいったいを更地にし、新たなショッピングモールを建設する。寂れた商店街は多くの人でにぎわう。何が問題だというのだ。」

男の言っていることは正しいのかもしれない。工場も決して繁盛していたわけでもなく、細々と小規模で運営していた。周りの店も同様だ。ただ、そのつながりは深く、たがいに助け合ってきた。いわゆる昔ながらの暖かい商店街だったのだ。しかし、新しい市長になり、この商店街は取り壊し、新たなショッピングモールが建設されることとなった。最初は商店街をあげて反対していた。しかし、徐々にその勢いは押しつぶされた。圧倒的な力の前になすすべなく閉店、移転していく商店街の店。最後まで抵抗していた青年のはたらいていた工場も、ついには経営困難に陥り、つい先週取り壊しが決まった。

「うるせーーー!!!!

「ガキが!!!

なおも殴りかかろうとした青年、しかし男の雰囲気が変わったことに気付きわずかにひるんでしまう。青年がひるんだ一瞬の隙に男は懐までもぐりこんでいた。

「ふん!!

ドッボォォォォオオオオンン!!!!!!

「うっげぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇ!!!!!

男の拳が青年の鍛え上げられたボコボコに八つに割れた腹筋のど真ん中に深々とめり込んでいた。青年の体は男によって軽々と持ち上げられ、男の拳がめり込んだ腹を中心にくの字に折れ曲がり、開ききった瞳からは涙が、口からは喘ぎ声と、とどまることない涎がぽたぽたとコンクリートの床に滴り落ちていた。

「あ、がはっぅがごぷっ!!

男は青年を床に叩き落すと、青年は腹を抱え、のた打ち回った。

「今ので、嘔吐しないとは。なかなか鍛えているようだな。だが、これでもう力の差が充分に分かっただろう。おとなしく我々に従っておけ。ここの引き払いに関してつけた我々の条件も悪いものでもなかろう。」

「あ、がはぁる、せぇそんなもんとっくに、分かってんだよ。」

「ならなぜまだ歯向かう。」

男が未だに理解できずにあきれながらも青年に問う。青年は何とか腹の痛みを耐え、震える足を叱咤し立ち上がろうとする。

「は、俺はまだまだガキきだからよぉ。頭では納得しようとしても、ココが黙っちゃいられなかったんだよ

青年は必死に立ち上がり、胸に拳を当て、ありったけの声で、叫ぶ。その声が、小さな控除に響き渡る。男は数瞬目を見開き、その後かすかに笑い、青年を真っ直ぐに見つめた。

「なるほど。いいだろう。前言撤回だ。」

「お前はガキじゃねぇ。一人の漢として相手をしてやる。手加減は無しだ。」

そういって男はシャツを脱ぎ去った。現れた肉体はまさに完成されたものであった。丸太のような腕は先ほどから見えていたが、新たに現れたパンパンに膨れ上がった胸板、その下には最低限の脂肪を残した、はちきれんばかりに隆起したシックスパック。青年の二周り、いや、それ以上に隆起し、圧倒的威圧感を放つ男。その顔は先ほどと違い、正真正銘漢の顔そのものだった。

「さて、続きと行こうぜ

口調もかわった男はずんずんと青年に近づいていく。青年は恐怖だけではなく武者震いからくる振るえ、高揚する気持ちがふつふつとわいてきていた。

「おら

バキ

青年の振りかぶった拳は男の頬に命中。しかし

「その程度か

男は青年の拳を頬に受けたまま微動だにしていなかった。

「くっおらおらおらおらおら!!!!!

青年は我武者羅に男に殴りかかった。男は避けるそぶりも、防ぐそぶりも無くただただ青年の拳を受け続けていた。何十発という拳を受けてなお男は手を出してこなかった。

「はぁ、はぁくっそ

「もう終わりか

肩で息をする青年に対し、ところどころ少し赤くなり、切り傷と痣がふえたものの平然としている男。

「うっらぁあ!!!!

ドムン!!

「んっ!!

青年が放った拳が男の鳩尾にわずかにめり込み、平然としていた男の顔がわずかにゆがむ。

ドズドズ!!ボム

「ん、ぐ、くぅ!!

余裕を見せていた男が徐々に苦悶の表情を見せ始めた。青年はここぞとばかりに残された力を振り絞り、男に殴りかかる。

「これで、どうだぁぁぁあああ!!!!

ドッボムン!!!

「うごぁ!!

青年の拳がついに男の鉄壁の腹筋を貫いた。

「はぁはぁ。どうだ。」

「ぐぅ。」

青年の拳を腹にめり込ませたまま男は青年に目を向ける。

「なかなかいい責めだったぜ。俺にここまでのダメージを与えるとは。」

「そりゃ、どうも。」

「だがふん

「な!?

男が腹筋に力を籠めると、青年の拳が腹からはじきだされた。青年の拳は確かに男の腹にめり込んではいた、しかし、分厚い筋肉の層、その表層にわずかにめり込んだだけで、ほとんどダメージは無かったのだ。

「さて、覚悟はいいか。今度はオレの番だ。」

男が全身に力をみなぎらせると、はちきれんばかりの筋肉がさらに肥大し、一回りは大きくなった。青年は信じられないものをみるかのようにその様子を凝視していた。

ゴッ!!

「っが

青年が気付いたときには男の拳が青年の頬に叩き込まれており、その勢いを殺せずすう回転して青年は吹っ飛んだ。地面に身体を打ち付けてなおその反動は収まることが無く、青年の体は地面をさらに転がっていく。

「(な、にが殴られた、のかみ、見えなかった)」

青年は未だに信じられないといった表情で、状況が理解できていない。そんなこともお構いなしに男は青年に近づく。足音に気付いた青年は何とか立ち上がろうとするもうまく動くことができなかった。殴られた衝撃で脳が揺さぶられ、満足に体が動かせなかったのだ。

「おいおい、一発でおねんねには早いんじゃねぇか

男はそういってうつぶせに倒れている青年を蹴り、仰向けにした。青年がぼやけた視界で見上げる先には、つまらなそうに青年を見下ろす男。

「立て。まだまだこれからだろ

「ぅくっそぉ。」

そういう男に対し、わずかに動く指先に力を入れるも、未だに身体を起こせないでいる。

「それともその状態のままいたぶって欲しいのか。」

そういって男は革靴をはいた足を持ち上げ、思いっきり落とした。もちろんその先には

「うっがぁぁぁぁああぁぁぁぁああ!!!!!!ごぼぁ!!!

硬い革靴が青年の腹のど真ん中にめり込み、踏み潰していた。その勢いに青年は耐え切れず、一発で胃の中のものを吐き出してしまった。力のはいらない腕をなんとか持ち上げ、男の足をどけようとするも、全く微動だにしない男の足。

「どうした。どかさないと、内臓ごと潰しちまうぞ。」

力が籠められ、青年の抵抗も空しく男の靴はどんどん青年の腹を潰し、内臓を圧迫していく。

「あっがぁぁ!!げほ!!ぐがぁ!!

「ふん。」

つまらなそうに足をどける男。靴底の形にへこんだ青年の腹はなかなかもとの形に戻ることも無く、青年は力なく呻き、身体を痙攣させている。

「あ、かはぁうぐぅ。」

「少しやりすぎたか。だが、これでもう立ち上がることもあるまい。」

ぼろぼろの青年に背を向けその場を立ち去ろうとする男。しかし、男はズボンの裾にわずかな違和感を感じた。男が足元を見ると青年が男のズボンの裾をつかんでいた。

「ま、てよ。」

「まだ動けたか。恐るべき執念だな。」

男はわずかに目を見開き青年の手を振りほどこうと足を振るが、なかなか青年は手を放さない。男は少し考えた後、青年のつかんでいないほうの足を挙げ青年の腕を踏みつける。

「あが!!

「放さないならこのままお前の腕を踏み潰すぞ。」

「ぐぅはな、さねぇ

男はさらに足に力を籠める。

「ぐああぁぁぁああ!!!

あまりの痛さに力が緩み男のズボンの裾から青年の手が離れ、男は足をどける。青年の腕は折れてはいないが、痛々しいまでに青黒く鬱血していた。青年は腕を抱えうずくまっている。男はもう一度青年に近づき髪をつかみ上げる。

「あがぁ

無理やり上を向かされた青年の目は痛みのせいでナミダが滲んでいたが、男に反抗する意思を未だに宿していた。

「いいだろう。その目が光を失うまでとことん付き合ってやる。」

「っぺ

青年は男の顔に唾を吐きつける。男の頬をつたう唾が顎をつたい男の弧を描く口元を通り過ぎる。青年の地獄はまだまだ始まったばかりだ