この会社では、老健の短期入所という兼ね合いや、空き室数の関係もあってか、「一般棟(今、働いている場所)」と「痴呆専門棟」の間で、時々、利用者さんの引っ越しがあるんです
それで、ある日、実習の時に行った時に、印象的で覚えていて、また会いたいなぁって思っていたおばあちゃんの利用者さんがやってきました
その方、自称95歳w(おそらくとっくに100歳を超えている)のおばあちゃんなのに、パンが大好きみたいなんです
いっつも寝てる時以外は、
「パ~~~ン、くださ~~~い」
と、大声で叫んで訴えてくるんです
お昼は、希望食でパンになっているほどです
その方は、とってもいい表情をしていて、例えるなら、以前テレビによく出ていた「きんさん・ぎんさん」のような可愛らしい表情なんです
そして、パンを食べている時に、「おいしですかぁ??」と聞くと
「んうんまいッ」
と、なんとも言えないいい表情をするんです
でも、困ったことに食べ終えてお皿を下げた瞬間から、また「パ~~~ン、下さ~~~い」と大声を出し始めちゃうんです
そして、誰も返事をしてくれない時には、
「(名前)、95歳パ~~~ン、下さ~~~い」と自己紹介付きで言い出して、もぉあまりにその言葉を聞き過ぎて、頭にその言葉が焼き付いてしまう程でした
そんな方でしたが、3日間程で、また元いた「痴呆専門棟」に戻ることとなりました
さすがに、昼夜問わず、こんなに大声を出しているので、他の利用者さんからのクレームも多く、近所からの苦情も来てしまった程なので、先輩方は、「戻っていってくれて良かった」と言っていましたが、俺は正直、行ってしまうことに、ちょっと寂しく感じました
そして、いよいよ戻る準備の為、待っていた時のこと、
普段は、「パン」で、10回に1回くらいの割合で、ごくまれに「ごは~~~ん、下さ~~~い」に変わっていたのですが、帰り際にだけ、なぜか、
「天丼、下さ~~~い」
「かつ丼、下さ~~~い」
「牛丼、下さ~~~い」
と、上機嫌に次々に違う丼の名前を叫んでいたので、思わず仕事中にニコ~っと笑ってしまいました
元いた慣れた場所に帰れることが分かってたんですかね
最後に、Sさんの訴えの、「激レアバージョン」が聞けた瞬間でした