Cello Palette Preamp | 禁断のKRELL

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Cello Palette Preamp 1991年 ¥1,250,000


"音楽復元"という名の思想、

レビンソンの"情念"の具現



チェロ、パレットプリアンプ (CELLO PALETTE PREAMP) はプリアンプと
パラメトリック・イコライザーの複合体という珍しい構成である。
Audio PaletteとEncore 1MΩを合体させた夢のモデルがPalette Preampです。
上記設計思想は当時の代理店が出したSS誌巻末広告で謳われている。
設計はトーマス・P・コランジェロ、そしてプロデュースはマークレビンソン、
Encore 1MΩと同様の100万Ωという驚異的ハイインピーダンス受けを実現
したライン入力を装備、調整の周波数帯、ポイントはメインパネル下部の
6ダイヤル、低・中・高域に各2ヵ所ずつの合計6ポイント、
20Hz、120Hz、500Hz、2kHz、5kHz,20kHzが調整可能で
各ダイヤルを上げ下げすると各帯域が強調されたり、
大人しくなったりと自在に変化する。またLRチャンネルの独立した
ゲイン調整ボリュームも二機装備し、メインのボリュームとは独立した
調整が可能であり、音質、音量調整はメインボリュームを除く8ヵ所と
なっている。音質が全く劣化しない、高精度EQシステムは
当時レビンソンが提唱したミュージックレストレーション、
「各ソースの失われた情報を補う為の機能」と謳われた
"音楽復元"という物凄い思想、レビンソンの情念が生み出した産物である。
EQオフ、または完全フラットな状態で聴く本機の印象は
"大人しい音"といった風情。ゲインはボリューム近くの
コンストラクション内部にあるディップスイッチにより変更が可能。
一緒に聴いたオートグラフ、モニターレッド使いで球アンプ愛好者のDさんも
フラットな状態の音を 「ああ、確かにスカみたいな音やね」 と感想を語った。
少々肩すかしを食らいましたがイコライジングを自分好みの音に追い込み、
パワーアンプの選定にこだわり、電源、ラインケーブルも
特定のブランドで徹底的に追い込んでみたところ、
俄然、生々しい音がK2から溢れてきたのが衝撃的だった。
1972年の作品にして現代のアンプと同等の音質を実現させていた、
あの時代において他者と隔絶した群を抜く高音質を誇示してみせた、
歴史的名機LNP-2Lにもう少し厚みを付けた音によく似ています。
当時のオーディオファイルはさぞかし衝撃的だったでしょう。
1970年代に現代アンプのサウンドが降臨したのだから。
LNP2L(ロー・ノイズ・プリアンプ)の再来であるから、当然聴感上の
S/N比は抜群で、ノイズは"ゼロ"である。 これはクラシック向けの音です。
しかし、ジャズヴォーカルも上手、すべての音楽を魅力的に鳴らせるでしょう、
何故なら、このプリは"音のパレット"なのだから!
このプリアンプはフラットな状態のままでは、本来の音とはいえない。
店頭などでちょっと触ってみたところでその本質は殆ど分からない
のではないかと思う。使用者が自分好みの音に追い込んで初めて、
それがCELLO PALETTE PREAMPの"本質の音"だと言える。
使用者の好みに応じて如何なる形にも変幻自在に形を変える、
使いこなしの腕がそのまま反映される稀有なプリアンプだと思います。
だからファーストインプレッションでは落胆しかなかったのだし、
反面、上手く鳴ったときの感動は言葉にはならない、
基調になる音色は無色透明、ニュートラルで色付けを全く感じない、
一見緻密に引き締まった細身の音、解像力は格別に素晴らしく、
この年代における最高水準と言える。そう、レビンソンは類稀な
音楽性だけではない、音質の良さは各世代のブレイクスルーを
確実に担ってきたし、まさに時代を牽引してきたのである。
果たしてこれは、いままで使っていたプリアンプとは次元が違った。
プリアンプを変えるだけでこれほどの高精細な音になるのかという驚き。
EQで高域を持ちあげたときに現れる、あの凄まじいまでの鮮度感!!
筆者は思わず「ウォー!!」という驚きの声を発して迎えた。
カチッとした音だが、不思議と硬くはない。聴き疲れを誘うものではなく、
あくまで自然な質感である、変な強調感などは微塵もない、
再生音の品位は極めて高く、極限まで磨き上げられた音の質感、
しなやかな音像の骨格には満足できるし、
その絶妙のバランス、音の表情はナイーブな雰囲気を感じさせる
繊細すぎるほどに繊細な音で・・・・・非常に美しい音色、
色気、艶といった"癖"を好むなら後段で付与しなければならないが、
とにかく信じられないほどに美しく整えられた音。
クリーンに整えられた無機質な音ではなく、音楽に没頭し聴き惚れる
雰囲気がある。 音象の実体感はクレルほど強靭なものでなく、
スムースにしてナチュラル、思わずハッとして息を飲む、釘付けになる。
手のひらにはじんわりと汗が滲む。
しかし、パレットはオールドレビンソンの完全上位ではない。
パレットは優しい音になってしまうから。マークレビンソン独自の陰影感に、
端正に整えられた透明な空間表現の晴れやかさと見通しのよさ、
しなやかに伸びるDレンジ、磨き抜かれたテキスチュア、
そこには外連味は欠片もない、マークレビンソンが携わったアンプは
音色だけではなく、音の鳴らし方にも独自の工夫が認められ魅力を感じる。
大き目の音圧を取り出した際のプレイバックはまさに幻想的であるし、
クリアな音場、品位の高さは深夜の小音量時のリスニングの愉悦を約束する!

音楽再生のあらゆるファクターがソフィスティケイテッドを究めた、



これは人工美の極致であり、

そして究極の工業製品である




そんな感想が脳裏に浮かび上がってきた。


リスナーが十分な見識を身に着け、自らの感性を磨いたとき
このプリアンプの本質の高さ、その真価をきっと感じ取れることだろう。


StereoSound #119 p291 勝見洋一氏による、CELLO Audio Palette MIVのEQ調整、
15Hz+8 120Hz+9 500Hz+4.25 2khz+5 5khz+5 25khz-5にてベストイコライジングが得られた。