監督・ばんざい! | あごひげ兄ちゃんのスクラップ帳

監督・ばんざい!




http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7725



監督・北野武が「バイオレンス以外の映画」を模索しながら

等身大のたけし人形と共に自分の内面世界を探求する・・・


・・・という「ひとりオムニバス映画」のような感じで始まります。



繰り広げられる恋愛映画も忍者映画もノスタルジー映画も

それぞれ意図的にパチもの臭さを織り込みつつ

魅力ある短編に「なりそう」な雰囲気を漂わせており

改めてその引き出しの多彩さに唸らされます。




しかし中盤、SF映画の途中から壮大な「コント大会」に急変し

監督・北野武ではなく芸人・ビートたけしが大暴れ。



たけし人形は単なるコントの小道具と化し

緊張感も整合性もへったくれもないコントが延々と繰り広げられ

江守徹がタイツ履いて踊り狂えばプロレスラーがラーメン屋を破壊しまくり

前半に丁寧に探られていた作品世界群は

ことごとく吹っ飛ばされてTHE END。








こういう「ちゃぶ台返し」はシニカルな作家の常套手段ですが

「だまされた!」と腹立たしくはなりませんでした。



前フリをガッチリ作り込み、冗長な中オチを織り込んで

「もうオチはわかってるよ」とイライラしてる観客を焦らしながら

オチを付ける必然性のない所であっさりひっくり返す。


その鮮やかさにむしろ爽快さすら感じました。


これは私がひょうきん族世代の映画ファンだからでしょう。

まったく予備知識のない若い世代や海外のファンは怒り出すかも知れません。



おそらく普通の映画の倍は予算を費やしていると思うのですが

それをやってしまえるのが北野武のスゴさであり特権なんでしょうね。



次回作がすごく楽しみです。


この作品の事はさらっと水に流してですがw








DVDで観られる方は同時収録されている「素晴らしき日曜日」(3分)は必見です。

2007年カンヌ国際映画祭60回記念企画「To Each His Own Cinema」の「世界の映画監督35人」。

これは世界を代表する監督35人が、ひとり3分ずつのショートムービーを撮るというオムニバス企画ですが、この「素晴らしき日曜日」が日本人で唯一選ばれた北野監督の作品です。

さらっと撮られた貧相で不運なしかし豊かな日常が描かれていて、素敵な一品です。