長野県、諏訪盆地の中央に位置する、諏訪湖。

信州一の大きな湖の畔にあるホテルが、キョーコ達が撮影の為に長期間滞在する本拠地となっていた。


2週間という長期ロケもあと、3日。

あと3日で、日常に帰れる。
都心を離れ、空を見る習慣が付いたのは、来てすぐの出来事。

夏の星座が霞んでいって、変わりに冬の星座の光が色濃くなっていく変化を日々感じとっては、在りし日の二人で過ごした夜が恋しくなった。
まぁるい月が映された諏訪湖の水面は幻想的だけれど、それ以上の力があって。
まるで魔力のようなその力でもって、一人でいることをまざまざと思い出させる。


(もうちょっと。もうちょっと。)


本来ならば明日への支度の為に、もう布団に入っていなければならないのだけれど。
今日は、特別。

3時間前にきたメールを何度も何度も確認する。
一言、「これから行くよ」と表示された文字がとても愛おしい。
明日の仕事を忘れているわけでも、疎かにしているわけでもない。


ただ・・・・
愛おしい愛おしい彼に一目でも逢いたかった。




逢えない環境になって、もう10日以上。

それよりも、メールを貰ってからの3時間の方が・・・長く、感じた。



**


ホテルを飛び出て、道路を確認すると、すぅーと見覚え車体がキョーコの目の前に滑り込んできた。
いつもの助手席に飛び乗って、そのまま腰を据えることなく、運転席の蓮にの首に腕を回す。
拒絶されることなく、身体を引き寄せられたことに安堵して、焦がれた人の空気を吸い込むと、11日振りの蓮からは、秋の香りがした。

逢えない時間を如実に感じて、キョーコの胸の奥が苦しくなる。

「キョーコ、逢いたかった」
「私もです。蓮さんに逢いたかった」

囁く言葉は、吐息のようで。

なんだか悪いことをしているようにで、二人してくすっと笑い合う。


「ちょっと走らせるよ?」

「・・・・はい・・」


煌々と明かりの灯るホテルから距離を置く為に、離れた体温。

急に冷めた身体に切なさが募るが、走り出した途端に握り締められた手の温もりに、心が浮き立つ。

控えめに、だけれど、きちんとわかるように・・・そっと握り返すと、蓮の笑みが蕩けて、キョーコの頬を赤く染め上げる。

静かに走る車は、あっという間に目的地へと到着する。



「ここが、諏訪湖を一望できると思って・・・」


行き着いた先は、少し高台になった丘の上。

広がる魔力を持った湖は、渦巻く雲と淡い月の光で一層の力を持っているようだった。

どかこに連れて行かれてしまいそうな程の幻想的な光景はキョーコの心を捕まえる。


「・・・キョーコ・・?」

「あ・・・蓮さん、ごめんなさい。見入ってしまいました」

「気に入ってくれた?」

「もちろん!とても・・・幻想的です」


窓の外に集中するキョーコのシートベルトが、かちゃりと乾いた音を立てて外された。

びくっと肩をすぼめて、上目遣いに蓮を見るのは・・・・これからを期待して。

彼女の意識が再び自分に戻ったことに気を良くした蓮は、焦がれた少女に手を差し伸べる。


「窓の外じゃなくて・・・俺を、見て?」


おいでと広げた腕の中に、キョーコは再会した時と同じようにもぐりこむ。

少しシートを倒したおかげで、細い身体は狭いシートに難なく収まった。


(蓮さんだわ・・・・)

(・・・・キョーコ・・)


ぎゅうぎゅうとお互いを抱きしめあって、キスの雨を降らせる。

言葉を伝えないのは、それ以外で繋がりあっているから。



蓮がキョーコの右頬にキスしたなら、キョーコは蓮の左頬を・・・

蓮がキョーコのおでこにキスしたならば、キョーコは蓮の首筋を・・・

蓮がキョーコの唇に左端にキスしたなら、キョーコは蓮の唇の右側を・・・



余すことなく触れ合って、存在を確かめ合う。

息をすることすら、もどかしい。













******


夜だし、こんな展開もあり?


都内から車をかっ飛ばして3時間ちょっと程度で行ける範囲を探してみましたw

実は8月に行ってみたりした、思い出の地←

帰りに山梨の甲府でワイナリィ巡りをしたのです( ´艸`)


本当は鳥取まで行って欲しかったんだけど、あえなく断念。。

(は○みつとク○ーバーの野々宮さんのように!!は蓮さんのお仕事上、無理でした。ちぇ。。