長野県、諏訪盆地の中央に位置する、諏訪湖。
信州一の大きな湖の畔にあるホテルが、キョーコ達が撮影の為に長期間滞在する本拠地となっていた。
2週間という長期ロケもあと、3日。
あと3日で、日常に帰れる。
都心を離れ、空を見る習慣が付いたのは、来てすぐの出来事。
夏の星座が霞んでいって、
まぁるい月が映された諏訪湖の水面は幻想的だけれど、
まるで魔力のようなその力でもって、一人でいることをまざまざと思い出させる。
(もうちょっと。もうちょっと。)
本来ならば明日への支度の為に、
今日は、特別。
3時間前にきたメールを何度も何度も確認する。
一言、「これから行くよ」と表示された文字がとても愛おしい。
明日の仕事を忘れているわけでも、疎かにしているわけでもない。
ただ・・・・
愛おしい愛おしい彼に一目でも逢いたかった。
逢えない環境になって、もう10日以上。
それよりも、メールを貰ってからの3時間の方が・・・長く、感じた。
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ホテルを飛び出て、道路を確認すると、
いつもの助手席に飛び乗って、そのまま腰を据えることなく、
拒絶されることなく、身体を引き寄せられたことに安堵して、
逢えない時間を如実に感じて、キョーコの胸の奥が苦しくなる。
「キョーコ、逢いたかった」
「私もです。蓮さんに逢いたかった」
囁く言葉は、吐息のようで。
なんだか悪いことをしているようにで、二人してくすっと笑い合う。
「ちょっと走らせるよ?」
「・・・・はい・・」
煌々と明かりの灯るホテルから距離を置く為に、離れた体温。
急に冷めた身体に切なさが募るが、走り出した途端に握り締められた手の温もりに、心が浮き立つ。
控えめに、だけれど、きちんとわかるように・・・そっと握り返すと、蓮の笑みが蕩けて、キョーコの頬を赤く染め上げる。
静かに走る車は、あっという間に目的地へと到着する。
「ここが、諏訪湖を一望できると思って・・・」
行き着いた先は、少し高台になった丘の上。
広がる魔力を持った湖は、渦巻く雲と淡い月の光で一層の力を持っているようだった。
どかこに連れて行かれてしまいそうな程の幻想的な光景はキョーコの心を捕まえる。
「・・・キョーコ・・?」
「あ・・・蓮さん、ごめんなさい。見入ってしまいました」
「気に入ってくれた?」
「もちろん!とても・・・幻想的です」
窓の外に集中するキョーコのシートベルトが、かちゃりと乾いた音を立てて外された。
びくっと肩をすぼめて、上目遣いに蓮を見るのは・・・・これからを期待して。
彼女の意識が再び自分に戻ったことに気を良くした蓮は、焦がれた少女に手を差し伸べる。
「窓の外じゃなくて・・・俺を、見て?」
おいでと広げた腕の中に、キョーコは再会した時と同じようにもぐりこむ。
少しシートを倒したおかげで、細い身体は狭いシートに難なく収まった。
(蓮さんだわ・・・・)
(・・・・キョーコ・・)
ぎゅうぎゅうとお互いを抱きしめあって、キスの雨を降らせる。
言葉を伝えないのは、それ以外で繋がりあっているから。
蓮がキョーコの右頬にキスしたなら、キョーコは蓮の左頬を・・・
蓮がキョーコのおでこにキスしたならば、キョーコは蓮の首筋を・・・
蓮がキョーコの唇に左端にキスしたなら、キョーコは蓮の唇の右側を・・・
余すことなく触れ合って、存在を確かめ合う。
息をすることすら、もどかしい。
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夜だし、こんな展開もあり?
都内から車をかっ飛ばして3時間ちょっと程度で行ける範囲を探してみましたw
実は8月に行ってみたりした、思い出の地←
帰りに山梨の甲府でワイナリィ巡りをしたのです( ´艸`)
本当は鳥取まで行って欲しかったんだけど、あえなく断念。。
(は○みつとク○ーバーの野々宮さんのように!!は蓮さんのお仕事上、無理でした。ちぇ。。