【コラボ名】 PIKA*Chu
【リレータイトル】 秘めやかな想い
【更新予定日時】 毎週月曜 23時


我が家の半年記念がきっかけでご一緒させて頂く事に相成りました。
内容は以前から二人で盛り上げっておりました【微桃でちょっと切ない蓮キョ】です。
第一章から始まり、第五章での完結を予定しております。






***







夜が中盤戦に差し掛かる深夜前。

消え行く夜景を堪能する余裕もなく、二人は静かにラグの上に腰を落とした。

ローテーブルにあるグラスが汗を掻いていることから、二人が顔をつき合わせてからの時間が短いものでないことが窺い知れた。

落とされる沈黙はただただ居心地の悪いものでなく、お互いの距離を測りかねてのもの。

そしてようやく口火を切ったのは、蓮。


「キョーコ・・・・・とっ」

「は、い!!」


うっすらと思考の小部屋に入り込んでいたキョーコは覚醒し、慌てて佇まいを治す。

ぴっし!と背筋を伸ばした彼女の背中を蓮が優しく撫でると、すこしばかり緊張が解けたようだった。


「ごめんね」

「あ、えっと」

「逃げていたことも、きちんと言葉にしなかったことも」

「・・・・・・・」


僅かに空いた距離をじわりと詰めて、こつんと膝同士がくっつきあった。

身を捩ろうとするキョーコの両腕を優しく掴んで、その動きを制していく。


「いきなり抱きしめたことも・・・・キスをしたことも」

「・・・・・あ・・・・・ぅ・・・・」

「そして、名前で呼んだことも」

「・・・・・!!」


ショータローと別れたタイミングで、変わった呼び名。

あえて見過ごそうとしていたのに、それが出来ないで、身代わりでも良いと思った自分の決意をあっさりと覆したキョーコ。

禁忌であると、思い込み信じ込んでいた同じ名前の存在を問いただしたのは、ほんの数刻前。


「それは、どういう・・・・意味ですか・・・・」


喉の震わせ出来てた音は限りなくか細く、不安に満ちていた。

掴んでいた腕を離し、蓮はそのままキョーコの両手を自分のそれで握りしめた。


「順序を、飛ばした」

「じゅん、じょ・・・・・?」

「そう、順序」


繰り返される順序という言葉。

穏やかに微笑む蓮の意図を汲み取れ切れず、キョーコはその言葉を舌足らずに繰り返す。

その心に広がるのは形容のすることすら難解な、不安。

警鐘を慣らす本能ですら、その不安に押しつぶされて・・・・・陰を潜めた。




「最上 キョーコという女性が、世界で一番大切だってことを・・・・・俺はまだ、君に伝えていない」




その言葉の威力を、どう人に伝えられるだろうか。

キョーコはあまりに大きい衝撃に、ただただ呆けるしかなかった。

首を横に振ってみては、真っ青になったり、真っ赤になったり、壮絶な顔をしたり。

色々と安定しないキョーコに更に笑みを深くした蓮は、尚も言葉を積み重ねる。


「だから、君が身代わりだなんてことは絶対にありえない」

「・・・・う、そ・・・・・うそッ!!嘘です!!」


蓮の手の中にあるキョーコの手は、痛々しいほど強く握りこまれ、それに比例し語気は荒々しくなっていった。

瞳の中に映る色は、戸惑いと・・・・・・焦り。

いつぞやに見た拒絶の色がないことだけが、蓮の救いであり。

それがなければ、このまま突き進めると彼は自身を奮い立たせた。


「嘘じゃない、嘘じゃないよ」

「だって敦賀さんは・・・・・・違う人が・・・・・気になる人が・・・・・」

「それは最上 キョーコという人だけだよ」

「・・・・・・・」

「俺が、求めるのは、唯一・・・・・君だけだ」


ゆっくりと首を横に振るキョーコに、蓮は目を伏せ、聞くまいと思っていたことを言葉にする。

今までの流れから、それが自分だと言う核心はある。

そして、その状態で聞くのは・・・・・更に彼女を追い詰めることだと知っていても。

腹の底にある捕らえたい、と願う仄暗い欲求から、自分を止めることは出来なかった。


「じゃぁ、話を変えよう。キョーコが・・・・・抱きしめられたいと思ったのは、誰?」

「・・・・・ッ!!!!」


全ての始まりであったはずの、キョーコ自身の言葉。


それを偶々聞いて。

それをしつこく追求して。

その時に拒絶という感情がぶつけられた。


半分諦めようとしていたキョーコへの想いを、再度炎上させたと言って良い一言。

きっとその言葉が無かったら、あの時触れなかったし、この状況もなかっただろう。


「俺だったら嬉しい」

「・・・・・・・つる、が、さんでは・・・・ありま、せん」

「そう」

「・・・・・は、ぃ・・・・・・あ!」


手を握り合っていた体勢から、一気にキョーコを抱え込むものへと変化させた蓮に彼女は驚きを隠せなかった。

言葉として成立しない音を出しながら、必死に掻く。


「ねぇ、キョーコ。おかしな話だと思わない?」

「・・・・・そんなこと、な・・・・・」

「だって、不破に身代わりでも良いって言ってて、それなのに俺には俺じゃないていうんだよ」

「あ・・・・・ぅ」

「ねぇ、教えて?どっちが本当?」


身体を重ねているが故、視線を合わせることがないふたり。

それでも、お互いの鼓動で、体温で・・・・・絡み合った事実が解きほぐされていくように感じられていった。

キョーコから発せられる否定の音は影を潜め、無音の世界が訪れる。

その間に蓮はキョーコの背中を撫で、髪を梳き、時間のままに身を任せた。















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ようやくようやく!!
次も私です・・・・・ごめんなさい(_ _。)





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今回の副題 Last danceには~最後の恋~、そんな意味を込めてみました。


もう、敦賀さんの告白を書いては恥ずかしさに、隣の部屋の布団までいって数十分ゴロゴロもんどりうつのを繰り返し・・・・・やたら時間の掛かった今回(T▽T;)

こっぱずかしかー!!←